CXMへの取り組み方|顧客管理に欠かせない感覚的な付加価値とは
ECサイトの乱立等により差別化が難しくなる中、ユーザー体験の向上による顧客ロイヤルティの獲得が喫緊の課題となっています。
企業は感覚的な付加価値をどのように創出していくべきなのでしょうか。本記事では、顧客マネジメントの新しい概念であるCXMについてわかりやすく解説します。
CXMはリピーターの獲得やファン化につながる重要な手法です。理解を深め、効果的に取り組むことをおすすめします。
目次
CXMとは
CXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)とは、顧客が商品やサービスを購入する際に体験する感覚的な付加価値を重視したマネジメント手法です。
商品やサービスの機能・価格面での価値だけでなく、感動や心地よさなども含めたすべての顧客体験価値の向上を図ります。
CXMの主な目的は、顧客の口コミによる企業ブランドの構築です。商品やサービスに価値を感じた顧客と中長期的な関係性を築き、収益向上を目指す手法として注目されています。
顧客マネジメントの考え方の変遷
日本では1991年に、顧客満足(CS=Customer Satisfaction)を重視する経営概念「CS経営」が提唱されました。顧客第一の精神論を経営戦略に応用した考え方であり、現在でも多くの企業が取り組んでいます。
しかし、CS経営はモットーとして使われることが多く、収益向上との関連性は不明瞭でした。
やがて情報技術の進化にともない、顧客データの詳細な分析をマーケティングに活かす流れが加速化していきます。
CS経営の目標や成果は数値で明確化され、モットーとしての位置づけから大きな進化を遂げました。
そして近年、顧客体験価値の重要性が高まる中で登場した手法がCXMです。
顧客データ分析と組み合わせることで、マーケティング効果のさらなる向上が見込めます。
CRMとの違い
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客データの分析と活用により最適なアプローチを目指すマーケティング手法のことです。
世代や居住地、購買履歴などのデータをもとに顧客をセグメント化。各セグメントに適したコンテンツを届けることで、マーケティングの効率化を図ります。
CXMとCRMの概念は類似しますが、CXMは顧客が商品やサービスを購入するプロセスに感覚的な価値体験を付加する手法です。
CRMが顧客データの管理・分析に焦点を当てている点で、両者は異なります。
ただし、CXMとCRMの違いはまだ明確に定義されていません。
CXMをCRMの一部ととらえ、CRMのうち感覚的な側面に重点を置く手法であるとする見方もあります。
CMSとの違い
CMS(Contents Management System)とは、Webサイトの構築や管理を行うシステムのことです。Web上でのコンテンツ公開やフォームの設置、レイアウトの調整などを可能にします。
下記のようなツールがCMSです。
- WordPress(オープンソース型)
- Drupal(オープンソース型)
- NOREN(オンプレミス型)
- A-BiSU(オンプレミス型)
近年は数多くのCMSが開発され、機能の汎用化が進んでいます。製品を差別化するための重要な要素となっているのが、良質な顧客体験を提供するCXM機能です。
CMSは顧客がWebサイトやLP(ランディングページ)にアクセスした際の体験に影響を与えることから、CXMに包括されるシステムといえます。
CXMが重視されるようになった背景
マーケティングにおいてCXMが重視されるようになった背景には、主に次の3つが挙げられます。
- 商品差別化の困難性
- デジタル技術の進化
- 顧客ロイヤルティの重要性
それぞれ詳しく解説します。
商品差別化の困難性
現代の市場は技術の進化により、類似する商品やサービスが数多く存在しています。企業間競争はますます激化し、品質や機能性だけでは他社との差別化が難しくなりました。
同時に、消費者にとっての選択肢が増える中で、体験やストーリーなどに価値を見いだす消費行動が新たに浸透しつつあります。
例えばオンラインショッピングサイトにおいて、商品の写真やよくある質問などの情報が充実している場合、見込み客の信頼は高まります。購入プロセスでの満足度は、商品選びにおける重要な要素の1つです。
企業は、消費行動の変化に対応したマーケティングを展開する必要があります。他社との差別化を図るためには、顧客心理を理解したCXMの実施が効果的です。
デジタル技術の進化
インターネットやスマートフォンの普及により、誰でも容易に情報へのアクセスができるようになりました。顧客は膨大な情報の中から、口コミやレビューなどを比較・検討して最適な商品を選びます。企業は自社の商品が選ばれるためのきっかけを能動的に作っていくことが必要です。
