ABテストツールの「失敗しない選び方」完全ガイド 〜無料から有料までプロが徹底比較〜
こんにちは。ギャプライズ鎌田です。
Webサイトのパフォーマンスを改善するための重要施策である「ABテスト」は、自社でシステムを組んで実施するケースもある一方で、専用のABテストツールを使うことで、よりカンタンかつスピーディーに実施出来るようになりました。
しかしながら、自社でABテストをしたいと考えているWeb担当者の方で、ABテストツールをどのような観点で選定・採用すればよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
特に「ABテストをこれまで一度も行ったことがない」という方だと、
- そもそもABテストツールとは何ができるツールなのか?
- いくつもあるABテストツールは何が違うのか?
- ツールの導入はどれくらい大変で、お金はいくら掛かるのか?
などツールの選定以前に分からないことだらけでどうしよう……という感じではないかと思います。
本記事では、累計7,500回以上のABテスト実績をもつギャプライズ専門チームが、「実際に触って確かめた」ABテストツールの比較結果をもとに、あなたのビジネスにフィットしたABテストツールを確実に選ぶ方法をお伝えします。
記事の最後で、ABテストツール選定のためのごく簡単なチェックリストもご用意しているので、時間のない方はそこだけでも見ていただくと良いでしょう。
それではいってみましょう。
目次
ABテストツールとは?
まず、そもそもABテストツールとは何ができるツールなのか?を確認しておきましょう。
ABテストとは、異なる2つ以上のパターンを同一条件で出し分けるテストのことを言います。例えば、以下は問合せフォームの項目数を減らすことによって、CVRが1.23倍になったABテストの事例です。
(参考:CVR9倍の鍵は大失敗にあり。逆境を力に変えるABテストの力学)
このようにABテストは、少ない労力でサイト全体のパフォーマンスを大きく改善できるケースもあります。
ABテストの実施においては、少なくとも以下のようなプロセスが必要になってきます。
- テストパターンの作成
- テストパターンのランダム表示
- テストパターンの勝ち負けの判定
- 勝ちパターンのWebサイトへの反映
ただ、このようなプロセスをすべて自社開発で用意しようとすると技術的にも金銭的にも大きなハードルがあります。
そこで登場したのがABテストツールです。
ABテストツールは基本的にサイト内にタグを設置するだけで、上記のようなABテストにおいて必要なプロセスが、全て管理画面内で完結出来るように設計されているツールのことです。
さらにABテストツール内にはビジュアルエディタというものが用意されており、非エンジニアでもサーバーやHTMLを触ることなくすぐにABテストが実施できるようになるメリットがあるため、特にこれからABテストを始めるという方には基本的にツールの使用が推奨されます。
なお、この中で「4. 勝ちパターンのWebサイトへの反映」については、ABテストツールで可能であるということをご存知でない方が多いと思います。
大抵のABテストツールには配信比率を変更出来る機能が備わっています。通常はAとBを50対50で出すのが一般的なABテストです。
これを応用し、オリジナルの配信を0%にし、テストパターンの配信を100%にすることでABテストツール上からサイトを改修することも可能になるのです。このような方法は特に大規模サイトで小さなサイト改修でも時間がかかってしまうようなケースで多く取り入れられています。
このような使い方を知っているとABテストツールの恩恵を最大限受けることもできますので頭にいれておきましょう。
ABテストツールは何が違うのか?
