【YAMAHA:濱崎 司】SimilarWebで”嗜好”を見つけ、理解し、最速で意思決定を下す。
「この圧倒的な情報量はヒトを動かすきっかけになる。」
サイト解析ツールSimilarWebを用いたデジタルマーケティング戦略を立案しているヤマハ株式会社 楽器・音響事業本部 事業企画推進グループ 主幹 濱崎 司氏。(以下、敬称略)
日々重要な意思決定を下している同氏は、SimilarWebとBIツールを掛け合わせた独自の分析方法で、日本にいながら次々と世界のどこに”嗜好“があるのかを見つけ出し、分析、的確な意思決定を行うことで”ヒト“を動かしている。
今回は実際に同氏がSimilarWebとBIツールを組み合わせた分析手法に基づく資料より、最速で意思決定を下すためのデジタルマーケティング戦略事例をご紹介します。
(今回の資料はDigital Vision Japan 2017にて同氏が講演された「SimilarWebを核としたConsumer嗜好トレンド分析への取り組みについて」より引用しています。)
目次
嗜好
濱崎「『こころ豊かな生活』を実現するには、嗜好(心身を高揚させつつ、楽しいと感じるモノコト)の理解が必要不可欠です。」
世界180カ国以上のお客様へ「こころ豊かな生活」を提供し続けているヤマハ株式会社。
日本を牽引しているこのグローバル企業で、日々人間の”嗜好”と向き合っているのが同氏である。
濱崎「人々がそれぞれどのようなシチュエーションで”こころ豊かな生活”を感じるのかを知らずして、「こころ豊かな生活」を提供することは出来ない。」
音楽に対するConsumer嗜好トレンドを把握する
同氏がどのように”嗜好”を見つけ、理解し、意思決定まで結びつけているのか。その分析方法は大きくわけて3つある。
Retailer分析
大手ECサイト(楽器を取り扱っているECサイト)、大手楽器店、小規模楽器専門店の訪問者数、流入経路分析を行い、お客様がどこで何を買っているのかを分析する。
App分析
最も身近な音楽を”嗜好”する手段のひとつであるのがアプリ。どこの国で、どのようなアプリが使われているのか、そして優れたアプリとは何なのかを分析していく。
Social分析
グローバルSNSの訪問者数、流入経路分析を行い、世界では何がトレンドになっているのか、どこの国に何の楽器に対する”嗜好”を持っている人たちがいるのかを紐解いていく。
それでは各分析方法を見ていきます。
※今回、濱崎氏が実際に作成されている分析レポートを記載しますが、詳細な数値は都合によりモザイクがかかっております。ご了承くださいませ。(BIツールを用いた分析手法詳細についてご興味ある方はこちら)
Retailer分析:流れが読めると、先が見える。
同氏が行うRetailer分析方法を細分化すると以下の3つだ。
- トレンド分析
- キーワード分析
- キーワード分析を深堀する
これらの分析により、何に対して投資を行うべきか的確に把握することができる。
トレンド分析
今回の登壇で用いられていたSimilarWebのデータは2つ。
- サイトへの月間訪問者数
- トラフィックソース
これらを用いて調査対象サイトアクセス数の大まかなトレンドを解析する。
上記スライドは各ECサイトのアクセス数動向を示したもので、中でもアクセス数が圧倒的に多いECサイトが2社ある。
共にアクセス数は多いものの増加率には差があり、トレンドが上がっているのか、横ばいなのかがわかる。
さらに同氏は、各ECサイトごとの流入チャネルを分析することで、どのサイトのどの流入チャネルに対して投資を行うべきかをデータを元にした素早い意思決定を行っている。
キーワード分析
次に、各プロダクトごとの市場調査を目的としたキーワード分析を行う。
始めに、検索からの流入ボリュームを各ECごとに見ていき、その中から分析対象のプロダクト名を含む検索回数、またキーワードの組み合わせを分析していく。
これを行うことでどのECサイトで流入が図れていないかが一目瞭然となる。さらに、各ECサイトでどのようなキーワードの組み合わせで検索されているか、また他社の動向もわかるため次の一手を打つことができる。
キーワード分析を深堀する
上記で紹介したトレンド、キーワード分析でも十分意思決定を行う素材となるが、ここからが同氏独自の卓越した分析方法である。
こちらは先ほどのキーワード分析をさらに深堀し、自社のプロダクトを扱っているECサイトへどのようなキーワードで流入しているのか、それらの流入キーワードからランディングしたページにはどのようなコンテンツがあるのかを分析する。
