2024年版:「目的脳」の男性と、「共感脳」の女性! 男女のズレをWEBサイトに応用する!
皆さんこんにちは。ギャプライズの今本です。
インターネットの進化は、私たちの生活に革命をもたらし、その影響はウェブサイトのデザインにおいても明確に見て取れます。2014年に初版が発表され、2020年に更新された本記事「”目的脳”の男性と、”共感脳”の女性! 男女のズレをWEBサイトに応用する」では、男女間の認知的違いとウェブサイトのインタラクションに焦点を当ててきました。このコンセプトは今日でも依然として重要であり、ウェブデザインとユーザー体験の向上において中心的な役割を果たしています。
そこで、2024年現在のトレンドを加筆し再編集をいたしました。ご参考になれば幸いです。
目次
時代の変化と共に変化するユーザーの理解
ウェブデザインは絶えず進化し、新しい技術やトレンドが生まれ続けています。これらのトレンドは、ユーザーの興味を引き付けるために重要ですが、その反面、トレンドを追いすぎることでユーザーにとって使いにくいウェブサイトになる可能性もあります。そのため、ウェブサイトの目的やクライアントの意向に基づいて、最新トレンドをどの程度取り入れるかを判断することが重要です。
一方で、男女のウェブサイト利用に関する最新のデータは、性別によって異なる利用傾向を示しています。例えば、女性は楽天市場のようなECサービスを好む傾向にあり、スマートフォンでの利用時間が長いのに対し、男性はAmazon.co.jpを好んで利用し、PCからの利用時間が長いことが分かっています。このような違いは、ウェブデザインやマーケティング戦略において重要な意味を持ちます。
本稿では、こうした最新のトレンドとデータを踏まえつつ、男女の認知的違いをウェブサイトデザインにどのように応用できるかを探求していきます。男女が求めるウェブ体験を理解し、それに応じたデザイン戦略を立てることで、より多くのユーザーを引き付け、満足させることが可能になるでしょう。
ウェブデザインとユーザーインタラクションの最新トレンド (2024年)
2024年に注目されているウェブデザインのトレンドは、技術の進化とクリエイティブな発想によって形作られています。ウェブデザイナーはこれらのトレンドを取り入れる際、ウェブサイトの目的やユーザビリティを重視する必要があります。
主要なウェブデザイントレンド
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- ニューモーフィズム
リアルでデコボコしたデザインが特徴。シンプルさと機能性を兼ね備えています。 - アイソメトリックイラスト
立体感を演出する技法。横の軸が120度で交わるように描かれ、奥行きを感じさせます。 - 楽しく陽気な雰囲気のデザイン
ユニークな形や色を使用し、世界に幸せをもたらすようなデザイン。 - レトロモダン
昔のレトロなデザインと現代のトレンドを組み合わせたスタイル。1980年代と1990年代をイメージさせるデザインが流行。 - エモーショナルデザイン
ユーザーの感情に訴えるデザイン。ウェブサイトや商品パッケージを通じて感情を刺激し、ユーザーとのつながりを築くことが目的です。
- ニューモーフィズム
これらのトレンドは、ユーザーの興味を引きつけ、ウェブサイトに対する関与を深めるために有効です。ウェブデザインの進化とユーザー体験の向上において、これらのトレンドの理解と適用が鍵となります。詳細なトレンドとその他の情報については、日本デザインさんの記事「2023年のWEBデザイントレンド30選|2024年の流行も先取り」 が参考になります。
ウェブ利用における性差の最新の洞察
ウェブ利用における性差の理解は、デジタルマーケティング戦略とウェブデザインにおいて依然として重要です。ただし、以下で述べる洞察は2017年の調査に基づいているため、最新のトレンドや技術進化により、いくつかの傾向が変化している可能性があります。
男女におけるウェブ利用の違い
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- デバイスの利用傾向
男女ともにスマートフォン経由の利用がPCを大きく上回っていますが、男性はPCからの利用時間がスマートフォンよりも長い傾向にあります。これは、男性がスマートフォンだけでなくPCで詳細な商品情報を確認することを示唆しています。 - ECサービスの利用
男女別で見ると、女性は「楽天市場」、男性は「Amazon.co.jp」の利用が最も多いという結果が出ています。また、フリマアプリ「メルカリ」は女性の利用者数が男性の約2倍に当たります。 - ECアプリの重複利用
