申込を最大1.5倍改善した保険会社のパーソナライズ実例
競争が激しい保険業界において、データドリブンな意思決定の重要性が増しています。
今回は、自社でデータ活用を進めながらもWebサイト改善のスピードを上げるために、サイト分析ツールClicktale(現:Contentsquare)とCX(カスタマーエクスペリエンス)コンサルティングサービスをご利用頂いている企業様に、導入前の課題と導入後の変化をお伺いしました。
1.ご担当者さま業務紹介
―Aさんの業務について教えてください。
テレビCMやWebサイトなどを活用した新規契約獲得をミッションとするメディアチームのマネージャーをしています。
2.業界平均ではなく、圧倒的な競争力をつけるために
導入前の課題
前職では、実際に自分でテストアイデアを考えて、ABテストを実装し改善活動をしていました。その経験もあり、ABテストの重要性は理解していました。
一方で、当時4人ほどのチーム体制でしたがメンバー全員主要業務がある中で、分析とABテストを定期的に回す活動は困難な状況でした。
本来、まずは現状分析を行いボトルネック抽出した上でABテストも行うべきですが、その時間がとれず、その結果インパクトの大きい施策ができていませんでした。
探していたのは、最新テクノロジーと専門家の力
社内公募によるメンバー追加やAdobeTargetといったテクノロジーの導入など、約3年かけて体制強化を行ってきました。
とはいえ、Web制作チームのキャパシティより、会社内でWebサイトに対する業務量が大幅に上回る状態が続きました。
そのため、社外の力を借りることが必要なのではないかと考え始めました。
過去の経験から、テクノロジーだけを導入しても社内で活用できなかったので、「最新テクノロジーと専門家の力」2つの軸をテーマとしてパートナーを探すことになりました。
その時に出会ったのが、ギャプライズです。
サイト分析ツールClicktale(現:Contentsquare)とそれを活用したコンサルティングサービスは、まさに求めていたものでした。
一人採用する代わりにサービス導入を
恐らく同じような悩みをもつ事業会社は多いはずです。
しかし、「一人採用する代わりにテクノロジーを入れよう」「コンサルティングサービスを入れよう」と決断できる会社は少ないのではないでしょうか。
予算の出どころが異なるので簡単にはいきませんし、躊躇してしまう気持ちも理解できます。
ですが、本当に事業を成長させたい場合は、社内を巻き込む決断が必要です。
導入の決め手
提案を受けた際に、「決裁者がプロジェクトのメンバーとなって一堂に会して進められないのなら、導入しない方がいい」と言い切られたことです。
最初の営業提案の際はもちろん、導入後の会議にも決裁者がいないと、スピード感をもってインパクトの大きい施策決定はできない、というのは本質を捉えており納得できました。
そこまで踏み込んで提案して頂いたので、弊社としてもかなりコミットしてスタートしました。私自身も、コンサルタントとの定例会議を最優先事項にしています。
3.Clicktaleで仮説の精度を上げる
一歩先をいく本質的な分析
これまで、ABテストの結果から成果のよいパターンはわかっても、「ユーザーは、本当はどんな情報をどんな順番で見たいのか?」など分析できない領域がありました。
当時のデモで、「一見滞在時間が長いことは良いと思われがちですが、単に迷っているというケースも存在します」とユーザーの実際の動きを動画(※1)で見たとき、これまで見えていなかった本質的な分析が可能になると実感しました。
※1:ユーザー行動が動画で見ることができるClicktaleセッションプレイヤー機能紹介
経験値にとらわれずチームで活用できる
自分の中で仮説をもちながらClicktaleで動画をみると、ユーザーのひとつひとつの行動の理由が見えてきます。
百聞は一見にしかずという通り、事例を多く見ている人ほど、この「仮説」の引き出しが多くなります。私自身は業界経験も長いことから、他のメンバーより仮説を多く出すことができます。
しかし、その状態に依存してしまうと、「経験値のある人を採用」することが必要になり、結局「人材不足」という元のループに戻ってしまいます。
