数学的フレームワークを使った「足して100になる」競合抽出法
「素晴らしいことを思いついたらすぐに行動すること。アイデアに価値は何もない。実行することが大事だ。」
Googleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏が、母校であるミシガン大学の卒業式で行ったスピーチにて発した言葉です。
画期的なアイデアは時に常識を覆しますが、それは”実行”があってこそです。
そのアイデアは、何を解決するためのアイデアなのか?
USJをマーケティングの力で再建させた森岡毅氏の著書より、良いアイデアをひらめくための戦略的/数学的フレームワークをご紹介します。
そしてこの考え方と、競合分析ツールを使い、市場概況の分析手法および競合の成長/衰弱「原因」を探る手法を解説します。
目次
考えるべきアイデアの必要条件を導くためのフレームワーク
本稿で述べる戦略的/数学的フレームワークは、森岡氏が言う”イノベーションフレームワーク”の基盤となるフレームワーク / リアプライ / ストック / コミットメント内の一部です。
そのため、アイデアを実際に実行してイノベーションを起こすには、今回紹介するフレームワークだけでは完璧に果たせない、という点に注意してください。
戦略的フレームワーク
このフレームワークを用いることで、考えるべきアイデアの必要条件を導き出せます。
下記のように、目的 / 戦略 / 戦術のフローで考えていきます。
カップルのケンカを解決する。
例えば、男性が彼女とケンカした後、どのように仲直りすればよいかをこのフレームワークを使って解決していきます。
このようにフレームワークを組むことで、考えるべきアイデアは歓心をかうに足る彼女の好きなものを満たすべき必要条件と絞り込めば、そのためのアイデアを考える1点に集中できます。
また「彼女の親友のAさんに相談する」など、別の観点を考える時間を削減できるため、アイデアの洗練だけでなく工数の削減も同時に図れます。
正しい目的設定を行うために用いるフレームワーク
数学的フレームワークは、一言でいえば「ロジック」そのものです。正しい目的を設定するために、問題の本質を発見するのにとても役立ちます。先ほどの戦力的フレームワークで言うところの「目的の設定」の箇所によく使うわけです。
2014年 KADOKAWA 森岡毅『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?V字回復をもたらしたヒットの法則』p.164~165より引用
戦略フレームワークを使う上で最初に定める”目的”を決める際に数学的フレームワークを用います。
果たすべき目的を明確に捉え、それを果たす事ができるアイデアを抽出しなければいけません。
そのため、どんなに優れたアイデアであってもその目的を果たすことができない、ないし実行できなければラリー・ペイジ氏が言うように「そのアイデア自体に価値はない」という事になります。
数学的フレームワーク
基本的な考え方はとてもシンプルです。
目的の抽出をゴールと仮定した場合に、そのゴールを見つけるために”足して100になる仮説を立てて検証”していきます。
ここで重要となるポイントは足して100になることです。
数学的フレームワークを使った目的設定シミレーション
では実際に、遊園地への集客減少を想定して「宝」を見つけていきます。
まず大事なのは、直面した問題となる「原因=宝」を明確にすること。
なぜ集客が下がっているのか?
その「原因=宝」を捕まえるために畑を掘ってやみくもに「原因=宝」探すのは非効率です。
ここで数学的に頭を使わない人は、下記のように仮説立てます。
このようなやり方ではせっかくの「原因=宝」を見落とす可能性があります。
そのため、数学的に頭を使うと下記のように「原因=宝」を探すことができます。
数学的に頭を使えば「原因=宝」を見つけるための”足して100になる仮説”を立てることができます。
これを繰り返すことで、目指すべくゴールを高確率かつ効率的に探し出すことができます。
繰り返しますが、ここで重要となるのが足して100であることです。
戦略的フレームワーク / 数学的フレームワークで可能になること
著書内ではもうひとつのフレームワーク、「マーケティング・フレームワーク」があります。ただし、著書ではこれに関して割愛されておりますので、内容を知りたい方は下記の森岡氏執筆書をご参考ください。
戦略的/数学的フレームワークを使った結果、可能となるのは以下の4点です。
- 勝つためには何が「必要条件」となるのか見当がつくようになる。
- 何を必死に考えないといけないのかがわかるようになる。
- 宝が埋まっている可能性の高い箇所を掘れるようになる。
- 結果として良いアイデアをひらめく「確率」が向上する。
2014年 KADOKAWA 森岡毅『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?V字回復をもたらしたヒットの法則』p.170より引用
行っている事はシンプルながらも、結果的に生み出される要素は応用次第で大きなビジネスインパクトをおこします。
自社は”正しい目的”設定を行えているのか?
