コンバージョンが増えても収益が下がる?2つの事例とその解決策

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デジタルマーケティングのパフォーマンスを計る上で「コンバージョン」は重要指標の1つです。そのため、コンバージョン率にばかり着目している企業も多いのではないでしょうか。

しかし、「コンバージョンの増加が、必ずしも収益の増加につながるわけではない」という点を忘れてはいけません。

本記事では、2つ事例とその解決策をご紹介します。

 

1.コンバージョンだけを見てはいけない理由

大手Eコマースサイトを運営する企業様に良く聞かれることがあります。

「サイトの改善をすると実際どれくらいのROI(投資対効果)に繋がるのか?」
「提案された変更を実装した際、直接収入へ影響はあるのか?」
「収益を予測して施策化できるものなのか?」
これらの質問に対し私たちの答えは、すべて「イエス」です。

一方、サイト改善活動をされている企業様ほど、「コンバージョン率は改善している、でも収益が思うように伸びない」といった壁に当たっています。

要因の一つは、コンバージョン率に執着するあまり、「サイトの小さな改善がもたらす最終的な収益」を計算できていないという点です。

コンバージョン率1%の変化がどれだけ収益インパクトをもたらすのか?という点においては、もちろん業態やサービス・ビジネスモデルによって異なります。

そのため、サイト改善を実施している貴社のマーケター1人1人が、
「この改善をすれば、コンバージョン数が2倍になる」ではなく、
「この改善をすれば、100万円の収益になる」
という考え方をする必要があります。

次の章から、実際に収益性を上げるためにサイト改善を実施した、2社の事例をご紹介します。

2.【事例1】金融サイトのプラン改善

無料プランによるコンバージョン数増加

以下はある金融サイトの訪問者が購入を決める際に、選択肢となる3つのプラン内容です。ベーシック、シルバー、ゴールドの3つのプランが用意されています。

無料プランを置いたことで、コンバージョン数は増加しました。
しかし、収益まで念頭においたとき、これがベストのプランなのでしょうか?

どのプランが一番見られているのか?

この3つの購入ボタンをClicktale(現:Contentsquare)を使って、それぞれのプランのクリック率と、どのプランが一番見られている(オンマウスされている)のかをヒートマップで分析してみました。

すると、実に興味深い分析結果となりました。

ブロンズプランと、ゴールドプランが高いクリック率であったにもかかわらず、一番ユーザーの注意を引いていたのが中間に位置するシルバープランだったのです。


※左:それぞれのプランのクリック率  右:マウスムーブヒートマップを見ると、シルバープランがより長い時間オンマウスされているのがわかる

従来の考え方からすると、シルバープランは全く無駄なものでサイトからなくすべきだという結論になるでしょう。しかし、シルバープランを多くのユーザーが長い時間かけて注目をしているということは、それだけの価値があることを示唆しています。

アンカリング効果を活用したサイト改善

行動経済学の用語で、「アンカリング効果」というものがあります。アンカリング効果とは、提示された特定の数値や情報が印象に残って基準点(アンカー)となり、判断に影響を及ぼす心理傾向のことです。

例えば、「通常価格58,000円→特別価格30,000円」と表示することで、最初の通常価格58,000円の情報がアンカーとなり、30,000円という価格を購入者に「安い!魅力的だ!」と判断させています。

もし、シルバープランがこのサイトからなくなれば、ユーザーの大多数は無料のブロンズプランを選ぶことになるでしょう。
ですが、シルバープランをそのままにすることで、より多くの人をゴールド、つまり最も高価なプランに導くことができます。これはシルバープランが基準点(アンカー)としての役割を持っているためです。

もしサイトの訪問者がブロンズプランとゴールドプランの2つのプランのみから選択しなければいけないなら、ゴールドプランを選ぶことはかなり高価のように思われ、恐らく多くのユーザーにとって不必要なものとみなされてしますでしょう。

しかし、シルバープランの選択肢があることで、無料の選択肢が真剣に購入を考えているユーザーにとって不適切なプランであると感じられてしまいます。

解決策は?

