海外で6senseが注目を集める理由 │ 最新ABMツールを解説

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コロナ禍を経て社会が強制的にオフラインへシフトする中でBtoBマーケティングにおいても同様にデジタル化の波が訪れています。国内での注目度はまだそれほど大きくありませんが、海外ではこれまでに多くのABMツールが台頭し、さまざまなアプローチや戦略が試行錯誤されています。

そこで今回は海外で注目を集めているABMツール「6sense」をピックアップし、最新のABMツールやマーケティング市場について解説します。

6senseとは

引用元:https://6sense.com/

6senseは米国・カリフォルニアに本社を置くユニコーン企業のことで、AI顧客行動予測によるBtoB営業支援ツール「6sense」を提供しています。

ユニコーン企業とは「評価額10億ドル以上・設立10年以内の未上場ベンチャー企業」を言い、設立年数が浅く上場していないにもかかわらず企業価値の高い企業を指します。6senseは2013年に創立し、2024年2月時点で企業評価額は52億ドルだと言われています。

BtoB営業支援ツール「6sense」はBtoBマーケティングにおいてAIや機械学習を活用し、あらゆるチャネルやデバイス、膨大な数の購買行動を解析して的確で高性能なターゲティングと施策を提案します。アメリカでは効果的な収益獲得のためにこうした高度なデータマネジメントが定着しており、6senseはその代表的なプラットフォームと言える存在です。

6senseが注目されている理由

引用元:https://6sense.com/platform/account-matching/

昨今、6senseを始めとするツールが世界で注目を集めている理由には、ICTの発展が挙げられます。

デジタル技術の進化によって企業が顧客データを容易に収集し、より有用な方法で分析できるようになったことで、かつて売り手主導だった販売モデルはターゲット独自のニーズや好みにより一層の重点を置くことになり、その購買プロセスは複雑化しています。企業は顧客との緻密な接点を創出し、効果的な顧客体験を提供することが求められているのです。

そうした購買行動の変化にともない、マーケティング活動を効率化するためのツールが次々と登場しています。

SFAやCRM、MAなどは国内でもよく耳にする言葉ではないでしょうか。

そして今海外で注目されているのが、6senseを始めとするABMツールです。

国内にはまだ本格参入していないものの、6senseはSalesforceやHubspot、Outreachなどのアプリケーションと連携が可能なため、今後市場拡大の可能性があり注目しておくべきツールだと言えます。

6senseを紹介する前に、改めてABMツールの基礎知識について見ていきましょう。

ABMとは

ABM(アカウント・ベースト・マーケティング)とは具体的な企業や団体(アカウント)をターゲットとし、ターゲット企業からの売上を最大化するために戦略的なアプローチを実践するマーケティング手法のことを言います。

従来のリード主導のマーケティング手法に対して、ABMはアカウントを基調としたマーケティング手法である点が大きな違いです。ABMはポテンシャルの高い優良顧客(ターゲット企業)を絞り込み、そのターゲット企業に最適な施策をおこなうため、効率が良く成果を得られやすいという特徴があります。

ABMの重要性

従来のマーケティングはまず一定数のリードを獲得し、集まったターゲットすべてに対してアプローチをおこなっていました。当然ながらBtoBにおいてもリードの獲得は必要ですが、そこで重要なポイントは量ではなく質であるということです。

見込みのない、あるいは自社サービスに興味のない顧客にいくらアプローチをしても収益を得ることは難しいでしょう。ターゲットやペルソナへの理解を深めるアプローチは従来のマーケティング手法でも基盤となっていますが、ABMを活用すればよりデータドリブンな戦略のもと商談率や成果率向上に向けたアクションを実践できるでしょう。

海外でこうしたデータマーケティングが進化していることを裏付けるレポートを紹介します。

【2023年度版】最新の顧客体験レポート  | 6sense社

6senseが各業界の900名を超えるBtoBバイヤー(購買担当者)を対象におこなったアンケートから、以下のようなことがわかりました。

  • バイヤーがベンダーと直接やり取りするまでに、購入プロセスは70%完了している(一般的な取引サイクルは8か月)
  • バイヤーの84%が最初にコンタクトを取ったベンダーと取引をおこなっている

つまりバイヤーはベンダーにコンタクトを取る以前にほとんどの情報収集を終え、契約するベンダーを決定しているのです。このことから、BtoBにおいては顧客のバイヤーの購買プロセスをコントロールしようとすることは不可能に近いと言えます。