次に、世の中で「ABテストツール」と呼ばれるものにどのようなものがあるのか、そしてそれらにはどういった違いがあるのか?を見ていきましょう。
下記は「SimilarTech」というサイトから引用した、現在グローバルで普及率の高いABテストツールのTOP10です。
ご覧の通りグローバルでは、Optimizely というツールが圧倒的なシェアを持っていることがわかります。その次に 無料で使えるGoogle オプティマイズ、そして VWO(Visual Website Optimizer)と続いています。
また、上記にはリストされていない日本製のABテスト機能を持っているツールも数多くあります。例を上げると SiTest、DLPO、KARTE などです。
では、これらのツールはそれぞれ何が違うのでしょうか?実はABテストを実施できるという点では基本的な動作原理はどのツールも変わりません。
いずれのツールもJavaScriptという言語を使って、Webサイトをツール上から書き換えるようなイメージで動作しています。
ここでは細かい機能よりもまずは、検討にあたって大きなポイントとなる3点をまずは理解しておきましょう。
1. 無料か、有料か
「無料で使えるABテストツールがある」ということをまず押さえましょう。
その中でも無料ツールとして圧倒的なシェアと豊富な機能を備えているのが Googleオプティマイズです。無料ですので導入はしやすいのですが、当然ながら無料ゆえの制約もあり、この点については重要ですので後述します。
まずは手軽にABテストを始めてみたいという方は、無料のGoogleオプティマイズから始めるとよいでしょう。
2. 従量課金か、月額固定か
有料のABテストツールを検討する場合、以下2種類の課金形態があります。
- 従量課金:ABテスト実施ページのPV数で料金を決定
- 月額固定:Webサイト全体のPV数で料金を決定
どちらを選ぶべきかはサイトの規模やテスト頻度によって変わるため、一概に目安を示すことはできませんが、傾向としてテスト頻度が多くなればなるほど「月額固定」のほうがコストパフォーマンスが良くなりやすいです。
実際の費用については、テスト対象Webサイトの月間PV数と、想定しているテスト頻度をもとに、各ツールベンダーに対して見積り依頼をして把握しましょう。
3. 付帯機能があるか
ツールによっては、ABテスト以外の機能で付加価値を高めているものがあります。
代表的なのは「ヒートマップ機能」や「EFO機能」です。いずれの機能もWebサイトに導入する場合は専用の有料ツールを入れることになるケースが多いので、 ABテストツールと一緒にまとめて契約したほうがお得になるケースがあります。
検討にあたっては、ヒートマップツールまたはEFOツールの導入が今後の検討項目になっているかどうか、必要な要件を事前に確認しておきましょう。
無料GoogleオプティマイズがNGの3ケース
ABテストツール選びにおいて最もありがちなミス、それは「とりあえず無料なので Googleオプティマイズを選ぶ」というものです。
まずは自分で使ってみて検討するのは素晴らしいと思う一方、有料のツールについても並行して検討できているでしょうか? また、無料 Googleオプティマイズの仕様上、明らかにフィットしていないケースというのも存在します。
そのようなケースでは最初から利用を避けていただくのが望ましいと言えます。
以下では無料 Googleオプティマイズを使わないほうが良いケースを3つ、重要な順にお伝えします。
1. ツールの使用者に技術的な知見がない場合
実際に使ったことがある方なら分かると思いますが、Googleオプティマイズをしっかり活用するためには、それなりに技術的な知見が必要です。
まず、テストパターンの作成において多くのケースで HTML/CSS、JavaScript を実際に書くことになります。書かなくてもできるテストもあるにはありますが、本当に簡単な実装のものに限られ、テストの選択肢がだいぶ狭まってしまいます。
もし、技術的な知見がない方が誰からのフォローも受けず、理解が浅いまま、ブログ記事などをググりながら Googleオプティマイズを無理やり使用したりすると、最悪の場合、Webサイトの表示が崩れる、購入ができなくなる等の致命的なエラーを生む恐れがあります。
そしてそのようなケースで相談できる窓口も無料Googleオプティマイズにはありません。無料ですから全て自己責任。ヘルプやフォーラムを活用し、自己解決してくださいというスタンスです。
有料ツールはこの点、テンプレートやウィジェットなど、非エンジニアが利用することを想定した機能を豊富に持っているものがあります。
また、設定に困った際にはツールベンダーから技術サポートを受けることもできます。
もしGoogleオプティマイズを使う際に技術的な懸念がある場合、弊社では有料ツールをおすすめしています。
2. コンバージョン数が月1,000件を超える場合
あくまで目安ですが、テスト対象サイトの月間コンバージョン数が1サイトあたり1,000件、CVR=1%と想定して月間10万セッションを超えている場合は、無料Googleオプティマイズではなく、有料のABテストツールを使用したほうが良いケースが多くなります。
