貴社のブランドは「AIの選考」を通過できるか?──B2A時代に問われるマーケターの新しい視点
2026年、マーケターが向き合うべき「顧客」が増えつつあります。人間ではありません。AIエージェントです。
ChatGPTの週間アクティブユーザーは8億人を超え、Googleも「AI Mode」を200以上の国と地域に展開しています。消費者の75%が「1年前よりAI検索を多く使っている」と回答し、検索の約60%がクリックなしで完結するといわれています。こうした数字が示すのは、単なるツールの交代ではありません。情報の「選別者」がAIに移りつつあるという構造的な変化です。
この変化の先にあるのが、B2A(Business-to-Agent)という概念です。Y Combinatorが提唱し、Gartner、McKinsey、The Drumといった調査機関やメディアが相次いで取り上げるこのキーワードは、いま最もマーケターが理解しておくべきパラダイムシフトを指しています。
Not b2b, not b2c, but b2a: Business-to-agent. We are looking for startups that are building products where AI agents are the intended customer.
引用元:https://x.com/ycombinator/status/1885011761814011922
目次
B2Aとは何か──「AIに売る」という新しい前提
B2Bでは企業が企業に売り、B2Cでは企業が消費者に売ります。B2Aでは、企業がAIエージェントに対して自社の価値を認識させ、推奨してもらうことを目指します。
これは概念の話ではなく、すでに動いている現実です。Googleは2026年1月、Shopify・Walmart・Targetなどと共同でUniversal Commerce Protocol(UCP)を発表しました。AIエージェントが自律的に商品を発見・比較・購入するための共通プロトコルで、Visa・Mastercard・PayPalも参画しています。Amazonの「Rufus」は2.5億人のユーザーにサービスを提供し、目標価格に達した商品を自動購入する機能をテストしています。StripeもAI決済専用のAgent Toolkitをリリースしました。

つまり、AIエージェントは「情報を調べてくれるアシスタント」から、「代わりに買い物をしてくれる代理人」へと進化しつつあります。The Drumの予測では、2026年中に一部業界では顧客1人あたり7つのAIエージェントがアクティブに稼働するようになるといいます。
なぜマーケターがB2Aを無視できないのか
1. AIが「門番」になり、ショートリストを支配する
Gartnerの戦略予測によれば、2028年までにB2B購買の90%がAIエージェントを介して行われ、その取引規模は15兆ドルを超えるとされています。これはSEO/PPC時代の「検索結果の1ページ目に載る」という競争とは次元が異なります。AIエージェントは候補を2〜7件に絞り込んで人間に提示します。そのリストに入れなければ、検討の土俵にも上がれません。
2. AI経由の訪問者は「4.4倍」の経済価値を持つ
Semrushの2025年6月の調査では、AI検索経由のサイト訪問者はオーガニック検索経由と比較して4.4倍高いコンバージョン率を示しました。AIとの対話を通じてすでに比較・検討を済ませた上でサイトを訪れるため、購入意向が極めて高い状態にあります。AI紹介トラフィックは前年比527%増と急成長しており、量だけでなく質においても無視できないチャネルになっています。
3. 「沈黙」と「誤認」が最大のブランドリスクになる
問題はAIに推奨されないことだけではありません。AIが自社について誤った情報を生成する(ハルシネーション)リスクも深刻です。かつてはGoogleの検索結果を管理すれば済んだブランドレピュテーション管理が、ChatGPT・Gemini・Perplexity・Claudeといった複数のAIプラットフォーム上での「認知の正確性」にまで広がりました。しかもプラットフォーム間でブランドの引用量に最大615倍の差が出るという調査もあり、一律の対策では不十分です。
B2A時代にマーケターが考えるべき3つの課題
課題1:GEO(生成AI最適化)の組織的な位置づけ
GEOは、コンテンツチームだけの仕事ではありません。SEO、PR、プロダクトマーケティングの交差点に位置する横断的な取り組みです。しかし多くの組織では、AI検索のパフォーマンスを体系的にトラッキングしている企業は16%にとどまります(McKinsey、2025年10月時点)。「誰がAI上のブランド認知に責任を持つのか」という問い自体が、まだ多くの企業で明確になっていないのが実情です。
課題2:「人間向け」と「AI向け」の二重設計
従来のWebサイトは人間の目を前提に設計されてきました。しかしB2A時代には、AIエージェントが読み取れる構造化データ、APIアクセス、機械可読なコンテンツが同時に求められます。美しいUIの裏でJavaScriptに依存したコンテンツは、AIクローラーにとって「存在しない」も同然です。ある分析では、ChatGPTのシステムリクエストの約11.5%が不要なJSに浪費されていたという報告もあります。「ユーザー体験(UX)」と「エージェント体験(AX)」の両立が、これからのWeb設計の核心になります。
課題3:計測基盤の不在
GEOの最大のボトルネックは、実は戦略ではなく計測かもしれません。Google Analyticsのダッシュボードを何年もかけて磨いてきたマーケターでも、AI検索における自社の引用頻度・引用文脈・流入経路を定量的に把握する手段を持っていないケースがほとんどです。AI経由のトラフィックの一部は「Direct」として計上されてしまい、正確なROI算出が難しい状況です。見えないものは改善できません。計測の仕組みを整えることが、あらゆるGEO施策の前提になるでしょう。
おわりに──「見つけてもらう」から「選ばれる」へ
SEOが「検索エンジンに見つけてもらう技術」だったとすれば、GEOは「AIに信頼され、推奨される技術」であり、B2Aはその先にある「AIエージェントに顧客として選ばれる設計思想」です。
この3層の変化は不可逆的に進行しています。Googleの検索ランキング上位とAIの引用ソースの重複率は70%から20%以下にまで低下したという調査もあり、「SEOで上位だからAIにも拾われるだろう」という前提は、見直す必要が出てきています。
参照元:Generative Engine Optimization (GEO): The 2026 Guide
まず自社のブランドが、主要なAIプラットフォーム上でどう語られているかを確認することから始めてみてください。ChatGPT、Gemini、Perplexityに自社に関連するプロンプトを10〜20件投げてみてください。それだけで、B2A時代における自社の「現在地」が少し見えてくるはずです。
ただし、手動のプロンプトチェックで見えるのはあくまでスナップショットにすぎません。AIの回答は日々変化し、プラットフォームごとに異なる文脈でブランドが語られています。継続的なモニタリングと改善のサイクルを回すには、専用の基盤が必要になってきます。GEO/AEOプラットフォーム「AthenaHQ」では、主要AIプラットフォーム上での自社ブランドの可視性・引用状況・競合との比較を一元的にトラッキングし、改善アクションまでつなげることができます。
まずは自社の「AI上の現在地」を正確に把握するところから始めてみませんか。具体的な分析方法やツールの活用について、お気軽にご相談ください。
今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。