UGCを実装する前に知っておくべき「ABテスト」と「5つのステップ」
ネットワークが広大になった昨今では、多くの企業がそれを利用しユーザーとの直接的なコミュニケーションを図っています。
今まででは、商品を愛用しているユーザーの声を他の人に伝えるには企業側から「説明をする」しか方法がありませんでした。しかし最近では顧客自身により撮影された画像により、商品を利用している様子を共有できるのです。
このような、ユーザー自身の手によって作成されたコンテンツをUGC(User Generated Content)と言います。
この記事では、なぜUGCをマーケティング戦略に組み込む必要があるのか、そしてどのように実装するのか、そのステップをご紹介します。
なぜUGCがマーケティング戦略に重要なのか
UGCの効力は「ソーシャルプルーフ」と言う心理学的な誘因に端を発しています。
ソーシャルプルーフとは心理学的な現象であり、ある状況において他人の行動は正しいものであると思い込むことです。
つまり、おかしな話ですが我々は他人がやっていることを、他人がそれをやっているからという理由で自身もやるのです。
もしも、みんなが新商品について「いかしてカッコいい」と言ったらその通りであり、それが本当かどうかは重要な問題ではありません。
十中八九あなたの脳は「いかしてカッコいい」という感想を信じて、それ以外の感想を自身に納得させるのは難しいでしょう。
これは机上の空論ではありません。
2015年にグローバルなマーケティング会社であるMintelによって行われた研究によると、アメリカ人の70%以上が商品を購入する前に商品レビューを見るようです。
それだけでなく、CompUSA とiPerceptionsによって行われた研究では63%近くの顧客が、商品にスターレーティングやレビューがあると購入しやすくなると答えています。
この現象を活用することでマーケティングメッセージ、ひいては収益をあげることにも繋がります。
一般の人があなたの商品を使用して楽しんでいる様子を示すことで、ユーザーの目には商品がより「説得力のある」ものとして映ります。このテクニックは、マーケティングメッセージにおいて多くの活用法があります。
一例として、顧客の声や数に関連付ける(「5000人のお客さまに、ご満足いただいております!」など)というものがあり、これらは過去に多くの企業が成功している手法です。
UGCはこのソーシャルプルーフの考え方を、さらに高いレベルに昇華させています。
単に商品へのコメントを記載するだけでなく、過去に商品を購入した顧客の書いた実際のレビューを提示します。
オンラインビデオによるレビューサイトのEXPOは、メーカーによる説明文と比べてレビューは12倍近く信用度があることを発見しました。
さらにUGCはマーケティングメッセージの信用度も高めます。
UGCのその他の利点として
- SEOの改善に効果的
- ソーシャルトラフィックを高めることに効果的
- 顧客の質を高めることに効果的
- コンバージョン率を高めることに効果的
というものが挙げられます。
マーケティング戦略において、どのようにUGCを活用するのか
Step #1:使用するUGCの種類を選ぶ
使用できるUGCには以下の4種類があります。
- コメント
- レビュー
- 写真
- 動画
すべての選択肢に、それぞれ良い点と悪い点があります。
コメント
コメントは最もベーシックなUGCの種類です。コメントの収集は、企業にとっても顧客にとっても少ない労力で行えますが効果は少ないです。
UGCによって大きな結果を出したいのなら、以下の選択肢も検討するべきでしょう。
レビュー
Forresterにより行われた研究によると、レビューは「70%の顧客の購入決定に強く影響を与える」ようです。
また、従来の広告がわずか18%なのに比べて、48%もの顧客が購入決定の際にUGCを参考にすることも以前の研究で明らかになっています。
つまり商品ページにレビューを加えることで、ブランドや商品に対する顧客の信頼を高めやすくなるのです。
写真
たとえ写真の質が低くても、レビューだけでなく購入した商品の写真も投稿してもらうことで、見込み客に商品へ親近感を抱いてもらうことができます。
例えば、2014年にスターバックスは「カップをデコレートして#WhiteCupContestのハッシュタグと共にTwitterへ写真を投稿する」というキャンペーンをおこないました。Starbucksによると全部で約4,000件もの投稿があり、多くのツイートやリツイート、いいねを生み出しました。
これこそ、UGCの持つ力が存分に発揮された成功例と言えるでしょう。
動画
動画は多くの時間と労力を必要とするので、おそらくUGCの中でも最も集めるのが難しいでしょう。
たとえ自分のスマートフォンであっても、撮影すること自体やカメラの前で話すことが好きな人はあまりいません。しかし、こうのような個人が撮影した動画こそ、商品の良さを引き立たせるのにもってこいです。
役者にお願いして自社の商品について話してもらうのは簡単ですが、実際の顧客にそれを行ってもらうのは非常に難しいです。
そのため、顧客自身があなたの商品について語っている映像を撮ったなら、たとえ商品を気に入ってはいなかったとしても愛着は持っていることを意味するでしょう。
2013年にOctolyによって行われた研究によると、ユーザーの手で作られたブランドについての動画は、ブランドの公式動画と比べて平均10倍以上もの再生数をYouTubeで記録しています。
また、ブラジルの通信会社であるNextelは2013年に、動画のUGCを使って#1minutodecoragem(1分間の勇気)というキャンペーンを行いました。
「なにかに不満があるのなら、変化を起こそう」というNextelの主旨を支持するユーザーによって、バンジージャンプやベースジャンプをしたり、崖からまっ逆さまに飛び込んでいる人のプロモーションビデオが作られたのです。
この動画はYouTubeのみで700万回再生されました。
Step #2:UGCによるABテスト