なぜなら 無料Googleオプティマイズは同時に実施できるテスト数が5件までに制限されており、CV数が増えれば増えるほど、ABテストを実施したくても実施できないという機会損失が大きくなるからです。
ABテストをプロジェクトとしてしっかり動かしていく場合、少なくとも3,4本はABテストが常に同時並行で走るような形になります。
これは無料 Googleオプティマイズの場合、バッファがあと1, 2件しか無いということを意味します。
例えばこのとき、あなたの部署がABテストでうまくいっていることを聞きつけた別部署のスタッフが「ウチもABテストをしたいんだけど」と言ってきたらどうなるでしょうか? その時点でもう5件では足りなくなってしまいます。
ABテストの目的はWebサイトのパフォーマンス最大化であり、ツールはあくまでその手段ですから、無料ツールの利用にこだわってその制約に振り回されるのはナンセンスでしょう。
3. SPAなど特殊なWebサイト環境の場合
SPA(シングルページアプリケーション)というのは、ページの表示速度改善や構築後の運用に長けているWebサイト実装方法です。弊社クライアントでも、大手サイトを中心に採用例が増えてきています。
無料ないし安価なプランのABテストツールは、一般的なPC/スマートフォンサイトにはもちろん対応していますが、SPAなどの動的なWebサイトには対応できないケースがあります。
なお Googleオプティマイズでは、アクティベーションイベントという機能を用いてSPAでのABテストを行う方法が案内されています。もし上記ヘルプページを読んでも内容が理解できないようであれば、SPAで無料Googleオプティマイズを使用するのは避けたほうが無難です。
このような特殊な環境では、標準でSPAに対応しているOptimizely, AB Tasty などの製品が推奨となります。ABテストツールの選定前にはまず自社のWebサイト環境をチェックし、それに対応しているツールを選ぶようにしましょう。
世界4大ABテストツールの比較
ここまででABテストツールの選び方や注意点をご紹介してきましたので、以降ではツールの具体的なご紹介をしていきます。
とはいえ、世の中にあるすべてのABテストツールを紹介していると記事があまりに長くなってしまうので、 ポイントを絞ってご紹介します。
弊社ギャプライズでは現在、ABテストツールとして下記4つを主にご案内しています。
- 無料:Google オプティマイズ
- 有料:Optimizely
- 有料:AB Tasty
- 有料:VWO
この4つは SimilarTech の「Top A/B Testing Technologies」でも最上位にランクしている、世界で特に使われているABテストツールです。それだけでなく、これまで私たちがABテストを何度も繰り返してきた中で、ツールとしてのパフォーマンスやお客様の満足度が高いツールでもあります。
以下では、これらのツールについて1つずつご紹介します。
無料:Google オプティマイズ
サービスサイトURL:https://marketingplatform.google.com/intl/ja/about/optimize/
まずは、これまでの章でもご紹介した無料 Googleオプティマイズです。
一番の特徴はやはり無料なので導入に際してのハードルがほぼ無いことと、加えてGoogleアナリティクスや Google広告との連携が容易である点が挙げられます。この連携は非エンジニアでも全く支障なく行うことができます。
無料Googleオプティマイズをおすすめできるケースは、端的に言えばさきほど挙げた「無料 GoogleオプティマイズがNGのケース」の、逆です。
まず「ツールの使用者に技術的な知見がある場合」。JavaScriptを自分ですらすらと書くことができ、アクセス解析ツールについての技術的な知見も持っており、なにか不具合が生じたときに自分で対処することができるスキルを持っている場合は、十分に無料 Googleオプティマイズを使いこなせるでしょう。
そして「CV数が月1000件を下回る場合」。この場合は有料ABテストツールでは採算が合いづらいため、無料 Googleオプティマイズがおすすめとなるケースが多くなります。
有料:Optimizely
サービスサイトURL:https://optimizely.gaprise.jp/
Optimizely(オプティマイズリー)は、2021年現在、世界で最も普及している ABテストツールです。
マーケターの方の中には「オバマ大統領が自身のWebサイトでABテストを駆使して寄附金の増額に成功し、選挙で勝利した」というエピソードを聞いたことがある方がいるかも知れません。
実は2008年当時、そのABテストを仕切っていたのがOptimizelyの創業者であるダン・シロカー氏であり、その時の気付きをもとに2009年に作られたのがOptimizelyなのです。
ABテストツール業界のリーディングカンパニーであり、テストのパフォーマンスを高めるために独自の統計エンジンを開発するなど、製品開発に対する気合の入り方は他のツールの一段上をいっています。
Optimizely をおすすめできるケースは、一言でいえば「他のツールで難しかった場合」。他のツールでできてOptimizelyでできないものはないと考えて差し支えありません。具体的には、さきほど述べたSPAや、アプリでのABテストを検討している場合などです。