数学的フレームワークは自社の「原因」を探る場合だけでなく、市場における競合を洗い出す、またその市場で成長している競合の「原因」を探る場合にも応用できます。
足して100の競合を抽出できているのか?
自社の競合はA社、B社、C社の3社である…本当に競合はそれで全てでしょうか?
ユーザーは日々、自身が求めているモノ・サービスを多彩なキーワードを用いて、または様々なサイトから流入、流出を繰り返します。
自社サイトへの流入キーワードはGoogle analyticsを導入していればデータが取得できます。
「『xxx』『yyy』のキーワードにおいて自社サイトは多くの流入を得ている。リスティング広告でも自社で設定したKPIを達成している。」
このようなケースが自社だけのデータだと認識できます。
しかし、実際に他社と比較してみると『xxx』『yyy』のキーワードで他社の方へ多く流入している、ということも珍しくないのです。
市場調査で足して100を作る
例えば「ビール」のキーワードを整理してみます。
競合分析ツールなどを活用して得られる客観的情報がある場合とない場合では、始めに競合を抽出する時点で以下のような違いが起こります。
この主観的データで出した競合に対し、客観的データで見ると以下になります。
「ECやメディアのマネタイズポイントはビールの販売ではないから、競合でないのでは?」
このような考えも浮かぶかと思います。しかし、Web上における「ビール」という同じキーワードにおいてユーザー獲得を競っているため、調査する際は競合とみなすべきです。
さらに、成長しているECやメディアが競合のビール販売事業の競合サイトへ流れている場合もありえます。
このようなケースが起こる場合、競合サイトへ流れているECやメディアを調査して気づかなければ、市場において自社がおいていかれる可能性もあります。
したがって、Web上にて市場を調査する場合は、足して100になるように調査対象を抽出して分析する必要があります。
競合が伸びている「原因を探る」
仮に競合のトラフィックが伸びているとします。
「他社は最近CMを多くやっているし、認知拡大による一時的な指名検索による流入だ。」
本当にそれだけでしょうか?
指名以外のキーワード、リスティング広告、ディスプレイ広告…流入元チャネルには複数のルートがあります。
これも数学的フレームワークの考え方を応用し、足して100になる考えからスタートします。
上記例はリファラルが伸びている「原因=宝」を見つけ出しましたが、検索キーワードにおいても「どのようなキーワードが伸びているのか=原因=宝」を見つけ出すことも可能です。
検索キーワードとテキストマイニングツールを掛け合わせた、ユーザーインサイト抽出法はまた別の機会にご紹介します。
まとめ
まとめます。
まず、繰り返しにはなりますが、戦略的/数学的フレームワークを使ってわかることは以下です。
- 勝つためには何が「必要条件」となるのか見当がつくようになる。
- 何を必死に考えないといけないのかがわかるようになる。
- 宝が埋まっている可能性の高い箇所を掘れるようになる。
- 結果として良いアイデアをひらめく「確率」が向上する。
2014年 KADOKAWA 森岡毅『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?V字回復をもたらしたヒットの法則』p.170より引用
そして、この考え方と競合分析ツールなどを活用した分析手法でわかるポイントは以下です。
- Web上における足して100となる競合を抽出できる
- 主観的ではなく、客観的に市場概況を見れる
- 競合の成長/衰弱の「原因=宝」がわかる
足して100にする。ぜひ、明日から実践してみてください。
最終更新日:2020/9/16

MarTechLab編集部
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