ECサイトでレコメンド施策を強化する3つの戦略と活用法
今日、ECサイトで数千(時には数百万)もの商品を扱うことも珍しくありません。
小売業者が活用する施策の1つ「レコメンド」は、訪問者が興味を持ちそうな商品を案内し、効率的に欲しい商品を発見、購入を促進します。
本記事では、レコメンド施策を強化する3つの戦略についてご紹介します。
目次
1.消費者が効率的に欲しい商品を発見
商品レコメンドシステムは、ECサイト、モバイルアプリ、電子メール内、またはキオスクや様々なIoTデバイスなどの接続された画面上で活用されています。
パーソナライズされたレコメンド施策を実施することで、親和性・トレンド・興味・行動に基づいて、ユーザーは自分が興味ある商品を簡単に見つけることができ、その結果、売上・アップセル・クロスセル・1回あたりの購入点数の増加・平均注文金額(AOV)の増加が期待できます。
レコメンデーションは現在、世界の有名な企業で導入されており、例えば、Amazonは20年間アルゴリズムの改良と調整を行ってきました。
膨大な量の消費者データを原動力に、同社のレコメンデーションシステムは、顧客が最も購入に興味を持っている可能性の高い商品と顧客をマッチングさせることができます。
2.レコメンドシステムを支える3つの戦略
レコメンデーションを支える戦略は大きく3つあります。
(1)グローバル戦略
(2)コンテキスト(文脈)戦略
(3)パーソナライズ戦略
これらの各戦略が、ユーザーにレコメンド商品を決定します。各層に該当するさまざまなレコメンド戦略の例をご紹介します。
使用する戦略を選択する際には、
・利用可能なユーザー情報
・商品データの量
・購買ファネル内のユーザーの位置
を評価し、これらの情報を基にどの戦略を展開するかを決定する必要があります。
(1)グローバル戦略
最も簡単に実装できる戦略です。
・よく購入されている商品
・人気のある商品
・トレンド商品
など、既知のものと未知のものの両方をユーザーに提供するシンプルなレコメンドです。
(2)コンテキスト(文脈)戦略
色、スタイル、カテゴリ、他の商品との購入頻度など、商品の属性を評価し、買い物客に商品を勧めます。
(3)パーソナライズ戦略
単に商品属性だけでなく、利用可能なユーザーデータと商品属性を考慮に入れて、各ユーザーに1人1人にあわせた適切なレコメンデーションを提供します。
効果的に導入するためには、購入履歴、親和性、クリック、カートへの追加など、ユーザーの行動データが必要です。
特定の状況では、ユーザーの利用履歴をサイト上の他のすべてのユーザーの履歴と組み合わせて、商品をレコメンドすることもできます。
例えば、パーソナライズの「協調フィルタリング(Collaborative Filtering)」戦略を使用すると、ユーザーと類似した行動を示すサイト訪問者の好みや行動に基づいて商品を勧めることが可能です。
一方、「趣味嗜好ベース(アフィニティ:Affinity Based)」戦略は、レコメンドシステムが自動的に集計したデータをもとに、顧客ごとにアフィニティプロファイルを構築し、ユーザーの好みに応じて商品をレコメンドします。
「グローバル戦略」は、新規、リピーター、ロイヤルティの有無に関わらず、あらゆるタイプのサイト訪問者に使用できます。
もし、ユーザーの地理的位置や親和性などの情報や、行動データが利用可能な場合は、「コンテキスト(文脈)戦略」や「パーソナライズ戦略」を活用します。
レコメンデーションは、ユーザーに合わせて適切に実施できれば、収益増加を期待できる施策です。
例えば、十分なユーザーデータを収集し頻繁に買い物をしている顧客やVIPユーザーに対して、パーソナライズされた戦略を実施することも可能に。
さらに、これらの戦略は相互に重ねることで強化され、展開されたレコメンデーションのインパクトを最大限に高めることができます。
3.レコメンド戦略は表示ページとセットで考える
レコメンド戦略は事前に決める必要があり、ロジックの例は次のとおりです。
・最近見たもの
・最も人気のある
・現在表示中のアイテムに類似したアイテムを表示
・訪問者の閲覧履歴に基づいてアイテムを表示する
・現在閲覧中のアイテムと一緒に閲覧されているアイテムを表示する
▼カテゴリページの「最も人気のある」推奨ウィジェットの例
これらの戦略は、各ユーザーに提供されるレコメンデーションを強化(または制限)し、パフォーマンスと目的を最適化するために機能を調整することができます。
レコメンド施策に使用する戦略を決めたら、「最近購入した商品を除外する」や「最大25ドルの商品のみを含める」などのルールを設定し、掲載する商品を絞り込むことも可能です。
また、レコメンド戦略に適切なページを選択します。
例えば、
「一緒に表示」は、すでに表示されている製品に関連しているため、商品ページに。
「一緒に購入」は、特にユーザーがカートにアイテムを追加した直後のカートページに。
