VOC分析×ABテストで、サイト改善の効果を上げる方法
VOC(voice of customer)分析とは、顧客の声を収集し商品改善・サービス最適化に活かすことです。
今回は、VOCツールとABテストを連携し、コンバージョン率だけではなく「真に顧客のストレスを解消するには?」という視点を含めた、サイト改善方法をご紹介します。
目次
1.ABテストの効果と落とし穴
ABテストは、サイト改善において効果的な手法の1つです。
例えば、「ECサイトでフォームコンバージョン率が低い」場合。
仮説:入力項目が多すぎて離脱している
検証内容:入力項目を削る(テストパターン)
といったプランをたて、OptimizelyのようなABテストツールを活用し、オリジナルとテストパターンで直接比較することで簡単に仮説検証を行うことができます。
しかし、ここに一つ落とし穴があります。
そのテスト内容は「顧客が本当に求めているもの」でしょうか?
実際にユーザーのコンバージョンを妨げているのは、項目やレイアウトといった要素以上に、「価格や支払情報の不透明さ」かもしれません。
次の章で、VOCツールの分析結果をABテストに活用したECサイト事例をご紹介します。
2.顧客の声をABテストに活かす、海外ECサイト事例
次の画像は、海外ECサイトのABテスト事例です。
このECサイトでは、購入しなかったユーザーに対してVOCツールを活用し
「なぜ購入しなかったのか?」
と質問を投げかけました。
その結果、
・支払い方法がわからない
・配送時間がわからない
といった声が寄せられました。
結果をもとにテストパターンを作成しABテストを実施。
Variation(テストパターン):支払方法アイコン、配送情報を追記
[引用]Karl Gilis – How to create better A/B tests based on user research
テストパターンだけ見ると「顧客の声」を収集しなくてもアイデアは思いつきそう、と考える方もいるかもしれません。
しかし、ここでABテスト時間短縮のポイントがあります。
VOC分析のないABテストアイデアの場合、「支払方法」と「配送時間」の表示で、「どちらの要素の方が効果があったのか(悪かったのか)?」を検証するため
・「支払方法を明記」したパターン
・「配送時間を明記」したパターン
・「支払方法と配送時間を明記」したパターン
の3つのテストパターンを作るケースが多く見られます。
当然バリエーションが増えるほどデータ母数が必要になり、ABテスト期間が伸びることに。
VOCを収集すれば、「支払方法と配送時間は必須」ですので、検証すべきは「その情報のレイアウトや表示(強調)方法」になります。
今回のテストの場合、最終的に勝利を収めたのは下記のテストパターンです。
デスクトップで売上が5.9%向上しました。
[引用]Karl Gilis – How to create better A/B tests based on user research
このようにGet Feedback(旧Usabilla)で定性的な「顧客の声」を収集することで、ABテストの検証スピードを上げ、効果的な改善活動を行うことができます。
3.ABテストとVOCツール連携、顧客満足度を計測
次は、「ABテスト結果をVOCツールで分析する」ネスプレッソ海外事例をご紹介します。
Get Feedback(旧Usabilla)とOptimizelyを連携し、ショッピングカートのABテスト実施しました。
ABテストの最初の2週間では、テストパターンによるコンバージョンの増加は見られませんでした。
もしOptimizelyの定量データのみを指標としていた場合、この時点でテストは停止しているかもしれません。
しかし、彼らは収集したGet Feedback(旧Usabilla)の定性的データから「ユーザーはテストパターンについて肯定的に感じている」ことを発見しました。
コンバージョン率と顧客満足度の関連について正確に検証するために、さらに3週間ABテストを延長。
最終的に、ショッピングカートのテストパターンでは、コンバージョンが8.2%増加し顧客満足度も高いことがわかりました。
Get Feedback(旧Usabilla)のフィードバック項目は、実行中のABテストと連携し、フィルタリングすることもできるため、ABテストにおける全体的な満足度も評価できます。
このように、ABテストの結果「コンバージョン率が向上したか」という視点以外に、「その上で、顧客が満足しているか?新たな課題が発生していないか?」をさらに検証することは、サイト改善において重要です。
4.VOC活用したABテスト5つのステップ
ABテストプロセスにVOC分析を取り入れることで、テストする対象、優先順位を付ける対象、最終結果が正しいかどうかがわかるため、時間とリソースを節約できます。
【step1】定量分析を使用して、コンバージョン率が低下しているページを特定。
【step2】Get Feedback(旧Usabilla)を活用し「なぜコンバージョンに至らなかったのか?」をユーザーからフィードバックを収集。
例えば、ユーザーのカーソルがページから出たときに質問を表示し、「なぜ離脱するのか?」と理由を尋ねることも可能です。直帰率の高いページで出口調査を実行できます。
【step3】得られる定性的な「顧客の声」から、ABテストで証すべき要素を抽出。また、フィードバックの重要度に応じてテスト優先順位も決定。
【step4】優先順位に基づきABテスト実施。
【step5】ABテスト結果とフィードバックを連携させ、ユーザーにとって正しいものだったのか?再度フィードバックを収集し、検証。
この最適化の反復プロセスにより、時間、お金、リソースを節約し、ABテスト効果を高め、ユーザーエクスペリエンス向上に役立ちます。
※本記事は、「Why User Feedback and A/B Testing Need Each Other」、「The Secret to Success: Customer Feedback and Experimentation」「Karl Gilis – How to create better A/B tests based on user research」の翻訳・加筆しています。

勝見 理恵
2012年ギャプライズ入社。リスティング広告/SNS広告など活用したWeb集客支援、自社マーケティングを経て、現在はContentsquareやABテストツールのカスタマーサクセス担当。