Webディレクターがヒアリング前にやっておくべき5つの事前準備
LPO研究所の鎌田です。
セールス、Webサイト制作、マーケティング企画、どんな仕事をする場合でも、まず始めに行うのがヒアリングではないでしょうか。
アイディアを出す際に、持っている情報量と、アイディアの質は比例します。
良いヒアリングを行えば多くの情報を得る事ができ、多くの情報を得る事ができれば、自然と良いアイディアを出す事ができるのです。
マーケティング企画においては、私の経験上ヒアリングの段階で企画の良し悪しは8割方決まると思っています。
それでは良いヒアリングをするために、一番重要な事はなんでしょうか?
それはヒアリング前の事前準備です。
「まずはヒアリングをしないと始まらない。」
「ヒアリングをしてから考えよう。」
そんな悠長な考えを持ってるディレクターもいますが、なんの準備もせずにヒアリングに臨んでも100%有益な時間にはなりません。
今回はヒアリング前の事前準備について5つのポイントをまとめました。
それではいってみましょう。
目次
1. クライアントの業界を知れ
まずは基本。クライアントの業界について調べましょう。
ヒアリングで十分な情報を聞き出すには、まず共通言語で話せるようになる必要があります。
逆の立場で考えてみてください。ヒアリングに来た営業が自分の業界を全く調べず、適当な質問を繰り出してきたとしましょう。
「こいつに託そう」という気持ちは一切生まれませんよね。信用できない人間には、当然積極的に情報を共有しようとも思わないでしょう。
ヒアリングを行う前に、クライアントのマインドをオープンにするためにも一定の業界知識は持っておきましょう。ではそのためにどんな情報を見ればいいのか。
私の場合は、「業界新聞」「雑誌」「RSS」「ホームページ」さらに下記のようなサイトを活用することで業界動向のレポートや、市場レポートを確認しています。
こういった情報をヒアリングの前だけでなく普段からチェックしておき、業界がどういった経緯で今の状態になっているか、これからどう動いていくのかという事を把握しておくのが大切です。
ヒアリングの段階で十分な情報を得る事ができなければ、その後の段階でどう頑張っても企画の出来などたかが知れています。
質の良い情報を得るためには、まず業界動向調査を見直してみると良いでしょう。
ここで重要なポイントは業界動向調査で調べたデータをもとに質問を仮説のレベルまで持ってきておくことです。
例えば「御社は○○をやっていますか?」というレベルの質問では、YES/NOの単純な答えしか返ってきません。
しかし事前の調査結果を盛り込み、「業界全体のトレンドとして○○の実施があげられますが、御社は実施を考えられていますか?」と質問すればどうでしょう。
比較して質問する事でクライアントが「なぜやってないのだろう?」「なぜやっているのだろう?」という理由を考える事を手助けし、クライアントの考えや意見など、より深い情報を引き出すことができます。
また事前に調査した情報からある程度クライアントや業界の状況に仮説をもっておけば、それをクライアントにぶつける事で場の空気が活発になり、ヒアリングというよりもブレストに近いような状態になるのです。
こうなってくれば企画はほとんど成功したも同然。ヒアリングの段階でたくさんのアイディアが出てくれば、その後の作業はぐっと楽になります。
但しマーケッターとして、業界情報を知りすぎる事には注意しましょう。
業界動向調査で出てくる情報というのは、主に業者の方は知っていますが、ユーザーは知らないような情報ばかりです。
最初はユーザーと同じ知識量、目線を持っていたマーケッターが、こういった情報を知っていくうちに目線がユーザーから離れ、業者の方に近づいていってしまいます。
マーケッターが業者の目線になってしまえば、商品の強みをターゲットの目線に合わせて伝えるという、マーケッターの一番大事な役割をまっとうする事ができません。
大事なのは「買い手が知りたい部分」であり、それを知るためにマーケッターにはユーザーの視点が欠かせないのです。
またその業界の事を知りすぎると、知らず知らずのうちに業界の慣習、常識にとらわれてしまい新しいアイディアを作る事が難しくなってしまいます。
- ユーザーの目線から離れすぎない
- 新しいアイディアを作れるよう、その業界の慣習にとらわれないようにする
この2点に気を付けて業界調査を実施していきましょう。
2.ターゲット調査
十分に商品の強みを取り上げたつもりなのに、全然売れなかったという経験はありませんか?
