インフルエンサーマーケティングでROIを計測する3つの方法
1.インフルエンサーマーケティングのROIは測れない?
いま話題のインフルエンサーマーケティング。
費用対効果が測れないから中々実施に踏み出せないという方も多いのではないでしょうか?
たしかに「インフルエンサー投稿の価値は金銭的価値では測れない」なんて声が散見されます。
その代わりの指標として、いいねやコメントの数やView数などが、効果を測定する指標として使われています。
しかし、果たして本当にインフルエンサー施策の費用対効果を測定するのは不可能なのでしょうか?
海外に目を向けてみると、様々な費用対効果測定の試みを見ることができます。
ただそれらのアプローチはどんなビジネスにも適用できるものではなく、手法による制約から商材や販売チャネル、ブランドの認知度など様々な要素に依存します。
今回はTapInfluence社やCarusele社が過去に取り組んだインフルエンサー施策のROI測定の事例のうち3つをご紹介します。
2.【海外事例3選】ROIを計測する方法
本記事ではTapInfluence社やCarusele社が、2015年~2016年にかけて取り組んだインフルエンサーの効果測定方法のうち3つをご紹介します。
[参照]No BS How To Measure Real Influencer Marketing ROI
1つ目の手法はSNSのデータを用いた費用対効果推定、2つ目・3つ目の手法は外部の調査会社の特定のサービスを利用し、インフルエンサー投稿の閲覧者の購買データから算出するアプローチとなっています。
下記にてどのようなアプローチなのか見ていきましょう。
Pin to Purchase(ピンタレストを使う方法)
オンライン上の画像を収集し、自分の好きなようにボードへ集めることができるピンタレストを使った手法です。
TapInfluenceのRustin Banksによると食品メーカーと特に相性が良い手法と紹介されています。
ピンタレスト上では、人々の興味があるものが個人の好きなようにボードの形で収集されています。
この手法はピンタレストのボード内に保存されたブランドや製品は購入確率が高いという考えに基づき、ある特定のブランドや製品の画像をセーブしている方にアンケートを実施して、購買経験の有無や購買意向を測定し、その結果からROIを推定する方法です。
この測定の事例としてKraft Heinz Companyが挙げられています。
Kraft Heinz Company がサラダドレッシングのマーケティング施策としてインフルエンサーマーケティングを実施し、この測定方法でインフルエンサー施策の短期的なROIを計測しました。
主な手順は下記になります。
- 40人のインフルエンサーにサラダドレッシングのコンテンツを投稿してもらう。
- そのコンテンツにピンをした710,000人のユーザーの一部に、購入意向や購入時期のサーベイを実施。
- 特定の時期以内の購入意向から、売り上げを推定。
- 短期的には$426,000ドル(約4,686万円)の売り上げが結果として表れています。
インフルエンサーに支払った報酬の合計が12,000ドル(約132万円)であったことを踏まえると、$426,000ドル(約4,686万円)の売り上げは非常に費用対効果の高い施策と言えるのではないでしょうか?
日本でも今後ピンタレストユーザーが拡大すれば、より効果的な測定方法になり得ると考えられます。
消費者購買データとcookie*1を使う方法(消費者パネル*2を保持する専門の調査会社を使う必要あり)
こちらの手法は大規模な消費者パネルやcookieベースで閲覧者とその購買データを照合するサービスを提供する市場会社を利用した事例です。
2015年から2016年にかけてTapInfluence社とCaruseleが取り組んだ事例によると、Nielsen Catalina Solutionsが提供する米国の10万人の消費者パネルとNCSトラックングピクセルを用いて、インフルエンサーコンテンツを閲覧した人とそうでない人の消費額を比較することによって算出されました。
主な手順は下記になります。
- インフルエンサーが投稿するページから特定のブログ記事へ誘導する。
- ブログ記事に設定されたNielsen Catalina SolutionsのNCSトラッキングピクセル(専用のcookie)を元に、閲覧者のメールアドレスを入手
- それらのメールアドレスと消費者パネルに登録しているメールアドレスと照合する
- マッチしたメールアドレスと消費者パネルの購買データを紐付ける。
- その購買パターンに類似するメンバーとの比較をすることによって、インフルエンサーの投稿の閲覧がある人とない人が生む消費額の増加分を測定する。
下記の図はインフルエンサーの投稿を閲覧したグループの時系列の売上(黄色)と、閲覧していない人の売上(赤色)を示した例です。
インフルエンサー投稿を閲覧した群がキャンペーン期間中高い売上を示していることが確認できます。
[参照]Nielsen Catalina Solutions:Sales Effect Study https://pages.tapinfluence.com/hubfs/Nielsen_WhiteWave_Study/1009_-_Nielsen_Study_Case_Study.pdf
この手法は実際の購買履歴ベースの測定ですので、非常に客観的にインフルエンサー施策測定に有効と言われています。
唯一の欠点として、消費者パネルとメールアドレスを照合させる必要があり、コンテンツ閲覧者が消費者パネルに登録されていなければ、効果を測定することができないという点です。
*1:cookie(クッキー)とは、あなたが見ているWebサイトからあなたのスマホやPCの中に保存される情報
*2:消費者パネル調査とは、多くの消費者を固定し、同じ項目の情報(データ)を継続的に収集する調査のことです。 選出された消費者に毎日購入している商品のブランド、数量、価格、店などを記録してもらうのが代表的な調査手法で、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「いくらで」「いくつ」買ったのかといったデータが蓄積されます。
クレジットカードデータを使う方法(専門の調査会社を使う必要あり)
基本的な考え方は上述の手法と同じで、インフルエンサー投稿の閲覧者と購買履歴データを結びつけることによって、閲覧の有無によるそのプロダクト/サービスの消費額を比較することでROIを算出する方法です。
TapInfluenceのRustin Bankによるとこちらの方法は特に、小売業界に向いていると紹介されています。
この手法もインフルエンサーの投稿を閲覧した人のメールアドレスと、購買履歴を結びつけることによって投稿を閲覧した人としていない人のそのブランドへの購入金額を比較し、費用対効果を計算する手法です。
海外ではCardlyticsなどの企業がcookieのデータから閲覧者とその購買履歴を照合するサービスを提供しており、インフルエンサー投稿の閲覧の有無のみが違いの消費者群の平均購買額を比較することによって、
その施策の費用対効果を測定しようとする試みです。
3.まとめ
消費者パネルデータなど外部のデータと紐づけるアプローチなど、様々な角度からインフルエンサーのROIを測る試みは着々と進んでいます。ブランドや業界などが限定的ではありますが、先行事例のROIを見る限りインフルエンサー施策のパフォーマンスが低いわけではありません。
大切な経営資源を浪費しないためにも、効果検証まで見据えた計画検討はどのマーケティング施策でも基本となる考え方です。
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仲井間 憲志
2018年10月入社インターン。