ECサイト売上前年比165%!顧客体験価値を向上し続ける、ベイクルーズのビジュアルAIテクノロジー活用
ファッションのみでなく、家具や飲食と様々な事業を展開する株式会社ベイクルーズ様。
2020年5月度の自社ECサイト売上は前年比165%、2020年8月期は390億の見込みで5年で6倍の成長を遂げており、業界内で元々EC化率の高い同社ですが、変わらず成長し続けています。その秘訣は自社ECサイトの強化に尽きるとのこと。
今回は、ベイクルーズ様の自社ECサイト強化のポイントや、モールに依存しない内製化のメリット、更なる進化のためご導入頂いたビジュアルAIテクノロジーのSyteの活用方針についてお伺いいたしました。
目次
1.店舗とECサイトの垣根を越えた提案でファンを増やす
―貴社について教えてください。
株式会社ベイクルーズ
EC統括 プロダクトディベロップメント Div UI/UX Section Section manager
玉川寛一様
(玉川様)
創業1977年と40年を越える歴史ある企業でありながら、ファッションだけでなく、飲食や家具、フィットネスなど事業を拡大し続けているパワフルな会社です。とても熱心なファンが多く、店舗とECサイトをシーンに応じて賢く利用する方が多いです。
例えば、30代前半でお子さんがいる方は、なかなか買い物の時間をとれません。
ECサイトを見て気に入った商品を取り置き、店舗で試着。そこで良いと判断しても時間が惜しいので、最終的にECサイトで購入するという買い物をされる方もいます。
実物を見るというのは、店舗でしかできません。
お客様にとって、店舗とECサイトどちらも違和感なく使えることが理想の形だと考えています。
―熱心なファンを増やすポイントは何ですか?
株式会社ベイクルーズ
執行役員/Director EC統括 Product&Development Div.
加藤利典様
(加藤様)
お客様の声を分析した上で、商品企画・接客・店舗づくりなどに活かし、体験価値を上げ続けることがファンを増やす秘訣です。つまり、顧客のウォンツ(欲求)とニーズ(必要)に着目し、そこに向けて継続的な価値をもたらすサービスを創造する。特に長年わたり店舗運営に力を入れてきた結果が出ていると考えています。
2016年頃にはオムニチャネル推進の一環で、物流拠点並びに在庫データの統合、会員データの統合、サービスの統合、コミュニケーションの統合と4つの統合を行ってきました。現在はオムニチャネルで実現した統合プラットフォームをベースにリアルタイムで顧客を理解し、顧客一人一人に価値あるショッピング体験を実現する事を目指した「ユニファイドコマース(※1)」を推進しています。
「オムニチャネル」から「ユニファイドコマース」へ。
これまでの店舗、ECサイトのチャネルを統合し、いつでもどこでも買い物ができる、というだけではなく、完全に店舗とECサイトの垣根をなくしてデータやサービスをリアルタイムに共有することで、より個々のお客様のニーズに沿ったサービスをどのチャネルでも提供することが可能になると考えてます。
(※1)ユニファイドコマース:
オムニチャネルで実現した統合プラットフォームをベースにリアルタイムに顧客を理解し、その情報を活用して顧客一人一人に価値あるショッピング体験を実現すること。
2.モールに依存しない、自社ECサイト内製化がもたらす3つのメリット
―ECサイト売上前年比165%と大きな成果を出されていますが、自社ECサイトに力を入れたきっかけや背景について教えてください。
(加藤様)
SPA(製造小売)は、自分たちで商品を売る力をつけなければなりません。
「生活者との繋がりを創出する」というECサイトのミッションのもと、10年程前から自社ECサイトの運用を内製化しており、意思決定から施策実行までを自分たちでスピーディーに動かせる組織を作っています。
⾃社ECサイトを強化していく理由は⼤きく3つあります。
・外的要因による業績変動リスクを減らす
・ユニファイドコマースによる相乗効果を最適化
・データ資産活用による競争優位性の創出
モール出店の場合、モール側の急な仕様の変更でランキングに影響が出たり、クーポン施策の乱発やモール独自の囲い込み戦略によるブランドイメージ低下、逆に販促予算を絞られて施策が打てなくなるといったコントロール不可な部分が多いです。しかし、⾃社ECサイトであれば外的要因によるリスクを回避できる上、お客様の行動データなど重要な情報資産も蓄積されます。
お客様のデータは、顧客体験価値を向上する上で重要なヒントとなるため、現在掲げているユニファイドコマースの実現⽋かせないものです。