特定のECアプリのみを利用している女性は全体の59%、男性は64%という結果になっています。男性は「Amazon.co.jp」のみ、女性は「楽天市場」のみを利用する傾向が強いです。 - スマホ経由の利用傾向
スマホ経由のECアプリの利用では、男女間で違いが見られ、特定のECアプリの利用者が20%前後存在しています。これは、ECサービス運営企業にとって、顧客層の理解とアプローチ戦略を見直すきっかけとなります。
- デバイスの利用傾向
これらの洞察は、ウェブデザインやマーケティング戦略を構築する上での一つの参考となりますが、最新の市場状況やユーザー行動の変化に注意を払うことが重要です。性別によるウェブ体験の違いを考慮しつつ、進化するデジタル世界に適応することが、効果的なウェブプレゼンスを確立する鍵となるでしょう。
ユーザー中心のWebデザインと購買行動の違いに基づいたウェブサイト設計の必要性
2023年の当メディアにおいて、2014年に公開された本記事が最も多くの流入とページビューを獲得していました。このことは、いくつかの重要な点を示唆しています。
まず、この記事はユーザーの理解に重点を置いており、特に男女の認知的違いに焦点を当てています。このアプローチは、顧客のニーズや行動を理解することの重要性を強調しており、これは2023年のデジタルマーケティングのトレンドと一致しています。2023年のトレンドでは、AIの活用、パーソナライゼーション、ソーシャルコマース、対話型マーケティング、動画マーケティングなどが重視されています。これらのトレンドはすべて、顧客との関係構築や個々のユーザーのニーズに応じたコンテンツの提供を重視しています。
特に、ユーザー中心のデザインや、男女の購買行動の違いに基づいたウェブサイト設計のアプローチは、現代のパーソナライゼーションの傾向と相関しています。顧客の行動や好みに基づいて個別化された体験を提供することは、現代のデジタルマーケティング戦略において重要な要素となっています。
さらに、この記事が多くの流入を獲得していることは、デジタルマーケティングに関心を持つユーザーがユーザー行動や心理学に基づいたマーケティングの洞察に価値を見出していることを示しています。これは、より深いユーザー理解がマーケティングの効果を高める鍵であるという業界の認識を反映している可能性があります。
また、古い記事が2023年になってもなお高い関心を集めていることから、デジタルマーケティングの基本的な原則や理論が依然として関連性を持ち続けていることがうかがえます。これは、新しいテクノロジーやトレンドに飛びつくだけでなく、基本的な理解と知識の維持が重要であることを示唆しています。
総合すると、この記事の人気は、デジタルマーケティングにおいてユーザー行動の深い理解とパーソナライズされたアプローチが依然として重要であることを示しています。また、基本的なマーケティング原則が現代のトレンドにも適用可能であることを示唆しています。
男性と女性の認識的違いは生まれつき異なっている?
表情に反応する女の子、モノを気にする男の子
イギリスの発達心理学者サイモン・バロン=コーエンによれば、生まれたばかりの赤ちゃんが男の子と女の子で明白な違いがあるといいます。そのひとつが興味の対象です。
男の子は対物志向が強く、女の子は対人志向と強いというのです。実際、男の子は乗り物やロボットなどのおもちゃで空想的な遊びをしたがったり、女の子は人形遊びやままごとといった社会性のある遊びが好む傾向があります。
また、例えば母親が携帯電話でメールを打っているのを見た場合に、女の子はその母親の表情などに注目するのに対して、男の子は持っている携帯電話に注目してしまうのです。
「目的脳」の男性と、「共感脳」の女性
このような男女の違いを脳科学の視点から見ると、男性は「目的脳」、女性は「共感脳」と言われています。
早稲田大学の森川友義教授はこちらの記事で、男女の脳の違いをこう語っています。
我々の遺伝子の進化は非常に遅く、狩猟採集時代の遺伝子を引きずっています。農耕社会から産業社会になるまでの期間が大変短かったため、遺伝子が追いついていないのです。狩猟採集時代においては、男性は、狩猟している最中に会話をしていたら獲物が逃げてしまうので、必要最低限の目的のある会話しかしなくなり、その結果、「目的を解決するための解決脳」になっています。一方の女性は、いつ獲物に襲われるか分からないので、声をだすことで互いの存在を確認しなくてはいけませんでした。そのため、目的がなくても会話をする必要があり、女性の脳は、声を出して共感し合う「共感脳」というものに進化しました。
ここでは会話の例が挙がりましたが、他にも男性はモノゴトを体系的に考えるシステム思考が得意であり、女性は人のわずかな表情や声のニュアンスを読み取ることが得意であるなどの違いがあるという研究結果もあげられています。
男女の脳の違いはサイト行動にも反映されるのか?