また、デジタル技術の進化により、顧客はさまざまなデバイスを通じて企業とのやりとりを行えるようになりました。例えば商品購入は従来の店舗や電話に加え、Webサイトやアプリなどのオンラインプラットフォームからも可能です。顧客と企業との接点が多様化したことから、顧客の体験を包括的にとらえる必要性が増しています。
顧客が求める価値体験を理解し、ニーズに応じたサービスを提供するために、CXMへの取り組みが企業に求められています。
顧客ロイヤルティの重要性
顧客ロイヤルティとは、顧客が抱く企業への信頼や愛着のことです。
リピーター獲得における重要な要素であり、企業の収益性に大きな影響を及ぼします。
市場成長が鈍化している現代では新規顧客の獲得が難しく、商品が購入されても体験価値が低い場合はリピーターになってもらえません。
また顧客体験を軽視した場合、多くのリピーターが競合他社に流出してしまう可能性もあります。
顧客ロイヤルティを高め、継続的な購買活動につなげるためには、CXMへの取り組みが必須です。一度構築した顧客との深い関係性を適切にマネジメントし、長期的に愛される企業を目指しましょう。
CXMに取り組むメリット
CXMに取り組む主なメリットは次の3つです。
- リピーターを獲得できる
- 企業の知名度やブランドの価値が向上する
- 広告費を削減できる
それぞれ詳しく解説します。
リピーターを獲得できる
CXMは顧客の心地よさや利便性を重視し、ニーズに対応した価値体験を提供することから、新規顧客やリピーターの獲得に有効です。
リピーターの増加はLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)の向上に寄与するため、マーケティングにおいて重視されています。
LTVとは、特定の顧客が自社の利用を開始してから終了するまでの期間にもたらす利益のことです。例えば一度の商品購入で終了した顧客よりも、複数回にわたって商品を購入した顧客の方がLTVは高くなります。
長期的に収益を安定させるためにも、CXMを効果的に実施してリピーターの増加・維持に努めましょう。
企業の知名度やブランドの価値が向上する
CXMによって価値の高い顧客体験を提供することで、競合他社にはない独自の強みを打ち出せます。
良質な価値体験は、消費者が商品やサービスを選ぶ際の重要な差別化要素となります。
顧客ロイヤルティの向上により多くのリピーターを獲得できるため、商品やサービスの良い口コミが拡散され、企業の知名度やブランド価値の向上に効果的です。
広告費を削減できる
SNSの普及により、リピーターの口コミは商品やサービスの魅力を多くの人に知らせる影響力を持つため、集客手段として重要な役割を果たします。
新規顧客の獲得にはWeb広告やテレビCMなどに膨大なコストを要しますが、口コミの拡散によって自然と商品やサービスの宣伝が行えるため、広告費の削減が可能です。
さらに、ファン化により競合他社より多少割高でも商品やサービスが選ばれるようになることから、顧客単価の増加による収益の向上も見込めます。
CXMを効果的に実施するためのポイント
CXMを効果的に実施するためのポイントは次の5つです。
- 目標の設定
- 顧客情報の詳細な把握
- 特性に合わせた顧客体験の検討
- ABテストの実施
- PDCAサイクルを回す
それぞれ詳しく解説します。
目標の設定
CXMを計画的に実施するためには、明確な目標が必要です。
目標と成果はそれぞれを定量比較できるよう、数値化できる指標にしましょう。
各プロセスごとの達成指標であるKPI、最終的な達成指標であるKGIをそれぞれ具体的に設定すると効果的です。
目標として設定する指標は、顧客満足度や売上額、リピート率などが挙げられます。
顧客情報の詳細な把握
価値の高い顧客体験を提供するためには、顧客ニーズの徹底的な理解が欠かせません。
CRMツールなどを使用したデータ収集やアンケートの実施などを通して、カスタマージャーニーマップの作成による顧客情報の可視化を行いましょう。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを購入するまでの行動履歴を旅にたとえた考え方です。
1人ひとりのアクセス履歴や訪問頻度について理解を深めることで、自社商品の強みを効率よく訴求できます。
カスタマージャーニーを作成したら、顧客ごとの特性を整理し、顧客プロファイルとして作成・管理してください。
特性に合わせた顧客体験の検討
顧客情報を詳細に把握したら、特性に応じた最適なWebコンテンツを提供しましょう。
コンテンツのパーソナライズ化によって、顧客はほしい情報をリアルタイムで獲得できるようになります。
好きなタイミングで必要な情報を提供してくれる企業は顧客ロイヤルティが高く、他の商品やサービスへの顧客流出を防止できます。
さらにCXMを効果的に実施するためには、顧客のセグメント化をできる限り細かく行うことが必要です。