これでは、チームとして成長することができません。
Clicktaleの動画を活用すれば、チームメンバー全員が同じ体験をすることができ、個々の習熟度を上げるための学習時間を圧縮できると考えました。
まだ見えていない仮説を見つける
「実際のユーザー動画を見ても、あくまで1つのサンプル(N1 ※2)に過ぎない」という意見もあると思います。
私は、N1は「まだ見えていない仮説を見つける」ものだと捉えています。そのため、Clicktaleの動画はかなり有効です。
※2:N1=1人の顧客データ、(「N1分析」:1人顧客を深く知ることでアイデアを出し施策につなげる方法)
―1つの動画から仮説につなげる力が必要だと思うのですが、どのように鍛えたらいいのでしょうか
仮説につなげる力は、「インプットとアウトプットの量」だと考えています。
インプットとは、お客さまの情報にいかに触れているかという点です。
私自身、作業している時間は少なくお客さまの情報に触れている時間が圧倒的に多いです。
例えば、「特定の解約パターンが増えている」という情報が社内で出ると、その要因分析をする会議に出席しています。そういった機会の多さで、お客さまの像への理解が深まっています。
アウトプットとは、実際に仮説を出し検証してみることです。いくら情報を多く持っていても、それだけでは意味はありません。
多くの情報から仮説を導き出し、予算を使った真剣勝負で実行する、この経験を繰り返すことで思考が鍛えられ「仮説につなげる力」がついてきます。
―実際に、チームメンバーに感じた変化はありますか?
あります。最初は、御社コンサルタントからの提案をまずはやってみるという状態でしたが、今では個々のメンバーが仮説をもつようになり、定例会議の場でも「こういう視点もあるのではないか」「こういうパターンを検証した方がいいのではないか」と積極的なディスカッションが生まれるようになりました。
4.【事例1】パーソナライズ施策で申込1.3倍
突破口は、カスタマージャーニーに沿った施策
TOPページが抱えている課題は、情報量が多くなってしまいコンテンツの優先順位が曖昧な点です。
そのため、
・事業上大事なコンテンツ
・その時の責任者の意見
・気になる箇所の修正
など複数要因に左右されてしまっています。
カスタマージャーニーに沿った改善施策は、この現状を打開したパラダイムシフトとなりました。
見積り済非契約者へ出し分け
サイト訪問者は大きく「契約者」と「非契約者」で分けることができますが、非契約者の中でも次のような属性があります。
①初回訪問
②再来訪(見積り済非契約者)
③再再来訪(見積り済非契約者)
顧客データを分析すると、見積り済の方は契約までに平均5回見積り修正しているという行動が見られました。補償プランを見直して、予算にあった金額になるように調整しているためです。
②再来訪ユーザーに対しては、「いかにスムーズにログインし、簡単に見積り修正できるか?」が重要なコンバージョンポイントになります。
そのため、見積り済非契約者セグメントに対し次のような出し分けテストを実施しました。
その結果、
・ログイン遷移率は29%向上
・ログイン後の決済完了率は1.5%向上
しました。
Clicktaleのヒートマップで、ボタンクリックまでの平均時間を見るとオリジナルパターンより早くなっており、ユーザーをスムーズに誘導できています。
また、決済完了率も上がっている事から、TOPページのUXは決済への影響度も高いことを改めて実感するテストとなりました。
次に、①初回訪問者に対して、「いかに見積りしてもらうか」改善テストするにあたり、そもそもどういったニーズを持っているのか調査しました。
他社からの乗り換え検討は、新規の1.7倍
サイト訪問者に対して、
・新規(初めて保険に加入される方)
・乗り換え(他社から乗り換え検討の方)
・既存顧客(弊社で保険に加入済の方)
がそれぞれどのくらいの割合いでいるか、ポップアップでアンケートを実施しました。
その結果サイト訪問者の
・46%は既存顧客
・乗り換えは新規の1.7倍いる
ということがわかりました。
既存顧客の存在は想定内だったのですが、他社からの乗り換え検討割合が多いことに驚きました。
