コホート分析とは?リピーターやファンを獲得するための活用方法
コホート分析とは、ユーザーを属性や条件で分類し、グループごとに動向を分析する手法のことです。
顧客の消費行動が多様化する現代において、自社サービスへの満足度を高めるためには徹底した顧客理解が求められます。コホート分析の結果をサイト構築や商品開発に活用すれば、新規顧客のリピート率向上に効果的です。
本記事では、コホート分析の活用事例や実施方法などについて詳しく解説します。
サイトの閲覧数やコンバージョン率を改善したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
コホート分析とは
コホート分析とは、ユーザーを世代や地域などの条件で分類し、購買行動などを細かく追跡する手法のことです。
「コホート」とは同じ因子や性質をもつグループを意味します。
Webサイトを訪問するユーザーは、性別などの基本情報だけでなく、訪問日や訪問回数などもさまざまです。コホート分析の実施により、ユーザー属性別の詳細な行動変化を把握できます。
コホート分析が必要とされる背景
マーケティングにおいてコホート分析が必要とされる背景には、顧客の消費スタイルの変化があります。
従来はモノを所有するためにお金を支払いましたが、時代が進むにつれて必要な分だけを利用・シェアするなど消費行動は多様化しました。
中でもサブスクリプションサービス(定額料金の支払いにより一定期間利用できるサービス)は、消費スタイルのトレンドの象徴です。
サブスクリプションサービスは初期費用を抑えているため、顧客に継続利用してもらわなければ利益を得られません。ユーザーの関心を維持するために、コホート分析は重要な役割を果たします。
今後ますます拡大が予測されるサブスクリプションサービス市場でのマーケティング対策として、コホート分析の活用方法を知っておくことが大切です。
コホート分析の重要性
Webサイトの成長にはアクセス数やコンバージョン率、ユーザー維持率などのさまざまな指標の計測が欠かせません。
コホート分析は特にユーザー維持率の把握に有効な手段であり、顧客の定着度を知る手がかりとして多く活用されています。
ユーザー維持率とは、新規顧客がリピーターになる割合のことです。サイトの再訪率や商品の再購入率などが該当します。
リピーターの獲得は商品サービスに対する満足度や、企業への信頼感の高さを裏付けるため重要です。マーケティングにおける「パレートの法則」とは、顧客全体の2割に相当する優良顧客が売上の8割を生み出すことを意味します。安定した利益を確保するためにも、顧客との長期的な関係性の維持は重要です。
コホート分析では、リピーターになる人とならない人に分類し、それぞれの行動パターンを把握できます。
ユーザーの定着率向上につなげるため、コホート分析を効果的に実施しましょう。
コホート分析の活用事例
リピーターやファンの獲得に有効なコホート分析は、ECサイトでの売上増に活用できます。
より上位の商品を選んでもらう「アップセル」や、関連商品も一緒に購入してもらう「クロスセル」を促し、顧客単価の向上を目指せるからです。
また、既存顧客はSNSで商品サービスの価値を拡散してくれます。新商品への関心や理解も早いため、新規顧客と比べて広告費をおさえられる点もメリットです。
コホート分析によるユーザーの動向把握は、ユニークユーザー数の増加がサービスの維持につながるWebメディアやSNSの成長戦略にも効果があります。
SNSは「いいね」の数やフォロワー数により、ユーザーの興味をダイレクトにつかめる点が特徴です。コホート分析ではリアクションの高いコンテンツやユーザー属性などで分類し、グループ別の詳細な行動追跡を可能にします。
ECサイトやSNSの発展とともに、コホート分析の活用事例は増加しています。
コホート分析でわかること
コホート分析ではサイトの課題を発見し、改善につなげるための各種データ収集を行います。
収集できるデータの一部は次のとおりです。
- ユーザーが初めて訪問してから再訪問しなくなるまでの日数
- 一定期間中にページビュー数が減少するタイミング
- コホートによる滞在時間の違い
- ページ内で離脱されやすい箇所
サイト訪問日や世代・性別など、コホート別のさまざまなデータの収集および分析がサイトの最適化につながります。
コホート分析を活用し、ユーザーの興味や関心と合致するコンテンツを作りましょう。
コホート分析のメリット
コホート分析のメリットは、主に次の3つです。
- 顧客ニーズを把握できる
- リソースやコストの最適化を図れる
- 具体的な改善策を実施できる
コホート分析の活用により、顧客が自社に求めるものを的確にとらえられます。
顧客ニーズを把握できる
コホート分析は一定期間に同じ経験をしたユーザーグループの行動を追跡するため、顧客ニーズを正確に把握できる点がメリットです。
例えば、キャンペーン期間中に特定の商品を購入したユーザーでコホート分析を行ったとします。ユーザーの多くが関連商品も購入した場合、当該商品ジャンルの顧客ニーズは高いと判断し、関連商品への広告にも注力するという戦略立案が可能です。
現在の日本市場は飽和状態で、商品やサービスが広く行き渡っています。成熟市場で企業が収益を安定させるために必要なのは、顧客との深いつながりです。