これを行うことで自社のパートナーがどのような施策を行っているかがわかる。
今回の登壇では、この分析手法によってあるブログからECサイトへ多くの流入が図れていたことが判明した例をあげた。
こちらが実際に見つけたブログ。
自社制作のコンテンツももちろん重要だが、同氏は会社のプロダクトを勧めてくれる人たちとパートナーになることも重要な意思決定であると同氏は説く。
濱崎「『我々が頑張ったから』、ではなく、『我々のパートナーがビジネスに対して真摯に取り組み、我々のメリットになるようなコンテンツを提供して頂いたから』、ということがよく判るのです。」
App分析:優れたアプリとはなんなのか
濱崎「一昔前は『お父さん、ピアノがほしい!』と娘が言えば、それでお店に見に行ったが、今はアプリがファーストタッチ。私はそこで娘が本気なのかを見る。」
上記の例からもわかるように現代では楽器のファーストタッチがアプリとなっており、アプリが最も身近な音楽を嗜好する手段となってきている。
では、どのようにして優れたアプリを見つけ出すのか?
同氏は優れたアプリを解明するため、以下の3つの項目に着目して分析している。
- Download数 ≒ アプリの魅力(Look)
- ActiveUser% ≒ アプリの魅力(Feel)
- ReviewRate ≒ アプリへの満足度
それぞれのデータはSimilarWebとGoogle Play ストアで取得している。
- Download数→SimilarWeb
- ActiveUser%→SimilarWeb
- ReviewRate →Google Play ストア
ここまではSimilarWebを利用していれば誰でも手に入る情報だが、同氏はこれを素早い意思決定を行うために独自のまとめ方を行う。
SimilarWebで国ごとの嗜好性の違いが見える
取得したデータをBIツールと組み合わせることで、一目で国ごとの嗜好性の違いを見抜ける表を作成する。
調査対象のアプリ、Download数、レビュー数、レビューの平均点、アプリのイメージ、国ごとのActive Userを1面に表記し、国ごとの嗜好性を分析する。
これを行うことで、どこの国でどのようなアプリに興味があり、またそのアプリは他の国でも同等の興味を持たれているのかどうかを知ることができる。
これを見ることで一目で国ごとの嗜好性を見抜くことができると同時に、ここで重要な点は以下であると同氏は言う。
濱崎「日本でモノ・コトを開発する中で、それがそれぞれの国にマッチしているか、というところが本質である。このようなデータが見えるようになっただけで、優れたアプリとはなんなのか、そういったところが見えてくる。
100件のアプリを試しにダウンロードするよりも、分析結果から優れたアプリを2,3個ダウンロードし、なぜ優れているのかを効率的かつ高い精度で分析する。
この分析手法によって優れたアプリとはなんなのかが見え、どのアプリをベンチマーキングすべきかがわかる。」
Social分析:この圧倒的な情報量は、意思決定の素材となる
濱崎「日本にいると他国でSNSがどのように好まれているのかはわからない。だが、SimilarWebを使うことで見ることができる。」
世の中のトレンドをSNS上で日々目にするが、それがどの国においてもトレンドなのか、またどのSNSで見られているコンテンツなのかは日本にいるとわからない。
同氏が素早くかつ的確にSNSのトレンドを掴むためにどのような手法をとっているのか見ていく。
SNSは相互に補完しあっている
動画を見るプラットフォームとしては適しているSNSは各種あるが、それぞれのエンゲージメントに関するトレンドは異なる。
SimilarWebから取得したある2つの大手SNSのトレンドは対照的で、トレンドの増減が大きく異なる。
さらにデータを追いかける。
トレンドは異なるが、実は両者のプラットフォームは互いに流入元を補完しあう関係にあり、互いのプラットフォームから流入しあっていた。
このデータをみれば数年後にどちらのSNSが大きな流入を図れるのか、今どのような意思決定を行わなければならないのか一目でわかる。
外部サービスでデータを補完しあう
“嗜好”は国ごとに異なる
SimilarWebでは各サイトの人気ページを見る機能があるが、システム上SNSの人気ページを閲覧することが現状できない。
