売上の大半がアプリ経由の「and ST」があえて今、Web高速化に踏み切った理由。経営を動かしたのは数値よりも「体感」だった
「ECシステムの構造上、これ以上の表示速度改善は難しい」 長年、多くのマーケターがベンダーからそう告げられ、諦めを余儀なくされてきました。
ファッションプラットフォーム「and ST(アンドエスティ)」を運営する株式会社アンドエスティHDの飯塚将司様もまた、同じ壁に直面していました。アプリへの移行が進み、売上の大半がアプリ経由となる中で、置き去りにされがちな「ブラウザ(Web)の体験」。
しかし、あるデータ分析がその認識を覆します。そして、導入に向けた社内稟議の壁を突破したのは、複雑な投資対効果の計算式ではなく、経営陣の目の前で見せた「圧倒的な体感速度の差」でした。
今回は、開発リソースをアプリに集中させながら、最短ルートでWebの顧客体験を劇的に改善させた意思決定の裏側に迫ります。
目次
取材協力

株式会社アンドエスティHD DX本部 部長 飯塚 将司 様
「GLOBAL WORK」「niko and …」など30以上のアダストリアブランドが集結し、会員数2,100万人超を誇るアダストリアグループの公式WEBストア「and ST(アンドエスティ)」。2024年のリブランディングを経て、単なるECサイトから「ファッションプラットフォーム」へと進化を続ける同サイトのDX推進を牽引している。
公式サイト:https://www.dot-st.com/
アプリ全盛時代に見落としていた「入り口」の真実
「正直に言うと、ブラウザ版のサイトはずっと『置き去り』の状態でした」 飯塚様は、導入前の状況をそう振り返ります。
多くのアパレルEC同様、and STでも売上の構成比は「アプリ」が圧倒的です。ロイヤルティの高い顧客は使い勝手の良いアプリを利用するため、社内の開発リソースやマーケティング予算がアプリ最優先になるのは、経営判断として当然の流れでした。
既存のWebサイト(ブラウザ版)に対しては、パッケージベンダーに改善を相談しても「CDNや画像圧縮など、やるべきことはやっている。これ以上の高速化は仕様上難しい」という回答。半ば「致し方ない」と諦めていたのが実情でした。
しかし、改めて実施した詳細なデータ分析が、その認識に警鐘を鳴らしました。売上こそ大半がアプリ経由ですが、「サイトへの来訪者数(UU)」で見ると、ブラウザ経由が多い状況でした。
「新規のお客様や、検索から流入されるお客様の多くは、まずブラウザ版のサイトに訪れます。来訪ユーザー数(UU)の多くはブラウザ経由です。 この『入り口』での体験が快適でなければ、その先のアプリダウンロードやファン化には繋がりません。売上のメインはアプリですが、そのアプリへお客様をスムーズに送り届けるためにも、ブラウザの速度改善は欠かせない投資だと判断しました」(飯塚様)
「信頼」で選んだSpeed Kit
課題は明確でしたが、解決策は手詰まりでした。アプリ開発にエンジニアのリソースは割けません。 そんな時に候補に上がったのが、ギャプライズが提案する「Speed Kit」でした。
通常、新たなツール導入には数社を比較検討するプロセスが入りますが、今回は「詳細レベルでの比較なし」で選定が進みました。その理由は明確です。一つは、すでに大手アパレル企業など同業界での導入実績が豊富だったこと。そしてもう一つは、飯塚様ご自身が業界内のネットワークを通じて「実際に速くなった」という評判を耳にしていたことでした。
「営業トークではなく、実際に成果を出している事実が何よりの信頼でした。それに、Speed KitはSaaS型で導入できるため、社内の開発工数をほとんど奪わずに実装できる。アプリ開発で手一杯の我々にとって、これほどマッチする条件はありませんでした」(飯塚様)

稟議の壁を突破したのは「数値」ではなく「動画」だった
導入に向けた最大の山場は、社内の意思決定プロセスでした。 事前に実施したPoC(概念実証)の結果、数値上の改善幅は事前に定めていた合格ラインにはわずかに届かない、非常に判断の難しい結果でした。
「数字だけ見れば、『費用対効果が合わない』と却下されてもおかしくないギリギリのラインでした。でも、実機を見ていた私たちは確信していました。『数字以上に、体感が全然違う』と」
そこで飯塚様が経営会議に持ち込んだのは、細かいシミュレーション資料ではなく、「導入前(Before)」と「導入後(After)」のサイトを並べて操作した比較動画でした。
その動画を見た瞬間、経営陣の反応が一変しました。「今のサイト、こんなに遅かったのか……」
数値上の数%という議論を超えて、「お客様にこの快適な体験を届けるべきだ」という直感的な判断が、最終的なGoサインを引き出したのです。
経営陣が直感した「差」は、数値にも表れていました。
稟議の決め手となったのは「体感」でしたが、その裏付けとなるデータも劇的なものでした。PoCのレポートによると、ユーザーがページの主要コンテンツを認識できるまでの時間を示す指標「LCP(Largest Contentful Paint)」において、以下のような大幅な短縮が記録されていたのです 。
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- ホーム(TOPページ): 2.840秒 → 0.935秒 (1.905秒 短縮)
- 商品一覧ページ: 1.675秒 → 0.939秒 (0.736秒 短縮)
特に、サイトの顔であるホーム画面で「約2秒」、回遊の要となる商品一覧ページで「0.7秒以上」の高速化が実現しました。Webの世界におけるこの秒数は、ユーザーにとって「待たされる」か「一瞬で開く」かを分ける決定的な差となります。
経営陣が動画を見て感じた「サクサク感」は、決して気のせいではなく、この圧倒的な数値改善がもたらした必然の結果だったのです。
業界全体で「顧客体験」のバリューを上げていく
導入後、特に画像枚数の多い商品一覧ページなどでの体感速度向上は著しく、お客様がストレスなく商品を回遊できる土台が整いました。
飯塚様は、今回のプロジェクトを単なる「速度改善」では終わらせない構えです。 「土台となる速度が確保できたので、今後は初めて来訪されたお客様に向けて、よりリッチな接客体験をWeb上でも実現していきたいですね。店舗、アプリ、Webがシームレスに繋がるオムニチャネル体験を強化していきます」
最後に、同じ課題を持つマーケターへのメッセージを伺いました。
「システムが古いから、アプリがメインだからといって、Webの改善を諦める必要はありません。それに、Webの体験が悪いことは、自社だけでなくアパレルEC業界全体の機会損失にも繋がります。人口減少によりアパレル市場は縮小傾向にありますが、競合他社とも手を取り合いながら、業界全体のバリューを底上げしていきたいですね」
編集後記
あなたのサイトも、「数値」以上に「体感」が変わるかもしれません
and ST様のように、「システム上の限界」を感じていても、Speed Kitならその壁を越えられる可能性があります。まずは、あなたのサイトが現在どのくらいの速度で、導入によってどれくらい「体感」が変わるのか、無料のシミュレーション診断で確かめてみませんか?
今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。