この結果を踏まえると、TOPページの優先順位が見えてきます。
新規の方には「保険はじめての方はこちら」という基本コンテンツが必要になりますが、乗り換え検討の方には「他社と何が違うのか」という比較情報がより重要になります。
Clicktaleでは、各項目を選択したユーザーごとにデータ分析ができるため、ヒートマップや動画で分析し、どんな情報が欲しいのか?を詳細に分析することが可能になりました。
今後は、より細かいセグメントに対して、パーソナライズされたコンテンツ提供を強化していきます。
5.【事例2】中間KPIを捨てる決断で申込1.5倍
申込開始ページへの遷移率改善
改善前は、お見積り結果ページに「一次保存」ボタンを設置していました。ユーザーは、見積り結果を見て申込に進むか、保存をするという選択を取れます。
チームの最終KPIとしてはもちろん契約申込を増やすことですが、中間KPIとしては「見積り済数」「見積り結果保存数」も追っていました。
しかし、Clicktaleの動画を見ていると、「一次保存」ボタンがあることでユーザーを迷わせているのではないか?という仮説が出てきました。
「一次保存ボタンを削除」、これは正直かなり実施に悩みました。
削除することにより、追っている中間KPI指標の1つは確実に下がります。しかし、申込開始ページへの遷移が増え最終KPIである契約申込が増えるかもしれません。
もちろん、それは理想形で合って、単に保存せず離脱し契約申込さえ下がるリスクもあります。
最終的には、最悪の結果の場合はすぐ戻せるようリスクヘッジを行った上で、テストを実施しました。
その結果、申込開始ページ遷移率は8.4%向上しました。
契約申込は微増という結果になりましたが、「一次保存ボタン」がない方が次の遷移への意思決定をしてくれる、という仮説の精度が上がりました。
この仮説を元にさらにテストを行い改善した結果、最終的に契約申込も1.5倍になりました。
新しい発見をするには実験が必要
私自身、普段は新しい取り組みには前向きで、あまり悩まずABテストを実施してきました。しかし、自分で持つKPIを捨ててまでやる施策はかなり怖い決断でした。
決断できたのは、それまでの流れでは正直行き詰まりを感じていたという点と、突破口を開くにはリスクを背負った実験が重要だと考えたためです。
今回の実験で結果を出すことができ、改めて自信につながりました。
6.進化し続けるチーム作り
―Aさんはチームビルディングにかなり力を入れてらっしゃいますが、どんなことを意識していますか?
意識していることは「思考を広げる環境を作ること」です。
多くのチームメンバーはデジタルマーケティング経験がありますが、あえて自身の持つキャリアとは別の業務にチャレンジしてもらっています。
例えば、オンライン広告をずっとやり続けてしまうと思考が凝り固まってしまい、それ以外のアイデアが出てこなくなってきてしまう恐れがあるからです。
―理想的ですが、かなり大変ではないですか?
「プレッシャーで吐きそう」と言っているメンバーもいます(笑)
企業のフェーズによっては、個々に専門性を持たせた組織でもいいと思います。
厳しい競争の中で他社に勝とうと思うと、領域またいだところにチャンスがあると考えています。
7.今後取り組んでいきたいこと
テクノロジーを活用して、より俯瞰的にお客さまの動きをトラッキングできたらと考えています。
例えば、見積り入力フォームにかかる時間を極限まで短くできたら、かなり大きなビジネスインパクトを生み出せます。その時間は、お客さまの満足度に比例するからです。
その結果をダッシュボード化し、「毎月どのくらいの時間改善できたか」を可視化できると、経営判断が素早くでき、より早い事業成長を実現できます。
そういった視点でも、Clicktaleや最先テクノロジーを活用したギャプライズの知見に期待しています。
―Aさん、ありがとうございました。
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勝見 理恵
2012年ギャプライズ入社。リスティング広告/SNS広告など活用したWeb集客支援、自社マーケティングを経て、現在はContentsquareやABテストツールのカスタマーサクセス担当。