【電通・電通グループ:三浦 直也 / 高橋 勝也】グロースハックとSimilarWebを掛け合わせたデジタルマーケティング戦略
「データの使用目的、どのようにKPIやKGIを置くかがポイント。また、これを社員に啓蒙することが重要となってきます。」
サイト解析ツールSimilarWebとグロースハックを掛け合わせてデジタルマーケティング戦略を立案している”株式会社電通 ビジネス・デベロップメント&アクティベーション局 プランナー 三浦 直也氏”、“電通アイソバー株式会社ビジネスデザイン部エグゼクティブプランニングディレクター 高橋 勝也氏”。(以下、敬称略)
自社のアクセス数より競合の方が多い?自社と競合どちらの方がCVR高い?オウンドメディアは売上に寄与している?などなど、Web施策において自社データだけでなく、競合および業界全体と比較分析しなければ、自社が業界内でどのポジションにいるのかわかりません。
これらの課題をSimilarWebとグロースハックを掛け合わせたデジタルマーケティングで解決した成功事例をご紹介します。
目次
グロースハックとは
本稿の前半は電通・電通グループが考えるグロースハックの考え方。後半は、高橋氏が実際にSimilarWebを使って課題解決を行った事例をご紹介します。
グロースハックの定義
グロースハックという言葉を聞いたことがある方は多いと思ますが、その意味を明確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。
三浦「グロースハックに正確な定義はなく、ここ最近のバズワードでもある。」
三浦氏は、グロースハックに正しい定義はないと言う。そのため、電通・電通グループでは以下のように意味を定義づけている。
三浦「広告などの流入や獲得よりも、サービス内部を改善していくアプローチです。
有名な事例で言うと、Dropbox社が行ったユーザーの友人紹介やフィードバックを行うことで無料容量UPといった施策や、Twitter社の新しいユーザーに対してフォローアカウントを提供する、おすすめユーザー機能などが例になります。」
また、よく違いを問われるマーケティングとグロースハックの違いについても言及した。
三浦「マーケティングは認知を2倍にすることで売上2倍を目指すが、グロースハックは細かい内部改善により売上2倍を目指すため、同じ目的でもアプローチの仕方が異なる。」
広義のグロースハック
電通・電通グループではグロースハックを以下のようなレイヤーに切り分け、それぞれのレイヤーで地道にかつ的確な改善でクライアントの課題解決を行っている。
具体的には改善方法はA/Bテスト、UI変更等のweb改善から、それに応じた全体的なプラニングを行っている。単機能の改善だけでなく、全体的なプランニングも含めた全体を広義のグロースハックとして定義している。
三浦「このような事業全体を改善してほしいという依頼を受け、電通・電通グループはグロースハックプロジェクトを立ち上げました。これにあたり、各レイヤーの調査およびトラッキングを行うためのツール導入が必要となります。
各レイヤーでは様々なツールを使っています。」
人口減少マーケットの中でどのように戦略を練るか。
SimilarWebの特徴
三浦「その中でどのツールを導入するかを選定する際にSimilarWebを使っています。また、一般的で市場全体を見渡せるのも強い点だと思います。」
グロースハックの視点で見たSimilarWebの特徴
- KPIの測定にあたり、競合他社との状況は計測するためにSimilarWebを活用。
- 重要なKPI要素を決定する段階でSimilarWebを使用。
- 限られたパネルでの分析ではないため、グローバルも含めた分析が可能。
コミュニケーション分析
電通・電通グループは市場全体かつ細かい点のデータ収集も行えるSimilarWebを用いて、独自のコミュニケーション分析MAP上で補いたいデータを抽出している。
高橋「データの使用目的、どのようにKPIやKGIを置くかがポイント。また、これを社員に啓蒙することが重要となってきます。
そしてこの分析を行うことで共通項を見つけ出します。これはマーケットファクトであり、ユーザーが求めていることでもあります。この共通項を用いてプランニングし、提案を行っています。」
高橋「日本は人口減少マーケットであるため、これからモノが売れなくなってくる傾向にあります。競合への意識を持つことも重要ですが、ブルーオーシャンに着目することも大事だと思います。
マーケットが求めているモノしか売れない中で、如何にして共通項を見つけ出すか。その共通項を見つけ出す際にSimilarWebを使っています。
SimilarWebと、すでに持っているデータを掛け合わせて使うことでデジタルマーケティング戦略を練っています。」
高橋氏は、競合への意識を持ちながらも、未開拓な市場空間を表すブルーオーシャンに着目することも重要であると言います。
ここではブルーオーシャン戦略について言及していないため、ブルーオーシャン戦略についてはこちらを参照ください。
SimilarWebと保有データを使った課題解決事例
ここからは高橋氏がSimilarWebと保有しているデータを使ってクライアントの課題を改善した活用事例を4つご紹介していきます。
ユーザーとコミュニケーションが取れているのか?