現在コロナウイルスが流⾏していますが、こういった予測不可能な状態でECサイト売上を前年⽐165%にできたのも、⾃社で素早く意思決定をして、アクションに移せたためだと思っています。
―貴社のEC部門の体制について教えてください。
(加藤様)
以前はシステム開発など一部外注をしていましたが、稟議申請などの関係で施策を実行するまでに時間かかっていました。
現在はスピーディーで柔軟な対応をするため完全に内製で対応できる体制に変更し、EC部門は約130名で構成しています。そして、その半分がデザイナー、プランナー、マーケター、エンジニア、アナリスト、UIUXなどの専⾨職となっています。
3.文字では表現しきれないお客様のニーズ
―ビジュアルAIテクノロジーのSyteをご導入頂きましたが、以前は自社ECサイトでどのような課題があったのでしょうか?
(玉川様)
キーワード検索からECサイトへの流入が低いことが課題です。
私は前職で家電業界におり、家電ECサイトの流入の約10%はキーワード検索経由でした。しかし、それと比べるとベイクルーズはギャップがあり、疑問に思いました。
市場分析ツールSimilarWebで分析してみると、これはベイクルーズに限ったことでなく、ファッション業界全体としてキーワード検索経由の流入割合が低いことが判明しました。そこから、商品の素材感や色などのニュアンスが言葉で表現しにくく、理想のアイテムにたどり着きにくいファッションの特有の課題があるのではないかという仮説に行きつきました。
―ファッションECサイトのキーワード検索経由の流入は海外と比べると日本ははるかに低く、平均で2~4%、高くて6%程です。広大なアメリカなどと比べると日本は比較的すぐに店舗にいけるので、地域の差異なども関係がありそうですね。
(玉川様)
能動的に商品を探す人が日本は少ないというのもあるかもしれないですね。
また、弊社ではNPS(※3)アンケートを行っています。
お客様の意見をみると、自社ECサイトで「絞り込み検索」に対するニーズがすごく強いことがわかりました。
そうした部分から、キーワードだけでは求めている結果が得られないために、絞り込みを利用して商品を探したい方が多いと理解しています。しかし、本来ならば、お客様は絞り込みをせずとも、検索の段階で欲しい情報を得たいはずです。
(※3)NPS(Net Promoter Score):
自社ブランドや商品・サービスに対する顧客ロイヤルティを数字で計測して確認する指標。商品購入後に顧客へアンケートを実施し、それを元に計測する。
(加藤様)
NPSを上げることを毎年KPIとしてもおいていて、お客様のアンケート回答を元に改善を行っています。
そのアンケートで毎回要望の1位となることが多いのが、ECサイトの検索UIの改善です。
サイト内検索の機能改善の一環として、画像検索の導入を考え始め、お客様にも機能としてあったら便利かを聞いてみました。
そうすると3割近くの方が欲しいという結果だったので、画像検索プロジェクトを具体的に進めていくことを決めました。
また、昨今の消費者の行動変容として、検索がGoogleからInstagramに変わってきています。
ベイクルーズとしてもInstagramを利用するお客様が多いこと、ファッションと画像の親和性の高さという点も導入を検討したきっかけです。
4.ビジュアルAIテクノロジー「Syte」で更なる顧客体験価値を提供
―サイト内検索改善の一環として画像検索を検討されていたとのことですが、今回Syteをご導入頂いた決め手を教えてください。
(玉川様)
画像検索で商品の繊細な情報を知ることができるSyteの精度の高さが導入の決め手です。
ベイクルーズのアイテムは少し割高なので、お客様としては入念に商品を探して購入を決めますし、詳細を知りたい。そのため、Syteのようなテクノロジーが必要だと確信しました。
また、「素材感や色合いなどを細かく理解できるAIはファッションや家具以外ではそこまで求められていない」と導入前に高瀬さん(弊社担当)頂いたアドバイスにも共感しました。
▼Syteの実装イメージ
(弊社担当:高瀬)
他のサービスだと、Web用にしか開発されていないため、オムニチャネルやユニファイドコマースなど、店舗で使えるものもなかなかありません。そうした取り組みをされている貴社では、店舗でもデジタル体験ができる部分もひとつ重要なポイントだと思います。
また、検索で入力したビジュアルに類似した商品のみでなく、それに合ったコーディネート提案をしてくれる点もメリットの一つです。
(玉川様)
そうですね。弊社で進めているデジタルフラグシップストアの件なども考えると、そういったメリットは大きく、使おうと思えば店舗でも利用できる柔軟性も魅力的でした。
―他のツールとは比較検討されましたか?