そこで同氏はYouTube Data APIを用いてトレンドのコンテンツを探し出し、これらのデータをBIツールと連携させることで、どこの国でどんな音楽が「今」流行っているのかを分析している。
例えば、アメリカで流行っている音楽は、他の国では流行っていない、といったことがこの分析手法でわかる。これは国によって”嗜好”が異なるためであり、この違いをデータとして確認することができる。
データを見つけ、共創する
さらにYouTube Data APIを使って深堀していく。
同氏は「Yamaha」というキーワードが用いられている動画を調査し、各動画のエンゲージメントをこちらもBIツールを使ってアウトプットしている。
商品の提供側がコンテンツを訴求するよりも、商品を使ってくださっているConsumer / Retailerがコンテンツを訴求した方がエンゲージは高く、結果的に商品の訴求につながる。
この分析結果を受けて、同氏はマーケティングに応用している。
濱崎「自社が動画を作るよりも、使用者の方々が作った動画の方がLikeがつきやすい。そう考えると、我々自身が頑張って動画を作ることが本当に正しいのか。むしろ我々がこういう方達が望むものを提供できれば、もっと色んなことができるのではないか。
簡単に言えば”共創”なんです。一緒に作っていく中でこれを仕組み化し、プロセスとして回していく。データを一回とってみた、ではなく、それを次につなげていくことが重要です。」
Facebook Audience Insightからギターに興味ある人を見つけ出す
同氏はさらにFacebook Audience Insightを使って、世界のどこに”嗜好”が集まっているかを見つけ出している。
濱崎「この圧倒的な情報量は人を動かすきっかけになるんです。ちょっとデータを見るのが苦手でも、これを見たらどのようなアクションを取るべきか、誰でもわかる。」
上記の例だとギターに興味関心がある人をデータ化しているが、これは楽器に限らずどのプロダクトでも明日から活用できる手法だ。
上司の「違う!」にリアルタイムで応えられる
意思決定を行うために
同氏がBIツールを用いるようになったのは、効率的かつ高精度な意思決定を行うためにはどうすればいいのかを徹底的に考え抜いた結果だと言う。
濱崎「抽出されたデータを多角的な視点から観察し、それらをチームメイトに見たいと思わせる工夫が必要。
内部と外部のデータをつなげて、自分が教えるのではなく、実際に使ってる人たちが『これってこういうことでは?』と思わせることが組織力につながる。
自分一人では限界があります。気づきやすいものを作れば誰だってわかる。
これを内部と外部で共有することで意思決定の素材となる。ここが一番大事なところです。
そして、共有するために重要なのはそれぞれのレイヤーにおいて、みんなで使えるものになるまで徹底的に作り込むことが重要で、ここで必要となるのがBIツールです。」
濱崎「SimilarWebが価値の高いデータを提供しているから、たとえ上司が「違う、こうだ!」という経験に基づいた意見に対して、リアルタイムで説得力のある、データを元にした意見が展開できる。そうすることで、素早くかつ的確な意思決定が役職関係なく行える。
なぜできるか。
それは価値の高い、誰でも理解できるSimilarWebのデータがあるからなのです。
SimilarWebの数値の誤差に関する信ぴょう性に疑念を抱く人もいるが、もう重箱の隅をつつくのはこのデータと結果をみればどうでもいいと思います。
データが大きいか少ないか、上がっているか下がっているかの大まかな傾向が重要であり、この圧倒的な情報量はヒトを動かすきっかけになります。」
まとめ
SimilarWeb単体でも知りたいデータを見ることができるが、同氏は他のツールと組み合わせ、データを誰が見ても意思決定の素材となるように見せるところまで落とし込んでいる。
SimilarWebは世界で唯一無二の圧倒的な情報量を提供している。これをどのようにこなすかは、ツールの使用者側に問われてしまう。
BIツールと組み合わせた分析手法は、圧倒的な情報量を持つこの競合サイト分析ツールの新しいソリューションのひとつである。
次回はグロースハックノウハウとSimilarWebを掛け合わせた活用方法をご紹介します。
(BIツールを用いた分析手法詳細についてご興味ある方はこちら)
MarTechLab編集部
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