裏を返せば、バイヤーがベンダーにコンタクトを取るまでに有益な情報や体験を提供できるかどうかが鍵であるということ。ABMツールを使えば優良な顧客へ的確なアプローチが実現できるでしょう。

参考:THE 2024 6SENSE B2B BUYER EXPERIENCE REPORT  | 6sense

ABMのメリット

ABMにはいくつかのメリットがありますが、ここでは以下の2点を解説します。

  • ROIの向上
  • 営業サイクルの高速化

それぞれを見ていきましょう。

ROIの向上

ABMは自社と相性が良いと想定されるターゲット企業を特定し最適なマーケティングを実施することで、人材やコストなどのリソースを効果的に活用することができます。

ターゲットを深く絞ることで無駄な営業コストが不要になり、その結果ROI(投資利益率)が向上します。ツール導入のための初期投資にはコストが必要不可欠ですが、長期的な視点で見ればコストパフォーマンスは高く合理的な手段と言えるでしょう。

営業サイクルの高速化

ABMはターゲット企業を絞り、さらにその中のステークホルダーとだけ接点を構築していくため、効率的な営業を実現します。従来の飛び込み営業やメールキャンペーンといった非効率な営業は顧客からのフィードバックが得られる可能性が低いうえに、受注できる見込みはさらに低いでしょう。

ABMなら確率の高いアプローチによって結果検証までのリードタイムが短縮され、分析から次の仮説検証〜施策の実施という営業サイクルを高速化します。

6senseのおもな機能 │ 6sense Revenue AI™

引用元:https://6sense.com/platform/ai-marketing/

6senseには営業向けとマーケティング向けの収益AIプラットフォームがあり、それぞれの担当者が効率的かつ最短で取り組めるワークフローを提供します。

Revenue AI™ for Marketing

営業向け収益AIプラットフォームのおもな機能は以下の通りです。

アカウントインテリジェンス

匿名の購入意向データをリアルタイムで正確に特定し、購入準備ができているアカウントに優先順位を付ける機能です。具体的には同社の実証済みインテントデータと予測AIにより目に見えない意図シグナルを収集して分析し、デバイス、チャネル、場所をまたがるアカウントに正確に結び付けます。ターゲットとなる優先順位の高いアカウントと連絡先の新しいリストが毎日自動で作成されるため、従来のように手動で連絡先を判別する作業は必要ありません。

連絡先データベース

何百もの企業属性、CRMフィルター、エンゲージメント活動にわたって絞り込まれたターゲティングにより、最適なアカウントを積極的に予測します。そしてBtoBプロファイルの厳選されたデータベースからアカウントの購買チーム全体を発見し、その中の意思決定者を明らかにします。また連絡先情報、サイコグラフィックス、企業グラフィックスなど、さまざまな最新情報にアクセス可能です。

バイヤー意図データツール

バイヤー意図データツールを使えば競合のソリューションを検索している顧客を検出して保存できるほか、アップセルの機会に対する追加のニーズを深く掘り下げることが可能です。購入者が検索しているアクティブなキーワードやトレンドをピックアップすることで、ターゲットへの理解を深めます。

予測販売分析

6senseは長年にわたる過去のデータとリアルタイムの購入シグナルを組み合わせて、将来のペルソナをAI予測します。見込みのない無関係なアカウントを排除しコンバージョンにつながる可能性が高いアカウントに重点的に取り組むことで、取引成立までの平均時間を大幅に短縮します。

販売見込み客ツール

販売者が同社の保有するデータにアクセスし、最も使い慣れたアプリケーション(CRMやSales Engagement Platformなど)から見込み客全体の取り組みを管理できる機能があります。組織全体で情報を共有したり、必要な情報をほかの用途にエクスポートしたりすることも可能です。

Chrome拡張機能

Chrome拡張機能を使用すると、販売者はアカウントと連絡先の詳細、購入者の意図データ、企業情報や技術情報などをすべてブラウザ拡張機能内から取得することが可能です。たとえばLinkedinプロフィールを表示すると、販売者はファーストパーティおよびサードパーティの意図データやAIを活用した予測購入ステージなど、ユーザープロフィール上の主要な連絡先情報にアクセスできます。

優先順位付けダッシュボード

優先順位付けダッシュボードは市場内のアカウントと連絡先をすべて1か所にまとめて優先順位付けし、販売担当者にパーソナライズされたデータを提供します。これにより販売者は収益の機会を早期に発見し、適切なタイミングでアクションを起こすことが可能です。