企業や商品サービスのファンになってもらうため、顧客のニーズや動向把握は重要性を増しています。
コホート分析で得たデータを活かして、ユーザーが望む顧客体験を継続的に提供することが大切です。
リソースやコストの最適化を図れる
コホート分析は特定の因子で細かく分類した顧客グループについて、購買行動や嗜好を深く探る手法です。
グループごとに必要な施策を実施することは、リソースやコストの最適化につながります。
ユーザー維持率を向上するためには、改善策の実施と効果検証の継続的な取り組みが必要です。
しかし時間や資金に十分な余裕がない状態では短期目標が優先され、リピーター獲得などの長期目標は後回しになることも多いでしょう。
限られたリソースやコストで計画的にリピーター戦略を進めるには、売上増に貢献するユーザーへの焦点をしぼった働きかけが有効です。
コホート分析は顧客ニーズを細かく把握できるため、ターゲット市場に合わせた商品サービスの開発やマーケティングメッセージの作成を可能にします。
リソースやコストの最適化を図り、効率的にユーザー維持率向上を目指しましょう。
具体的な改善策を実施できる
企業の成長には、実行と改善のPDCAサイクルを回すことが欠かせません。
改善策には具体性が求められるため、コホート分析による詳細なデータ収集が重要な役割を果たします。
例えば商品キャンペーンの実施後に、売上目標を達成できなかった原因を調査するとします。
分析にあたってすべてのユーザーを対象にした場合、売上が伸びなかった詳しい原因は突き止められません。
コホート分析なら、世代や訪問日時などで分類したグループごとの行動分析が可能です。滞在時間や離脱ポイントなどがわかれば、ターゲットに合致した改善策を考案できます。
ユーザーの属性ごとに行動傾向を把握し具体的施策につなげるなら、コホート分析の活用がおすすめです。
コホート分析の活用方法
コホート分析の活用方法は、主に次の6つです。
- PV数などの減少時に対策を打つ
- 離脱防止策を考案する
- 需要予測に活かす
- 新規顧客獲得数の目標を立てる
- キャンペーンの有効性を評価する
- サービス解約率を改善する
ECサイトやWebメディアでの効果検証から将来的な需要予測まで、コホート分析を幅広く活用しましょう。
PV数などの減少時に対策を打つ
コホート分析でユーザー数やページビュー数が減少するタイミングを把握し、ユーザーをつなぎとめるための対策に役立てましょう。
例えばWebサイトの初訪問から1週間のタイミングでユーザーが減少している場合、1週間以内に新たな記事を更新する対策が立てられます。
リピート率が高いユーザーと低いユーザーの比較により、サイト改善の方向性を定める方法も可能です。
例えば同じ年代のユーザーでも、休日昼間の訪問者はリピート率が高く、平日夜間の訪問者はリピート率が低かったとします。分析の結果から、平日夜間の訪問者が何を求めて自社サイトを閲覧するのか、深く掘り下げる必要があると判断できます。
ページビュー数の減少に対しては、内部リンクの配置による複数コンテンツへの導線形成も有効です。
再訪問をやめるユーザーの行動傾向を把握することで、継続訪問を促すための対策を効果的に実施できます。
離脱防止策を考案する
属性で分類されたユーザーグループの離脱率の分析により、より長く滞在してもらうための施策の考案が可能です。
サイト滞在時間が短く、離脱率が高いグループは、コンテンツとユーザーニーズに不一致が生じている場合があります。届けたい情報までたどり着かないうちに、ターゲットユーザーが離脱している可能性も否定できません。
ページの途中で離脱するのは、見たいコンテンツがなくなったタイミングです。
コホート分析により離脱のタイミングが分かれば、閲覧をやめてしまう原因が特定しやすくなります。
ある一定のタイミングで離れていくユーザーが多い場合は、効果的に内部リンクを配置してサイト回遊率を上げましょう。ユーザーニーズに合致したコンテンツを充実させる取り組みも大切です。
コホート分析の結果をもとに、獲得したユーザーが興味を失わないようなサイトの構築に注力してください。
需要予測に活かす
商品の製造数や仕入数を決める際には、市場における需要の見通し把握が大切です。
コホート分析は将来的な需要予測に活用できるため、費用対効果を意識した施策立案に役立ちます。
コホート分析により、ユーザーグループごとの維持率や離脱状況の長期的な測定が可能です。各グループの需要予測にもとづいた商品開発やプロモーションを行えるため、コホート分析によるデータは事業計画における重要な指標となります。
さらにコホート分析は、LTV(顧客生涯価値)とよばれるユーザーあたりの総売上予測にも有効です。LTVはユーザーあたりの平均単価とアクティブユーザー数、平均継続利用期間をかけ合わせて算出します。
コホート分析によりユーザーの定着率を明らかにすることで、LTV予測をともなう長期的なマーケティング戦略を展開できます。
新規顧客獲得数の目標を立てる
マーケティングにおける「1:5の法則」とは、新規顧客に販売するコストが既存顧客の5倍かかるという意味です。