実装するUGCの種類は、好みだけで決めるべきではありません。
まず、仮説を立ててそれを検証するという仮説駆動型によって、UGCを加えることで売り上げやコンバージョンの増加に繋がるかどうかを考える必要があります。
第一に仮説を立てます。例えば、コンバージョン率を増やしたくてUGCの利用がそれに役立つと考えているなら、この場合の望ましい仮説は
商品ページのコンバージョン率が低いので、商品説明の下にレビュー欄を設けることでより多くのユーザーに購入を促せるだろう。したがってコンバージョン率も増加すると考えられる。
と言ったようなものでしょう。
次にABテストの計画を立て、変更を実装していきます。次のステップではUGCの実装に役立つツールをいくつか紹介していきますが、ひとまずは手作業でUGCをサイトに実装する方法を見ていきます。
テストの計画を立てるときには、どのUGCがブランドに最適かを調べるために複数の種類でテストしましょう。
例えば化粧品を販売している場合には、カスタマーレビューや写真や動画でテストを行います。
ABテストの計画が立て終わったら、テストを実行し意義のある結果が出るまで待ちます。
仮説通りに、テストの結果がコンバージョン率の増加に繋がったならば実際に変更を実行していきます。
Step #3:ABテストが上手く行ったらUGCをサイトに実装しましょう
どの種類のUGCを使うか決めたらサイトに実装します。
テスト結果から選んだUGCの種類にもよりますが、UGCの実装法には様々なものがあります。
- コメント用には 、Disqusのようなツールが使えます。
- ブログの投稿などには、Mentionがブランドキーワードをモニターするのに便利です。
- レビュー、写真、動画の投稿には、 CuralateやYotpoが良いでしょう。
多くの場合においては、実装の技術的な難易度よりも、ABテストに基づいて正しいUGCの種類を選ぶ方が困難なことが多いです。
Step #4:UGCツールを推奨していきましょう
残念ながら、これだけではツールを存分に活用しユーザーにコンテンツを作り出してもらうには十分ではありません。
積極的に、新たに実装したUGCツールをユーザーに推奨していく必要があります。
ソーシャルメディアでの通知を始め、Eメールの送信や、お知らせをサイトに追加してその存在を広めましょう。
手っ取り早くソーシャルプルーフを利用するには、ユーザーから集めたレビューの数を商品タイトルの隣や下に加えると良いでしょう。
Bearbrandは、商品へのスターレーティングとレビュー数を載せることで上手くソーシャルプルーフを利用しました。
また、サイトを下までスクロールするとInstagramに投稿されたユーザーの(Bearbrandの商品によって美しくなっている)髭の写真がいくつも見れるようになっています。
写真や動画をアップロードしてくれたユーザーには割引をしたりして、ユーザーにあなたの会社とコミュニケーションを取りたいと思ってもらえるようにしましょう。
レビューへの動機づけの極端な例として、オーストラリアが若い労働者向けに行ったものがあります。
2013年に政府機関であるTourism Australiaは「世界で一番の仕事」というキャンペーンを始めました。キャンペーンの参加者は、6種類の世界最高の仕事のリストの中からワーキングホリデービザの期間中の仕事を選びます。
このキャンペーンは世界中で8,500件以上のニュース記事をはじめとした多くの宣伝を生み出し、マスコミ報道で4,400万ドル以上の利益をあげました。
そして最も重要なことに、コンテストで勝つために200か国以上の国から34,000人以上もの人が映像を提出したのです。
また、ブランドに最適なUGCを作るためには、商品の特性についての理解が必要です。
浄水器を売っている場合、レビューをする意思はあっても浄水器と一緒に自撮りをしようとする人はそうそういませんが、化粧品を売っている場合、特に適した動機づけ(クーポンなど)がある場合には浄水器よりも商品の写真を撮るユーザーは多いでしょう。
どんなUGCを選ぶにしろ単に実装するだけでなく、ブランドとコミュニケーションを取るメリットがユーザーに伝わるようにしましょう。
Step #5:モニターと分析
最後のステップは、ユーザーから良い反応をもらえるように確実にすることです。
しっかりとユーザーと交流し、彼らの質問に答え、商品がどのような物かを確実に理解してもらえるようにしましょう。より多くの価値をユーザーに提供するほど、彼らは高く評価してくれるでしょう。
また、信憑性のためには肯定的なコンテンツだけでなく、否定的な内容も見せるべきです。
いつでもすべてのユーザーが100%商品やサービスに満足している訳ではないので、否定的な内容のレビューがほとんどない場合よりも、否定的なレビューが少しあると商品の「リアリティー」をより高めます。
否定的なレビューは、改善や成長のための良い機会です。いまやユーザーと直接コミュニケーションを取る方法はたくさんあるので、彼らの声を聞くことで問題の根本的な原因を突き止めましょう。もしかしたら傷ついた商品が届いたのかもしれませんし、単に商品の使い方が分からなかったのかもしれません。
常にUGCから学ぶように努めましょう。
そうすることで、ユーザーの抱える新たな問題や彼らの望むこと、問題の解決策を発見するヒントを得られるでしょう。
まとめ
マーケティング戦略にUGCを活用し成果を出すためには、ある程度の時間と労力を必要とします。しかし、この記事で紹介した通りのステップを踏んでいけば次第に成果は見え始めます。
そして顧客も、より良い買い物ができたことでUGCの実装を喜ぶでしょう。
著者:イバン・クレイマー
フリーライター、ワールドトラベラー、ECストアオーナー。自身のECストアの運用をしていないときには、SaaSビジネスのトラフィック・リード増加の手助けを行ってます。
以上はOptimizely公式ブログ”How to Supercharge Your Online Store with User Generated Content“の翻訳記事です。