顧客によってポジティブな感情を抱くポイントは異なるため、十分なデータ分析を行い適切な体験を提供することが求められます。
従来のCS経営においては、顧客からの意見に対して等しく改善を目指す傾向にありました。
しかし現代においては、限られた資源を選択的かつ集中的に投資する必要があるため、顧客の特性に合わせた効率的な価値提供が重視されています。
ABテストの実施
ABテストとは、Webページや広告デザインなどを数パターン用意し、顧客の反応を測定することです。
顧客セグメントごとの分析をもとに作成した数パターンのデザインをテスト運用し、実際の反応を比較して効果が高かったものを残していきます。
特にCXMでは、具体的な顧客体験やコンセプトを意識したパターンでテストを行いましょう。
PDCAサイクルを回す
CXMの実施計画は、実行して終わりではなく、効果検証まで行うことが欠かせません。
成果を具体的な数値で評価し、目標の達成度や要因について詳しく検証しましょう。
顧客の体験価値に関する効果測定は定期的に行い、繰り返しデータを収集することで改善につながります。
また、目標を達成するために必要な運用体制を整えることも大切です。
部署間での情報共有方法の見直しや、顧客情報の収集ツールの導入など、PDCAサイクルを回しながら最適な運用体制を構築してください。
CXMツールを導入する際の5つの基準
CXMで管理する顧客データは膨大な量となるため、マネジメントツールの導入が不可欠です。本章ではCXMツールを導入する際に考慮すべき5つの基準を解説します。
- 機能性
- 操作性
- 既存システムとの統合性
- 導入・ランニングコスト
- サポート体制
ツールをうまく活用しながら、CXMの成果を高めましょう。
機能性
十分な情報収集や分析を可能にする機能が備わっているか確認しましょう。
ツールによって搭載されている機能は多岐にわたるほか、業種や事業規模によってどのような機能を必要とするのかも異なります。
自社の導入目的に合致する機能を把握したうえで、目標達成を促進できるようなツールを選んでください。
操作性
限られた従業員にしか扱えない高度な操作性を要するものではなく、比較的容易に操作できるCXMツールを選択しましょう。
操作性に優れたツールは覚える手間が省けるため、計画の実行と目標達成の迅速化を促します。
ツールの多くは無料トライアルサービスを提供しています。
操作の感覚をつかみたい場合は、積極的に試してみることがおすすめです。
管理を属人化させないことがポイントです。
既存システムとの統合性
営業支援システムやMAツールなど、すでに導入しているシステムとの統合性を確認しましょう。
新たに導入するCXMツールと連携できるかどうかによって、かかるコストや軌道に乗るまでの時間に大きく影響します。
連携可能な複数のシステムを運用することで、さらなるCXM効果の向上が図れます。
導入・ランニングコスト
CXMツールの導入コストやランニングコストが、自社の予算と比べて適切な範囲内かどうか確認しましょう。
単純な料金比較ではなく、機能やサポートなどサービスに見合った料金が設定されているかを考慮することがポイントです。
CXMツールの料金設定は、ツールによって異なります。月額利用料のみのサービスもあれば、導入費用やサポート費用などの初期費用が別途かかるサービスもあるため注意してください。
複数のプランが用意されている場合は、それぞれのサービス内容を細かく比較し、自社に必要な機能を備えたプランを選択することが大切です。
サポート体制
CXMツールの導入初期は、作動チェックや操作方法の確認などによる混乱が予想されます。スムーズな稼働を可能にするためにも、手厚いサポート体制の有無は重要な判断基準です。
導入から一定期間を経過した後も、疑問点や不具合の発生に対してきめ細かいフォローを提供するサービスもあります。
ツールの導入にともない、予期せぬ困難が発生することも多いです。万全なサポート体制が整っているツールを選び、CXM計画の実行力を高めましょう。
まとめ:CXMに注力して独自の企業ブランドを構築しよう
CXMは、顧客の価値観やニーズが多様化している現代に欠かせないマーケティング手法です。
企業は顧客の嗜好を深く把握し細かくセグメント化したうえで、それぞれに適した体験を提供する必要があります。
他社との差別化を図るには、商品やサービスのスペック以外にも目を向けてみましょう。
購入手続きにストレスは生じないか、次も購入したいと思える仕組みになっているかなど、顧客目線から改善点を探ることが大切です。
一連の顧客体験が購買意欲やブランドへの好感度に直結し、リピーターの獲得につながります。
ツールなどを適切に活用し、CXMによる徹底した顧客理解に取り組みましょう。
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今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。