では、このような脳の違いというのは、サイトの行動でも現れるのでしょうか?
2014年に、あるレシピサイトにおける男女の行動がそれぞれどう違うのかを、Clicktale(現Contentsquare)で分析してみました。
以下はマウスクリックヒートマップから、ウェブサイトの訪問者がページ内でどの部分をクリックしているかを示したものです。男性は左で、女性は右です。
これを見ると、女性ユーザーはトップメニューバーにかなり注目していることがわかります。異なる食べ物のレシピを見るために、様々なカテゴリーをクリックしているのです。女性はまた、レシピよりも左サイドの画像をクリックする割合が高く、多くのページを回遊していることがわかります。
男性はそれに対して、クリック自体が女性と比べてほとんどありません。これは男性が検索したものを閲覧した後に、「レシピを知る」という目的のことが完了したため、そのままサイトから離脱していっていることを示しています。「目的脳」の顕著な側面が垣間見える結果となりました。
また、次の画像はアテンションヒートマップでの分析画像です。(赤くなっているところがより注目されている箇所となります)こちらも、男性は左で、女性は右です。
ページの中央に赤い帯が見て取れるように、男性はレシピの原料と、どのようにして調理するかにマウスが集中しています。
対して、女性はヒートマップの赤くなっている部分がページ全体に広がっていることから、ページの上下をブラウジングして、あまり集中してコンテンツを見ていません。目的のレシピや調理法以外にも、様々な画像や情報に反応する傾向があるのでしょう。
この2つのヒートマップからわかることは、男性は目的の情報を得るためにWEBサイトを訪れるのに対して、女性は目的をより深く知ろうとブラウジングを行うという傾向があるということです。
男女行動の違いをWEBサイトに応用する
男女の行動の違いに目を向けるようになれば、自ずとビジネスのやり方も変わってくるでしょう。
男女の購買行動の違いを明らかにした論文「Men Buy,Women Shop」を執筆したウォートン大学のステファン教授によれば、
「女性は人間関係や流行によって購買を考えるが、男性は自分にとって役立つもの・目的を達成するものを買おうとする傾向がある」
と述べています。
では、どのようにしてこの知見をWEBサイトデザインや、ユーザー体験に生かしていけばいいのでしょうか?以下にその3つのヒントを紹介します。
■男性には目的の達成を、女性には回遊プロセスを楽しませることを
今まで述べてきたように男性はある目的を達成しようとする志向性が高く、女性はそのプロセスを楽しむ傾向があります。そのため、男性にはより目的の情報を明確に配置するようにして、女性にはブラウジングを楽しめるように幅広いコンテンツを配置することが効果的です。
■WEBサイトのタイプ
女性はWEBサイトに対してコミュニケーションを求めます。例えば、チャットであったり、SNSなどには女性のほうが多くの時間を費やしています。対して、男性はWEBサイトを一つの「ツール」として考えているため、その機能面に着目します。男性向けWEBサイトならば、仕事や生活に役立つ情報などを発信することが効果的と言えます。
■注目するコンテンツの違いを応用する
女性は男性よりも多くの細かいところに注意を払っています。そのため、購買の決定を下すのにも色の違いや・コピー・細かい製品情報・値段など多くの情報を求めます。実際、Clicktaleでの分析でも男性よりも女性のほうが1回の訪問で閲覧するページ数が多いという結果になることがわかっています。
対して、男性は衝動的に購買をしてしまう傾向があります。大きなキャッチコピーや見出しに強く反応し、購入を決めてしまいます。
以上より、女性向けサイトであれば細かい丁寧なサイトにすることが必要ですが、男性向けサイトは注目を引く大きなキャッチコピーや画像を魅せていくのが効果的と言えるでしょう。
ジェンダーインサイトを活用した戦略の実装