Revenue AI™ for Marketing

マーケティング向け収益AIプラットフォームのおもな機能は以下の通りです。

インテントデータ

インテントデータとはユーザーが「現在どのような意向や関心を持っているか」を示す情報のことです。BtoB購入者の隠れた需要を明らかにし、購入意思のあるアカウントを特定します。具体的には独自のインテント ネットワークや、Bomora、G2、TrustRadius などの他のBtoB情報ソースから購入者の意図シグナルを配信します。

デジタル広告

デジタル広告を使用すると、マーケティング担当者は推測や無駄な広告費を使わずに重要な視聴者にリーチでき、費用対効果の高いキャンペーンを配信できます。また複数のチャネルにわたって実行される広告キャンペーンをを1つの統合プラットフォームで管理できるほか、アカウントエンゲージメント、パイプライン、収益への影響に関する包括的な洞察へもアクセス可能です。

AI 電子メール アシスタント

6sense® Conversational EmailはAIを活用してより魅力的なメールを作成し、顧客へのアプローチを自動化。具体的には顧客との会話を促し、電子メールキャンペーンの作成や商談の予約獲得をおこないます。

パイプライン インテリジェンス

リアルタイムデータとAIを使用してパイプライン予測から推測を排除します。マーケティング担当者はパイプラインと収益の目標を一貫して達成する、ターゲットを絞った需要創出戦略を推進可能です。

6senseの将来性

引用元:https://6sense.com/platform/ai-marketing/

前述のようにマーケティング市場では顧客獲得のために顧客ロイヤルティに重点を置く傾向が高まっており、従来のリード主導のマーケティング手法では競合と差別化を図ることが難しくなっています。これまでにも多くのマーケティングツールが登場していますが、6senseを始めとするABMツールはこれまでのアプリケーションを進化させた最先端のデータマーケティングであり、海外ではABMの市場は今後も拡大することが予想されています。

Morder Intelligenceの市場分析ではABMの市場規模は12.10%年に9億2,000万米ドル、2029年までに16億3,000万米ドルに達し、予測期間(2024年から2029年)中に12.10%のCAGRで成長すると述べられています。

参考:アカウントベースマーケティングの市場規模と推移株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024~2029年) | Morder Intelligence

国内でもデータマーケティングの重要性は認知されており、実際に多くの企業がMAやSFAツールを活用しています。

国内でまだABMツールが普及していない理由にはいくつかの要因がありますが「国内でABMツールの実績がないこと」が大きな要素だと言われています。海外に比べて日本は“失敗を恐れる”風土が根強く残っています。

ABMツールを始め新しい戦略は、実績がなければ社内に提案しにくいと考える担当者も多いのではないでしょうか。しかし、国内でのABM導入事例はまったくない訳ではありません。

電子決済サービスを提供するPayPay株式会社の事例では、ABMツール「uSonar」を導入し優良顧客や市場の開拓状況の可視化を実現しました。また株式会社セールスフォース・ドットコムではABMツール「SPEEDA」との連携でターゲットリストの精度や商談の確率を向上させています。

まだ大手やベンチャーに限られた実績ではありますが、既存のアプリケーションと上手く連携し、国内でもデータマーケティングを発展させることが可能です。

海外での認知度が高い6senseは実績を蓄積しながらその精度を高め続けており、その莫大なデータ量と分析能力が強みであると言えます。またアカウントを深く理解しチームで課題解決のワークフローを共有できる6senseは“より深い顧客体験を提供したい”と考える日本企業のニーズに合致していることからも、今後日本に普及する可能性は十分に考えられます。

しかし海外の成功事例をそのまま自社に取り入れることはNGです。

効果を最大限に発揮するためには、最適な形にアレンジすることや企業体制の変革、マインドセットなどが求められます。

まとめ:「6sense」を始めとするABMツールを活用してBtoBマーケティングを成功させよう

海外での認知度が高いABMツールは今後国内でも普及していく可能性があります。

日本のBtoBマーケティングにおいても顧客ロイヤルティを高める手法へシフトしている中で、データドリブンな戦略なくして市場を勝ち抜くことは難しい状況です。

6senseを始めとするツールを積極的に活用し、マーケティングの効率化を実現することが望ましいでしょう。

ただしツールの活用には専門的な知見が必要です。

ギャプライズでも各種AIを用いたマーケティングツール選定や導入アドバイスを行っています。の「このようなAIマーケティングツールを取り入れたことがない」「自社にはどのようなツールが最適か知りたい」とお考えの担当者はぜひお問い合わせください。

企業の課題や予算に合わせて、適切なサービスを提案させていただきます。

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今本 たかひろ/MarTechLab編集長

料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。

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