「最も人気のある」はTOPページに適したコンテンツであり、新規訪問者とリピーターの両方の発見プロセスを開始するのに役立ちます。
4.文脈と意図の組み合わせ
レコメンデーション戦略は、各ユーザーの訪問目的に応じて変えるべきです。
訪問者を目的意識レベルで大きく3つに分類できます。
・目的意識が低い:新規訪問者であるか、識別できないか、検索またはソーシャル経由で到着するか、モバイルデバイスを使用している。
・中程度の意識レベル:サイトに直接到達したり、電子メールキャンペーンを経由したり、デスクトップデバイスでサイトを操作している
・目的意識(購買意欲)が高い:過去に購入したか、カートに商品を追加したか、サイトで直接商品を検索したことがある
例えば、目的意識が低いユーザーの場合、「一緒に表示」戦略は、商品の発見と検索を促進します。
一方、過去の購入者など、購買意欲が高いユーザーにとっては、「一緒に購入」戦略がより適切であり、クロスセルできる可能性が高まります。
5.データとレコメンドシステム
レコメンデーションを効果的に展開するためには、データが必要です。
暗黙的にも明示的にも、このデータはシステムによって自動的に取り込まれ、レコメンデーション・ウィジェットで各ユーザーに提供すべき製品を特定することができます。
レコメンデーション・エンジンは、すべてのユーザーに関するオンライン行動データを収集することができます。
サイトはファーストパーティのデータを収集しますが、CRMやオフラインでの購入データなど、サードパーティのソースからのデータをオンボードすることができます。利用可能なデータが多ければ多いほど、ターゲティング戦略がより強力になります。
ユーザーデータの種類
次のタイプのユーザーデータにアクセスできるようになると、よりスマートなレコメンデーションが可能になります。
・位置情報:ユーザーがいる国、地域、または都市
・技術データ:ユーザーがサイトにアクセスしているデバイスの種類、使用しているブラウザの種類、オペレーティングシステムなど
・人口統計学的なデータ:ユーザーの性別、年齢、配偶者の有無など
・行動データ:クリック、カートへの追加、ホバー、閲覧したページ数など、ユーザーがその場で行った行動。
・アフィニティベースのデータ:オンサイトでユーザーが表示した興味や嗜好
・オンラインとオフラインの購入データ:ユーザーがサイトまたは店頭で購入した商品
・トラフィックのソースデータ:ユーザーがアクセスしているトラフィックのソース(ダイレクトトラフィック、有料トラフィック、ソーシャルトラフィック、リファラルトラフィックを含む
・サードパーティデータ:外部ソースからのユーザーに関する情報で、DMPを介してオンボードされたもの。
これらのデータにアクセスすることで、マーケティング担当者は訪問者のペルソナを特定し、購買習慣を理解することができ、セグメンテーション戦略に情報を提供することができます。
その他の要素としては、ユーザーのトラフィックソースやブランドとのやり取りの際に使用しているデバイスを知ることで、ターゲティング戦略に情報を提供することができます。
ユーザーがあなたのサイトを訪問し、利用すればするほど、より多くのデータが利用可能になります。
システムはこのデータを利用して、ユーザーが最も購入する可能性の高い商品を予測し、より関連性の高いレコメンデーションを提供することができます。
商品データの種類
また、商品データは、レコメンド・システムが適切なユーザーに適切な商品を提供できるようにするために不可欠です。
商品データ・フィードは、小売業者の全商品カタログを格納しており、レコメンド・エンジンと同期させることができます。商品フィードには、サイトで販売されている商品に関する基本的な情報が含まれています。
・SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理を行う際の最小単位)
・商品名
・商品URL
・価格
・在庫状況
・商品画像
・キーワード
利用可能な商品データが増えれば増えるほど、コンテキストに基づきパーソナライズされたレコメンデーション戦略がより強力になります。
6.まとめ
商品レコメンデーションは、ユーザー体験を向上させ、組織の収益を増加させます。
また、機械学習が重い作業の多くを行うため、マーケティング担当者は、さまざまな戦略、セグメンテーションの実践、機能を大規模に実験することができ、これまで以上に多くの商品をユーザーに提供することで、ROIを生み出し、企業の収益を向上させることができます。
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※本記事は、「An introduction to product recommender systems」を翻訳・加筆修正したものです。

勝見 理恵
2012年ギャプライズ入社。リスティング広告/SNS広告など活用したWeb集客支援、自社マーケティングを経て、現在はContentsquareやABテストツールのカスタマーサクセス担当。