売上2割がUGC経由、スノーピークが目指す「1対1でつながる人間味のある自社EC」
創業61年、会員40万人(2019年6月末時点)を超えるアウトドアブランドスノーピーク様が目指しているのは、リアル店舗やキャンプ場でのイベントと変わらない「1対1でつながる人間味のある自社EC」です。
その実現に向け、
・ユーザーレビューの徹底活用
・オンライン上でお客様の質問を受けるQ&A機能
・Instagram連携
を推進するため、2018年からUGC(※1)マーケティングツールYOTPO(ヨットポ)を導入いただきました。
今回は、営業本部EC推進課の早瀬様に、ブランドにおける自社ECサイトの役割や、具体的な活用事例についてお伺いしました。
(※1)user generated content(ユーザー生成コンテンツ)。商品レビューやユーザーが撮影した写真などの総称。
1、担当者様とチーム体制のご紹介
(左)株式会社スノーピーク 取締役 CMO 山口様
(右)株式会社スノーピーク 営業本部 EC推進課 早瀬様
―業務内容やミッションについて教えて下さい。
業務範囲としては、自社のオンラインストアの販促、運用、在庫コントロールや別注アイテムの企画に加え、ECチャネルの法人営業活動も担当しています。
直営店や、全国のアウトドアショップとはまた客層が異なるのでデータを見た上で、様々な販促や企画をたてています。ミッションとしてはオンライン経由の売上目標をもっています。
―幅広いですね。何名で対応されているのでしょうか?
EC推進課自体は役員も含め3名です。
―少数精鋭のチーム体制で、運用するコツは何でしょうか?
テクノロジーで効率化すべき箇所と、人力で手をかけるべきポイントを分けることです。
例えば、商品レビューへのコメント返信やレビュー依頼メールのデザインや文面は、お客様とコミュニケーションにこだわり、リソースを割いています。ブランドイメージに非常にこだわりがあるのがスノーピークの特徴なので、新潟の本社にいるクリエイティブ課のメンバーにも相談しながら、世界観をきちんと出せるように細かな部分にも気を配っています。
一方で、一部業務の自動化や分析業務を効率化するために、今回YOTPOを導入しています。レビュー依頼メール配信といった定期的な業務に関しては、APIによる自動化を活用し工数削減。テクノロジーで収集したデータは簡単に加工・分析することができ、効果検証や社内への共有に役立っています。
2、スノーピークの歴史とファン属性
20年以上続くユーザーコミュニティ
―スノーピークは「ユーザーコミュニティの強さ」で注目されていますが、その歴史について教えてください。
1988年頃からオートキャンプ用品を本格的にリリースしカタログ通販を行っています。当時、単価1,000円のカタログが年間4,000冊売れるほど、全国にコアなお客様がいらっしゃいました。
1998年にはキャンプイベント「Snow Peak Way」を開始。役員や社員が一緒にキャンプに行き、直接ユーザーの声を聞くコミュニティづくりを重視するようになりました。 このイベントは、18年以上続けています。現状は人気が高く参加希望者は抽選制になっていますが、直接お客様と交流し焚き火を囲んで話す、距離がぐっと縮まるイベントです。
その後2000年に入り、イベント後も交流できるようスノーピークのネット掲示板「BBS(※2)」を活用し始めました。ここではお客様自身でキャンプ用品の使い方やレビュー、キャンプの思い出などが盛んに書き込まれるようになり、ベテランユーザーが初心者にアウトドアについての知識を教えている場面も多くみられました。顧客同士のつながりの中で自発的に生まれる関係性は、現在はFacebookの「Snow Peakコミュニティ」に引き継がれています。
(※2)Bulletin Board System、Web上で情報交換ができる掲示板
営業所までユーザーが買いに来るカタログ通販時代
―リアル店舗の開始は2003年からですが、販売チャネルを拡大するキッカケは何ですか?
新潟・大阪に営業所だけあった時代に、直接「商品を購入したい」と訪問されるお客様が現れたことです。イベントやコミュニティで繋がっていたためブランドとお客様の関係値はあるものの、「買いたくても買えない状態」であることに気づき、リアル店舗の必要性を感じました。
―かなり熱量のあるユーザーがいらっしゃったのですね。リアル店舗で意識したことはどんなことでしょうか?