性差を考慮したウェブデザインとマーケティング戦略を実装する際には、以下のポイントが考慮されるべきです。
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- ユーザー行動の分析
定量的および定性的なデータを用いて、異なる性別のユーザーがウェブサイトやアプリでどのように行動しているかを理解します。これには、サイトの訪問頻度、滞在時間、クリック率、購買行動などが含まれます。 - パーソナライズされたコンテンツ
ユーザーの性別に合わせてパーソナライズされたコンテンツを提供します。たとえば、女性ユーザーが多いウェブサイトでは、女性に関連するトピックや視覚的な要素を強調することが効果的です。 - デザイン要素の調整
ユーザーインターフェイス(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)の設計において、ジェンダーに基づく好みや行動を考慮します。例えば、色使い、フォントの選択、画像やアイコンのスタイルなどが挙げられます。 - 多様性と包括性
ジェンダーに焦点を当てることは重要ですが、多様性と包括性も念頭に置くべきです。異なる性別、年齢、文化背景を持つユーザー全員がウェブサイトやアプリを快適に利用できるようにします。 - マルチプラットフォーム戦略
異なるデバイスとプラットフォームに対するユーザーの違いを理解し、マルチプラットフォーム戦略を構築します。男性がPCでの使用を好む傾向がある場合、デスクトップ向けの最適化を強化し、女性がスマートフォンを多用する場合はモバイルファーストのアプローチを取ります。
- ユーザー行動の分析
性別に基づくウェブ利用の違いを理解し適切に対応することで、ウェブデザイナーやマーケターはより多くのユーザーを引き付け、高いエンゲージメントを促進することができます。しかし、市場動向やユーザー行動の変化に敏感であること、そして常にデータ駆動型のアプローチを取ることが、成功の鍵です。
まとめ
ウェブデザインとユーザーインタラクションの最新トレンド、および男女間のウェブ利用の違いに関する洞察は、今日のデジタルマーケティングとオンラインプレゼンスにおいて非常に重要です。2024年のトレンドを理解し、これらの知識を戦略に活かすことで、ウェブサイトやオンラインプラットフォームは、より魅力的でユーザーフレンドリーなものになります。
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- トレンドへの適応
最新のウェブデザイントレンドを取り入れることは、ユーザーの注意を引き、関与を深めるために不可欠です。しかし、トレンドを追いながらも、ユーザーの実際のニーズとウェブサイトの目的に基づいて適応することが重要です。 - 性別の違いを理解する
男女間で異なるウェブ利用の傾向を理解し、それに基づいたパーソナライズされたアプローチを採ることで、ターゲットユーザーにより効果的にリーチすることができます。 - 継続的な学習と革新
デジタルの世界は絶えず進化しています。最新のトレンド、ユーザー行動、技術進化に敏感であり続けることが、効果的なオンライン戦略を維持するために不可欠です。
- トレンドへの適応
最終的に、ウェブデザインとデジタルマーケティングは、単なるトレンドの追求ではなく、ユーザーとの深いつながりを築くための手段です。ウェブサイトの訪問者が求める体験を提供することで、エンゲージメントを高め、ブランドロイヤルティを促進することができます。そのためには、トレンドの理解、性別の違いへの洞察、そして継続的な適応とイノベーションが鍵となります。
※ClicktaleはContentsquareへ統合され新たなプラットフォームとして生まれ変わりました。
顧客体験分析プラットフォーム・Contentsquareについてのお問い合わせはこちらから。
今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。