Case1.ホテル
某ホテルA社のウェブサイト上で「ユーザーとコミュニケーションが取れているのか」という課題に対して、SimilarWebと有価証券報告書を用いて課題解決を行った事例です。
A社の競合となっているホテルと売上を比較すると、A社の方が4.2倍も売上高がありました。
しかし、アクセス数を比較したところ、なんと2.1倍しか上回っていませんでした。
さらに、直帰率、サイト平均滞在時間、平均ページビュー数を比較したところ、どの項目においても競合の方が数値が良かったのです。
調査した結果、現状のA社のサイトではコミュニケーションロス、すなわち機会損失を起こしている可能性があることがわかりました。
高橋氏はこの結果からコミュニケーションロス改善を図ったサイト改修提案を行い、顧客の課題解決を行いました。
情報公開を行っている企業に限りますが、有価証券報告書を使った分析手法はサイト改善等の費用対効果を定量データで計測できるため、SimilarWebと掛け合わせて競合のサイト分析・改善を的確に行えます。
競合のCV率は〇〇%
Case2.フィットネスクラブ
某フィットネスクラブA社が「競合のフォームCV率を調査したい」との要望があり、高橋氏はSimilarWebを使って競合のフォームCV率を調査。
各競合サイトの来訪者UU数とCVRを分析した結果、A社のサイト内回遊に課題点があることが判明した。
SimilarWebの「人気のあるページ」機能を使用してフォーム獲得ページ数の割合を調べ、来訪者UU数と比較することで競合のCVRがどれくらいなのか把握することができる。
例えば、競合ECサイトを調査したい場合、競合のUU数、人気のページ、カートへの追加率、CVRのデータを回収することで、どれほどカゴ落ち率があるのか、どの商品が注目されているのか、どれくらいCVに繋がっているのかがわかる。
その分析結果を元に自社ECの課題発見、そして課題解決を行うことで売上の向上や新規施策発案のヒントにつながります。
オウンドメディアは売上に直結しているのか?
Case3.トイレタリー
某トイレタリーA社では「運営しているオウンドメディアが売上に直結しているのか不安」に感じたため、競合オウンドメディアの状況と比較分析するためにSimilarWebと購買データ(インテージ SRI)を用いて調査しました。
結果、A社および競合オウンドメディアともに、サイトへの流入が多い時には商品購買が起こっていることがわかり、オウンドメディアが購買に寄与している可能性があることがわかりました。
SimilarWebでは調査期間を区切って競合サイトのデータを分析できるため、調査期間を調整して分析することが可能です。
例えば、競合があるWeb施策を行った際に、その施策によってどれくらいの流入があったのかが見れます。または、一時的に特設ページが作成された場合、その期間でそのページにどれくらいのユーザーが来訪したか等も調査可能です。
競合の施策に対する費用対効果を分析することで、自社が今後どのような施策を行うと一定のユーザーを獲得できるかなどのKPI設定もできます。また競合だけでなく、気になった他社の施策による費用対効果の測定も参考になります。
顧客はドリルが欲しいのではなく、穴がほしい。
Case4.ドリルメーカー
某ドリルメーカーA社は「競合にどのようなユーザーがいるのかを調査」するためSimilarWebで競合の検索キーワード分析を行い、来訪者がどのような情報を求めて訪問しているのかを調査しました。
調査したところ、A社は「企業名」による流入だったのに対して、競合は「企業名+目的ワード」のキーワードでユーザーを獲得していたことが判明。
この情報がわかっただけでも、ユーザーは何を求めているのか、次にどのような一手を打つべきなのか意思決定を行えます。
SimilarWebでは他にも「オーディエンスの興味」機能を用いて、どのようなユーザーが調査対象サイトに興味を持っているのか分析することも可能です。
「オーディエンスの興味」を使った分析記事はこちらを参照ください。
まとめ
電通・電通グループのSimilarWeb活用事例は、調査している内容は訪問者数、競合の検索キーワード、人気のあるページ等シンプルなデータながらも、抽出したこれらのファクトから編み出す解決策のビジネスインパクトは非常に大きいです。
また、有価証券報告書や市場データ等の既に自社が保有しているデータとSimilarWebのデータから共通項を導き出し、それを用いて的確なデジタルマーケティング戦略を練っていました。
こちらでは株式会社ヤマハではBIツールとSimilarWebを使った活用事例を紹介していますので、合わせてご覧ください。
次回は、データドリブンマーケティングとSimilarWebを掛け合わせた、デジタルマーケティング戦略に有効な競合分析手法についてご紹介します。
MarTechLab編集部
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