やはり、コミュニティ作りです。
「スノーピークの二子玉川店のAさんから買いたい」となるような、店員とユーザー間での1対1のコミュニケーションを意識しています。
また、店舗はモノを買うだけでなく、キャンプ場で道具が壊れた・使い方がわからない、など困った時に、すぐ相談できる相手でもあります。
このリアル店舗と同じ「1対1のつながり」をオンライン上でも実現できれば、もっと多くのお客様と濃く繋がることができる思い、本格的に自社ECサイトの立ち上げに踏み切りました。
3、自社ECでもリアルと変わらない「1対1のつながり」を
リアル店舗とECサイトの関係
―ECサイトが担う役割について教えてください。
キャンプ用品は高額商品も多いため、店舗にいらっしゃっても即決されないことが当然あります。店舗で実物を見て検討し、帰宅して冷静に考えて、家族に相談、もしくは旦那様が奥様の承認をもらい買うというケースです。
ECサイトがあることで、決断したタイミングで24時間いつでも商品を購入することが可能になりました。
―ECモールと自社ECの違いは明確にありますか?
客単価に違いが現れます。
自社ECサイトは、会員制度に連動した「スノーピークポイント」が溜まるため、元からスノーピークのファンであるお客様が多く、客単価は店舗とそれほど変わりません。
一方、ECモールは利便性を求めるライトユーザーや、スノーピークの会員制度を知らない方の利用が多く、小物購入が中心のため客単価は8分の1程度です。
一般的に「ECサイトを始めたら店舗の売上に影響が出た」「ECモールと自社ECサイトの差別化が難しい」と議論されることがありますが、お客様にとっては全て必要なチャネルです。
逆に言えばECモールでは10万円近いテントを売ることが苦手かもしれませんが、価格の低い小物類や消耗品、レビューが豊富で購入を躊躇しないアイテムなどはネットのほうが有利だと感じます。
またスノーピークの場合、自社ECサイトで買うお客様はスノーピークのポイントを貯めたい!というお客様が帰属化しますので、他のECモールの顧客層とは本当に異なります。
そのため、ブランドとしてメッセージを統一した上で、役割の明確化が重要だと考えています。
自社ECでもリアルと変わらないつながりを
―実現するために必要なことは何でしょうか?
まず、ブランド側からの発信だけにならないよう、「ユーザーの声」を集めることが必要だと考えました。
実際にFacebookの「Snow Peak」コミュニティでは、購入を躊躇されているユーザーが、既にその商品を買ってキャンプをされているユーザーの投稿に、使い勝手やサイズ感、手持ちのアイテムとの組み合わせのアドバイスを聞くケースもあります。そのコミュニティをECにも持ち込むことがベストだな、と思いました。
▼実際にFacebook上でユーザー同士がアドバイスするスレッド
具体的な施策としては、
・ユーザーから商品レビュー収集
・オンライン上でお客様の質問を受けるQ&A機能
です。
特に、商品レビューに関しては、「誰が言っているか」が重要です。
例えば、会員データを紐づけ「ブラック会員のAさんのレビュー」と明確にすることで、レビュー内容に応じてスノーピークからその方へ必要なサポートも正確に判断でき、またレビューを参考にされるお客様にとっては信憑性が高まります。
まだ会員ランキングとの紐づけは実現できていませんが、いずれか、投稿者名様の横にスノーピーク会員様ランクも表示できればもっとユーザー様にとっても有意義なコンテンツになると思っています。
4、YOTPO導入の決め手
やりたいことを全て網羅できたYOTPO
―導入の決め手を教えて下さい
当初はレビュー収集機能も含めてゼロから作ろうとフルスクラッチ(※3)を予定していました。しかし、構築費用や開発期間が予想以上かかることがわかり、既存ツールの導入を検討しました。
他ツールと比較した結果、最も「楽に」やりたいことを「全て」網羅できるのがYOTPOでした。Instagram連携やレビュー機能、オンライン上でお客様の質問を受けるQ&A機能など、ゼロから構築するより早く・低価格で実現できています。
(※3)自社の要件に合わせて新規に開発すること
SEO対策としても効果期待
本来であれば、お客様にとって価値があるコンテンツページをたくさん作り、SEO対策も行いたいと考えていました。しかし、現在の体制では難しい状態です。
商品ページごとにきちんとレビュー収集ができれば、お客様の声をベースにした新鮮なコンテンツが更新されるため、SEO効果としても期待しています。
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5、売上2割がUGC経由、コンバージョン率は270%向上
商品ページに収集したレビューや写真を掲載
―YOTPO導入後、どのような変化がありましたか?