以上を踏まえると、ブロンズプランの表示を消し、シルバープランとゴールドプランの間にもう一つプランを作るという施策が考えられます。

ゴールドプランを選ぶ障壁が小さくなり、ユーザーがより「ゴールドプランのほうが良い取引なのではないか」という心理が生まれます。

このようにコンバージョンだけではなく、ユーザー心理・収益性の視点をもつことで、このビジネスモデルにおいて「適切な改善」を行うことができます。

[参照]The Secret Psychological Rule That Will Boost Online Purchase

3.【事例2】保険会社の顧客セグメント別分析

収益性を上げるための分析

保険会社にとって、コンバージョンは必ずしも望ましいことではありません。

なぜなら、支払いのリスクが人によって異なり、収益性の高い優良顧客がいる一方で、保険金を支払う可能性の高い収益性の悪い顧客がいるからです。

そこで、ネットおよびコールセンターを通じて自動車の保険を販売しているアリアンツダイレクトは、収益性が高いと思われるユーザーを増やす一方で、収益性が低いと思われるユーザーを減らすことで、全体的な収益性を高めようと考えていました。

Clicktaleを活用したページ内分析

アリアンツダイレクトは、プランやオプションを決めるページを訪れたユーザーのページ内行動を分析しました。

その結果、セグメントによって次のような行動の違いが見られました。

収益性の高いセグメント

・より高いコンバージョン率
・プランを選び、「続ける」ボタン(下記図、右下の赤線で囲まれたボタン)を押して次ページへ遷移という簡潔な行動

収益性の低いセグメント

・より価格や補償内容、無料サービスオプションに注目
・離脱後、もう一度ページ戻ってコンバージョン
・企業の保険を比較し一番魅力的な保険を選ぶという行動

解決策は?

収益性の高いセグメントのユーザーは、Clicktale分析により目的指向であることがわかったので、プランやオプションを選ぶページをよりコンパクトにしました。
一方、収益性の低いセグメントのユーザーに対しては少し煩雑さを残し、より全体の収益性を高める方針をとりました。

アリアンツダイレクトの新規とリピーター分析については、こちらのホワイトペーパーにご紹介した内容と合わせてまとめています。

[参照]Psychology insights lead to smarter digital sales strategy

4.コンバージョンしていないユーザー97%の顧客体験とは

ここまで収益性を上げるという切り口で、「コンバージョンしたユーザー」に焦点を当ててご紹介してきました。

しかし、一般平均のコンバージョン率は3%といわれています。

もう一つ大事なことは、コンバージョンしていない残りの97%の顧客体験を理解することです。

顧客体験と企業の業績

下記調査によると、顧客体験がポジティブであるか否かは、企業の業績に直結します。

もしコンバージョン率という結果的事象に注目しすぎ、コンバージョンしていない多数のユーザーの感情を無視してしまうと、見込みのあった売り上げも損失してしまう可能性が高いです。

[参照]Infographic: Mind the digital experience gap

顧客体験の影響については、今回ご紹介したアリアンツダイレクト事例と合わせて無料ホワイトペーパー「コンバージョンだけを見ていてはいけない理由」にまとめています。是非ご覧ください。

5.まとめ

サイトのコンバージョン率を上げることも、もちろん重要です。
その一歩先、「この改善はいくら収益を見込めるのか?」という視点まで持つだけで、本質的な改善スピードを上げることができます。

サイト内におけるユーザーの行動分析は、全ての顧客体験を一瞬で再現するツールClicktale(現:Contentsquare)を活用することで、誰でも簡単に行うことが可能です。

「そもそもサイト改善活動がうまくいかない」「ボトルネックがどこか分析できていない」とお悩みの方は、お気軽にこちらからご相談ください!

▼この記事に関連したホワイトペーパー▼

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勝見 理恵

2012年ギャプライズ入社。 5年間Web集客コンサルタントとしてクライアントワークに携わり、リスティング広告からFacebook・Instagram・TwitterなどのSNS広告まで幅広く活用。 ClicktaleやOptimizelyを活用したサイト改善コンサルタントを経て、現在は自社のマーケティング担当。

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