先ほども申し上げましたが、いくら商品の強みを企画の中で取り上げても、それをターゲットの目線にうまく合わせる事ができなければ商品は売れません。
こういった事態を避けるためにターゲットの感情、行動を調査し、自分の目線をターゲットに近づけましょう。
今回は私が普段ターゲット調査を実施する際使っている、便利なツールをご紹介します。
(1) OKWaveなどのQ&Aサイト
Q&Aサイトには疑問や質問など、つまりユーザーが悩んでいる事、解決策を求めている事などが集まっています。
例えば「水漏れ 業者」というワードで検索をしてみましょう。
「水漏れ 業者」というワードに関しては、保障や業者の選び方について悩んでいる方が多いようですね。
こういった情報を入手したら、ヒアリングの際にクライアントがどういった保障を付けているのか、そこからさらに保障を充実させる事が可能かなどを質問してみましょう。
もし充実させる事ができるのであれば、ユーザーの悩みに直結する部分なので大きな強みになります。
このように業界や商品に関連するワードで検索をかけてみると、ユーザーの様々な悩みを知る事ができます。
またOKWaveでは緊急度やありがとう数で、質問を並び替える事も可能です
ありがとう数とはその質問が役に立ったと感じた人の数なので、これが多い質問は同じような悩みを抱えている人が多いと考えて良いでしょう。
(2)キーワードプランナー
ターゲットが調べるであろうキーワードを予め調査することで、市場ボリュームがわかると共に、関連ワードからはユーザーの悩みやアクションが見て取れます。
「水漏れ 修理」というワードが検索ボリュームが多い事から、水漏れが起きたときに業者に頼らず、まず自分で直そうとするユーザーが多い事が分かります。
この情報を踏まえると、「自分で修理するのと比べて、クライアントに頼むとどういった面でメリットがあるのか?」という質問をする事ができます。
以上のようにユーザーの悩みをぶつけ帰ってきた答えは、クライアントがどうユーザーの悩みを解決できるか?という事になります。
ここをしっかりとターゲットの目線で強調する事ができれば、ユーザーに刺さる、良いページができあがるのです。
繰り返しになりますが、マーケッターに一番大事なのはユーザーの視点です。ターゲット調査は手を抜くことがないようにしましょう。
3.類似業界調査
先ほど競合と差別化するためには、企画のユニークさが大事とお話しましたが、ユニークな企画をゼロから作るのは非常に困難です。
しかし、何も世界で初めての企画を作る必要はありません。あくまで競合とは違う企画を打ち出せば良いのですから、自業界ではやっていない企画、施策を他業界から持ってくれば、十分差別化につながります。
例えば、水漏れ関係のサービスを提供するクライアントから相談を受けたとしたら、スマホユーザーが多い、電話からの問い合わせが多いなどの特徴が共通している葬儀業界を見ておきます。
すると葬儀業界では当たり前に使われている、問い合わせの電話番号をフローティングさせるといった事が、水漏れ業界では全然使われていない事に気づくかもしれません。
こういった他の業界では当たり前な事でも、自分の業界ではやっていない事に気づき取り入れれば、ゼロから新しいアイディアを出せなくてもコンバージョン率があがる可能性はおおいにあります。
また、どの業界でも実施していない全く新しいアイディアよりも、他業界で既に使われている、すなわちある程度良い結果を残していると思われる物の方が上手くいく確率が高いでしょう。
ただし、全く違う業界だと上手くいかない事も多々あるため、先ほどの水漏れと葬儀業界のように、共通する要素がある類似業界を調べるようにしましょう。
ではどういった基準で類似業界を探していけば良いのでしょうか?