UGCコンテンツ(収集したレビューや写真)をサイトに掲載した結果、接触率は約47%と、およそ2人に1人の割合で見ていただいています。
また、接触していないユーザーに比べ、UGCコンテンツ接触ユーザーのコンバージョン率は270%高い結果となりました。
導入してまだ1年ですので、YOTPOによる売上インパクトは、今後より期待するところです。
今、一番効果を感じているのは、「社内で定量的なデータが生まれた」ことです。600件以上のレビューが集まり、星いくつのレビューが何件あってこんなコメントが書かれている。今まで感覚的だったお客様の声が定量・可視化され、社内メンバーにとって「私たちのやってきたことは間違っていなかった」と実感しました。
これまで、スノーピークは「自らがユーザーである」という意識のもと、質実剛健にものづくりをしてきました。キャンプ場でユーザーと会話しながら「ここがもっとこうなればいいよね」と話していた場がまさに、オンラインストア上でも行われている状況に感動しました。
6、スノーピーク流ユーザーレビュー3つの活用方法
①ユーザー属性を明確にし、レビューの信憑性を高める
―レビュー収集で工夫されている点を教えてください。
前段でお伝えした通り、レビューは誰が言っているかが重要だと考えています。
そこで、YOTPO機能の1つ「カスタムクエスチョン」を活用し、下記質問項目を追加で設定しています。
<追加質問項目>
・キャンプ歴
・年間キャンプ数
・利用人数
・利用シーン
これにより、同じ商品へのレビューであっても「キャンプ歴10年以上・ファミリーキャンプユーザー」「キャンプ歴1年未満・ソロキャンプユーザー」など、属性と合わせて見ることができます。
「キャンプ好き」といっても、ソロキャンプ好きとグループキャンプ好きが使うアイテムは違いますし、利用人数によって適しているテントやシェルターも異なるので、この機能は私自身もすごく参考になっています。
▼ECサイト上に属性とセットでレビューを掲載。条件検索も可能。
②商品開発への活用
投稿いただくレビューには「もっとこういう仕様だったらいいのに」とご要望をいただくケースもありました。
そのため、お客様の名前は伏せた状態で、レビューのローデータを社内に共有しています。
商品開発チームにも見てもらうことで、今後、既存商品の改善や今後の開発に生かしてもらいたいなと思っています。
③レビューから収集したデータで市場予測
―社内でレビューデータ共有されているとのことですが、他にどんな活用方法がありますか?
半年に一度分析結果をレポートしています。
下記は、「利用人数」「利用シーン」についての結果です。
左の円グラフを見ていただくと、利用人数で最も多いのは「3~5人:48%」ですが、「1人:20%」となっています。
業界的に数年前から「ソロキャンプブーム」はありましたが、スノーピークにおいて同じことが言えるのか、というのは別でした。お客様の声やトレンドは、リアル店舗では感覚的にしかわかりませんし、店舗よっては家族層の来店が多いため気づくことができません。
そのため、ブームは認識していていても、全社的に取り組むにはデータが不足していました。この分析結果は、1つの定量的な根拠になります。
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7、今後の展望
―今後の展望について教えてください。
“顔”の見えるECサイトへ
リアル店舗と同様に、自社ECに携わる社員の顔を出し、人間味を感じられるような「人対人」を重視した場にしたいと思います。
一例として、投稿されたレビューにコメント返信する際のアイコンを、現在のスノーピークロゴから社員の顔写真と名前に変更する予定です。
最終的には、「オンラインストアの〇〇さんから買いたい!」と思ってもらえたり、リアルなキャンイベントの場でも、「オンラインストアの名物店員さんに会いたい!」と思ってもらえたら嬉しいですね。
店舗・ECの在庫シームレス化
在庫のシームレス化により、リアル店舗とECで垣根のない状態を実現したいです。
お客様にとっては、どちらも「スノーピーク」。
入荷待ちの状態を作らない、最短での配送はもちろん、サービス面でも届いたときにも感動する梱包形態などの価値の提供もしつつ、効率的な運営を行いお客様のストレス軽減と、「スノーピークで買ってよかった」と思っていただける購入体験の提供を目指しています。
オンライン上でお客様の質問を受けるQ&A活用
既に自社ECサイトでも、リアル店舗やイベントで質問を受けるような、マニアックな質問も多く寄せられています。リアルに近いコミュニティを築けている一方で、現在のチーム体制上、対応が追い付いていないのが課題です。
「1対1でつながる人間味のある自社EC」の実現に向けて重要な要素ですので、チームとして今後取り組みを強化していきたいと考えています。
―早瀬さん、ありがとうございました。
スノーピーク様にご活用いただいている、UGCマーケティングツールYOTPO。
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MarTechLab編集部
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