したがって、必要な新規顧客獲得数の目安を設定しておくことが、セールスコストの削減につながります。
コホート分析はユーザーの離脱傾向がわかるため、目安となる新規顧客獲得数の算出に有効です。
例えば1週間で2%のユーザー減少傾向があるなら、減少分を埋め合わせるための新規顧客獲得数を目標として定められます。
離脱防止策も大切ですが、一定数の避けられない離脱ユーザーも視野に入れる必要があります。
現在のユーザー数と離脱数を比べて、セールス目標を達成できるような新規顧客獲得数の目安を設定しましょう。
キャンペーンの有効性を評価する
コホート分析は、キャンペーンやセールの効果検証にも役立ちます。
購入した人や閲覧のみの人、カゴに入れたまま購入しなかった人などグループごとの行動分析が重要です。
例えば、キャンペーン中に初めて購入した顧客グループのリピート購入率やサイト再訪日を分析することで、ユーザーあたりの収益や定着率がわかります。
数値が改善した場合は、引き続き同様のキャンペーンに注力するという戦略立案が可能です。反対に離脱傾向が見られる場合は、再訪するタイミングで追加情報を発信するなど、定着させるための取り組みを実施する必要があります。
さらに顧客が最初に購入した商品ごとにコホートを形成すれば、クロスセル率やアップセル率を測定できます。収益を生み出す顧客の行動傾向や、売上貢献度の高い商品の特定に効果的です。
コホート分析による詳細な効果検証により、キャンペーンを売上増加につなげましょう。
サービス解約率を改善する
コホート分析は、サブスクリプションサービスなどの解約防止にも役立ちます。
基本的に新規顧客ほどサービスの解約率は高くなるため、リピーターが増加すれば全ユーザーを対象とした解約率は低下する場合が多いです。
しかし新規顧客の解約率が改善したかどうかは、詳しい分析をしなければわかりません。
コホート分析なら、会員登録時期別の解約率の調査が可能です。
例えば登録した時期が1年以上前の顧客と、半年以内の顧客でそれぞれコホートを形成します。半年以内の顧客の解約率が前年度と比べて低下していれば、新規顧客の解約率が改善していると判断できます。
もし改善が見られなければ、解約率が高くなるタイミングでキャンペーンを実施するなどの対策が必要です。
ユーザーを細かく分類してサービス解約率を把握したいなら、コホート分析を活用しましょう。
コホート分析の実施方法
- Excelを使う方法
- Google Analyticsを使う方法
自社の現状をふまえて、適切な方法を選択しましょう。
Excelを使う方法
コホート分析をExcelで行う場合は、ピボットテーブルを使います。
ピボットテーブルとは、Excelに搭載されているデータベースの集計・分析機能です。関数の詳しい知識がなくても利用できるため、コホート分析を手軽に試したい場合はピボットテーブルから始めてみるのをおすすめします。
ピボットテーブルはデータベースの作成が必要です。ユーザーが会員登録してから離脱するまでの日数と離脱率を分析する場合は、各ユーザーの会員登録日と離脱日のデータを準備しておきましょう。
分析手順は次のとおりです。
- Excelの新規シートにデータを入力する
- データを範囲選択し、メニューの「挿入」から「ピポットテーブル」をクリックする
- 「ピボットテーブルのフィールド」で分析用の表を作成する
分析用の表は、横軸や縦軸に項目をドラッグするだけで作成できます。
大量データの複雑な分析には不向きですが、小規模な分析には適したツールです。
Google Analyticsを使う方法
Googleが提供している「Google Analytics」でもコホート分析が可能です。
ここでは例として、3か月のキャンペーン期間中に初めてランディングページを閲覧したユーザーのコンバージョン数を調べる方法について解説します。
管理画面の「ユーザー」内にある「コホート分析」を選択し、次の4つの分析項目を設定してください。
- コホートの種類:集客の日付
- コホートのサイズ:月別
- 指標:目標の完了数
- 期間:3か月
さらにユーザーの分析対象をしぼり込むため、次の設定を行います。
- 管理画面「セグメントの追加」>「新しいセグメントを作成」>「シーケンス」>「シーケンスの開始」を「最初の通過地点」に指定>ランディングページのURLを設定
以上により、設定した条件でコホート分析を実施できます。
Googleのアカウントを取得すれば無料で利用できるため、Excelでは分析しきれない場合に検討してみてください。
まとめ:コホート分析を活用してリピーターやファンを獲得しよう
顧客ニーズを的確に把握することで、商品開発やマーケティング戦略の精度を高め、顧客との深い信頼関係を築くことができます。
コホート分析を活用し、リピーターやファンの獲得につなげてください。
本メディアを運営する株式会社ギャプライズでは、WebマーケティングやWebサイト改善、Webサイト集客など、さまざまな課題や悩みに対応したビジネスを展開しています。
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今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。