ポイントは二つあります。
1.ターゲットのマインドが似ている
一つ目はサービスを受けるターゲットのマインドを基準に選びます。
例としては
- 「緊急性が高い」「早く解決したい」サービスとして水まわりトラブルと鍵トラブル
- 「スキマ時間も使ってしっかり調べたい」「慎重に決めたい」サービスとして、不動産、ブライダル系など
こういった物があげられます。
2.ビジネスモデルが似ている
二つ目はビジネスモデルを基準にする方法です。
ここも例をあげてみていきましょう。
例えば人間ドックの予約サイトと、ゴルフ場の予約サイト、一見まったく違った業界に見えますが、人と人間ドック、人とゴルフ場をマッチングさせるという視点で見ると近いビジネスモデルを持っている事が分かります。
類似業界をどう選んでいくかという部分は、マーケッターとしてのセンスの見せどころです。
日頃から様々な業界を見て、どういったユーザーがターゲットなのか、どんなビジネスモデルなのかを考える癖をつけておきましょう。
4.競合調査
マーケティングの企画は他社ときっちり差別化する事が大事です。
そのためにはまず、競合が何をやっているか調べ、把握していかなければいけません。
クライアントに関連するキーワードで出てきた競合のホームページは当然確認しますが、弊社では+αでシミラーウェブというツールを使って競合調査を行っています。
こちらのツールを使用するとクライアントや競合の流入キーワードやリスティングの広告文など、サイト管理者でなければ知れない情報を手軽に知る事ができます。
またシミラーウェブでは、競合サイトのどのページがどのぐらい見られているかを把握する事も可能です。
例えば競合のECサイトが複数の特集ページを持っているとします。
シミラーウェブを使えばどの特集ページが一番見られているかを把握する事ができます。
当たり前ですが、クライアントと同業界である競合サイトでよく見られている特集は、そのままクライアントのサイトで真似しても成果がでる確率が高いので、似たような事ができないか聞いてみると良いでしょう。
このように、競合サイトの裏側の情報も事前に入手しておく事ができれば、ヒアリングの際に大きく役立つ情報となるでしょう。
シミラーウェブのさらに詳しい機能に関してはこちらの記事に書いてあるので、ぜひ読んでみてください。
SimilarWeb PRO(有料版)(シミラーウェブ) でライバルサイトを丸裸にする4つの方法
こうして競合を調査していくと、クライアントは競合と比べての強み弱みが分かってくると思います。
強みの部分は当然いかしていくのですが、弱みの部分もヒアリングをする際には非常に大事です。
といいますのも、同業界の他社が行ってる企画やサービスというのは、比較的に簡単にマネできる事があります。
なので自社の足りていない部分、劣っている部分は積極的にマネしていけば、少なくとも負ける事はありません。
ヒアリングの際にクライアントに真似できるかどうか確認してみましょう。
極論ですが、他社よりも劣ってる部分を全て真似してしまえば、少なくとも負ける事はありません。
非常に地道な作業になりますが、競合調査は漏れなくやる意識で取り組まなければ実を結びません。細かい箇所もしっかりと調べ、比較するようにしましょう。
5.仮説設計
「御社の強みはどこでしょう?」
「何かお困りの事はありますか?」
ヒアリングの際、このようなざっくりとした質問ばかりをしていると、質の良い情報を集める事はできません。
いざ企画を作る際、企画を作るための情報が十分にないといった事態になってしまいます。
ここを勘違いしている方が非常に多いのですが、ヒアリングというのはクライアントに質問をする場ではありません。
上記のような事前に調査した情報から自分なりの仮説を立て、クライアントにぶつける事で、ヒアリングから得られる情報の質がぐっと上がります。
例えば「●●に関することで何かお困りの事はありますか?」といった質問で把握できるのは、顧客の中で問題と認識されている物だけです。
しかし、「御社の状況を考えると、△△といったようなお悩みがあるかと思うのですがいかがでしょう?」といった仮説をベースにした質問をすれば、「ああ、今まで気付かなかったけど、確かにそんな悩みもあるかもしれないな」という風に、顧客自身が認識できていなかった潜在的な問題も掘り出すことができます。
ここを掘り出せると企画で役立つのはもちろんの事、クライアントの信頼もがっちりとつかめるでしょう。
もし仮説が見当外れでも、「△△は足りているね。いま足りないのはむしろ■■かな。」と反応があって、別の課題発見に繋がっていくかもしれません。
つまり仮説が当たっても外れても、「何か困ったことは?」という問いかけより、ずっと問題に迫りやすくなるはずです。遠慮せずに立てた仮説をどんどんぶつけていきましょう。
具体的には
- 業界や競合などの「背景」
- クライアントが抱えている「問題」「ニーズ」の想定
- 最終的にどうありたいのかというクライアントの「ゴール」
こういった部分に仮説を立てて置くことで、ヒアリングを次につながる良い物にできます。
ヒアリングには仮説の答え合わせをするぐらいの気持ちで望み、もしヒアリング時に新しい情報が出たら、元々あった仮説を軌道修正するくらいのつもりで臨みましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
冒頭でも述べましたが、ヒアリングなんて事前準備するほどの事でもないと考えられている方が多いように感じます。
確かにヒアリングの事前準備は成果へのつながりが見えづらく、一見必要ないように見える物かもしれません。
しかし企画の大本であるヒアリングの部分をないがしろにしては、加工の部分でいくら頑張っても企画の出来などたかが知れているでしょう。
良い企画を作るためには、まず根幹の部分であるヒアリングを、その中でも集められる情報の質に直接影響する事前準備の部分を見直して見るのはいかがでしょうか。
それではまた次回。