また、すでにABテスト運用を自社開発でおこなっており、さらにパフォーマンスを伸ばすために自社に最適化された環境構築を指向している場合にもおすすめです。FullStuckという開発者向けのABテストモジュールを提供しているため、自社の環境にABテストのロジックを組み込むといったことも可能です。
有料:AB Tasty
サービスサイトURL:https://abtasty.gaprise.jp/
AB Tastyは、2010年にフランスで生まれたABテストツールです。日本ではまだあまり馴染みがないかもしれませんが、2020年までに総計6400万ドルの資金調達を完了し、世界中でユーザーを増やし続けている、いまとても勢いのあるABテストツールのひとつです。
人気の秘密は、Optimizelyなどの既存ABテストツールよりも安価であることに加え、「ウィジェット」など、非エンジニアでも簡単に使えるテンプレート機能が充実している点でしょう。
具体的にはこちらのページで紹介されていますが、代表的なところではフォーム入力やカート追加の進捗状況を表す「プログレスバー」が挙げられます。例えば下記のように、あと〇〇円のカート追加で送料が無料になります!といった機能です。
この手の機能は通常、ABテストをするにしてもエンジニアが稼働しないとテスト実装できない、一方でテストしていないので改善効果が分からず、エンジニアの稼働予算が取れない……というループに陥りがちです。AB Tasty であればエンジニアに依頼しなくてもワンタッチでテスト実装できます。
Googleオプティマイズなどの無料ツールはもちろんこのような機能は持っていません。フロントエンジニアがいないケースで特に有用なAB テストツールと言えます。
有料:VWO(Visual Website Optimizer)
サービスサイトURL:https://vwo.com/
VWO(Visual Website Optimizer)は、インドのWingifyという会社が2010年にリリースしたABテストツールです。
AB Tasty と同じく、こちらもOptimizelyよりも安価に使えるツールの選択肢として挙げられるものになります。
他のツールにないVWOの大きな特徴としては、ヒートマップ機能が付帯している点が挙げられます。
MartechLabでも過去に何度かご紹介しているのですが、ABテストというのは単に「成果が上がったかどうか」だけでなく、「なぜ成果が上がったのか、あるいは下がったのか」を考察することで、テスト結果から今後につながる示唆を得ることが非常に重要です。
そしてその際に、ヒートマップが力を発揮します。ヒートマップがなければ、テスト結果としては数字の羅列が返ってくるだけですが、ヒートマップがあれば各パターンごとにユーザーがどこに注目したのかが一目瞭然となり、何故そのようなテスト結果になったのかが鮮明に分かるようになるからです。
従って弊社では通常、ABテストツールとセットでヒートマップ機能を持つツールについてもご案内しています。
しかし、ヒートマップツールを別で導入するほどの予算はない、だけどヒートマップはやっぱり欲しいというケースでは、このVWO が選択肢として有力候補となります。
まとめ
では、これまでお伝えしたABテストツールの選び方について、重要ポイントをまとめてみましょう。
- 無料Googleオプティマイズは、エンジニアが社内にいない場合や、CV数/アクセス数が多い場合は非推奨
- 有料ツールとしてはまずWebサイト環境やアクセス数、必須要件を整理した上でベンダーに見積もり依頼をする
- AB Tasty は非エンジニアの利用を想定したテンプレート機能が充実している点が特徴
- VWO はヒートマップ機能が付帯している点が特徴
- Optimizelyはすべてを兼ね備えているABテストツール最後の切り札
このポイントを押さえれば、ここに挙げていないツールも含めて、具体的な検討を進めていただくことができるはずです。
もし「こういうケースはどう?」など追加でご質問があれば、私、鎌田までお気軽にご質問ください。
最後に告知になりますが、弊社では今回ご説明した内容を具体的な事例を含めてさらに詳しくご紹介する「自社に適したツールがわかる!世界4大ABテストツール徹底解説セミナー」を開催します。
参加お申し込み特典として、世界4大ABテストツールである無料Googleオプティマイズ、Optimizely、AB Tasty、VWO を細かい機能ごとに詳細に比較したPDF資料をご提供します。
さらに、弊社コンサルティング部が実際に取り組んだ結果から、「実践すべきテストの切り口」を整理しまとめた「ABテスト17の切り口「サイト改善百科事典」」も併せてご提供します。
費用は無料、Zoomでのオンライン開催となります。ご興味のある方はぜひ、ご参加ください。
それではまた次回。
鎌田 洋介 CXO事業部/CSM
2009年ギャプライズ入社。当初は主にランディングページ構築の企画に携わる。LP制作本数は延200本超。 その後はUX再現ツール(Contentsquare)やABテストを活用し、グロースハックの仕組みをチーム内に根付かせるコンサルタントとして、多くのチームビルディングに携わる。 ABテスト実績は累計7,500回以上。