(加藤様)
国内外の大体のツールは比較検討しました。何かサービスを導入する時に大事なのはとにかく「精度」です。
実は2年前にも画像検索の導入検討をしました。しかし、その際は検索結果の精度が期待とは異なったので、やめてしまいました。
Syteの精度のメリットとして感じているのは2つです。
・ユーザーの画像検索の結果と期待の差異の少なさ
・商品詳細ページでの類似商品のレコメンド
中でも特に画像検索の精度の高さを重視しています。やはり、お客様が機能を使って求めている情報を得られることが大切で、そこが上手くいかないと利用されないため、導入までに時間をかけてでも精度面は重要です。
―Syteをご導入頂き、現在自社ECサイトでのリリースに向けてテストを行っている最中かと思います。これまでご利用頂いて率直なご感想を教えてください。
(玉川様)
Syteの仕様の柔軟性にまず驚きました。通常決まった形式以外の情報を連携しようとすると追加開発費用が発生することが多いです。しかし、Syteは追加費用が発生せずに対応してくれるので、将来的にも様々な可能性が広がりました。
また、精度と性能の面にエンジニアも期待しています。実際に商品の画像を入れて検索結果を見ると、大体同じ商品がマッチして出てくる精度や、APIの反応が早いなどの性能が良いと聞いています。
5.今後の展望
―今後はどのような取り組みを考えていらっしゃいますか?
(加藤様)
今後は、ECサイトと店舗のそれぞれの利便性をより融合した取り組みをしたいと考えています。
店舗であれば、接客が強みの一つです。これをECサイトでどのように表現するか?ということで、現在チャットやビデオ接客などのデジタル接客にも力を入れています。
そうした取り組みの中で、今後Syteを店舗でも活用していきたいと考えています。
例えば、デジタルサイネージと組み合わせた活用や、鏡の前で商品のビジュアルを出すことが可能になれば、店舗の体験価値を変えていけるはずです。
また、自社ECサイト内では様々なコンテンツももっているので、そういった検索以外の部分、全てのコミュニケーションチャネルで上手く活用していきたいと思います。
(玉川様)
お客様がどういったビジュアル検索をして、何を買っているかという一連の行動を分析するための環境を整えていきたいです。
そういったデータから実際のお客さんのニーズやトレンドも把握しやすくなると思います。
お客様がInstagramから写真アップしているのかなども知りたいので、分析環境をSyteに加えてもらえたらうれしいです。
―加藤様、玉川様ありがとうございました!
「2020年小売業界トレンド予測レポート」にて、今小売業界で注目されているトレンドや事例をを公開しております。是非ご覧下さい。
ビジュアル検索AIテクノロジーSyteについてのご質問はこちらからお問い合わせください。
阿多 佑梨花
2018年秋にギャプライズに入社。前職で2年半、総合通販業界にてアパレルの店舗運営に従事。ギャプライズ入社後、インサイドセールスの経験を経て、現在は自社マーケティングを担当。