【2026年最新】Google論文「プロンプトを2回繰り返すと精度向上」は本当か? 現場で「効果がない」と感じる理由と正しい活用法
2026年、生成AIの活用はいよいよ「試行錯誤」から「実装・定着」のフェーズに入りました。
そんな新年のスタートに、Googleから興味深い研究成果が届いています。それは「プロンプトを2回繰り返すだけで精度が上がる」という、驚くほどシンプルな手法です。
「そんな簡単なことで?」と疑う方もいるかもしれません。実際、弊社ギャプライズ社内でも話題になり、すぐに試してみたメンバーがいました。
しかし、そこでの反応は真っ二つでした。「劇的に良くなった!」という声もあれば、「正直、あまり変わらない……」「期待はずれだった」という冷静な意見もあったのです。
実は、この「結果の差」にこそ、2026年のAI活用のヒントが隠されています。 本記事では、2025年12月に発表された話題の論文の解説に加え、なぜ現場では効果が出にくいケースがあるのか、どうすれば確実にAIのミスを減らせるのか、その「正しい作法」を徹底解説します。
目次
そもそも、Googleの研究は何を発見したのか?
まずは、話題となった論文『Prompt Repetition Improves Non-Reasoning LLMs』の概要をサクッとおさらいしましょう。
手法は「Ctrl+C, Ctrl+V」するだけ
この研究で提案された手法「Prompt Repetition(プロンプトの繰り返し)」は極めてシンプルです。 複雑なプロンプトエンジニアリング(指示出し技術)を使う代わりに、「ユーザーの質問や指示を、そのまま2回連結して入力する」。たったこれだけです。

【入力イメージ】
通常: 「この商品の紹介文を書いてください。ターゲットは30代女性です。」
繰り返し手法: 「この商品の紹介文を書いてください。ターゲットは30代女性です。この商品の紹介文を書いてください。ターゲットは30代女性です。」
なぜ、これだけで賢くなるのか?
論文によると、多くのベンチマークテスト(MMLUなど)でスコアの向上が確認されました。なぜ同じことを2回言うだけで精度が上がるのでしょうか?
理由は、LLM(大規模言語モデル)の仕組みである「Attention(注意機構)」にあります。 人間でも、大事な指示を一度さらっと言われるより、「大事なことなので2回言います」と繰り返された方が、記憶に残りやすく、注意を向けますよね。
LLMも同様で、同じトークン(単語)が繰り返されることで、その情報の重要度(重み付け)が高まり、指示の見落としが減るとされています。
ギャプライズ社内検証:「効果がない」と感じた3つの理由
しかし、冒頭でお伝えした通り、社内では「やってみたけど、あまり変わらなかった」という声もありました。 論文を読み込み、実務で検証した結果、「効果が出ない」には明確な理由があることが分かってきました。
もしあなたが「繰り返してみたけどイマイチ」と感じたなら、以下の3つの落とし穴のどれかにハマっている可能性があります。
① 「思考力」が必要なタスクに使っている
ここが最大の誤解ポイントです。論文のタイトルにもある通り、この手法が効くのは「Non-Reasoning(推論を必要としない)」タスクです。
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- 効果大: 記憶の想起、指示の順守、フォーマットの統一
- 効果小(または逆効果): 数学的な計算、複雑な論理パズル、因果関係の推理
AIの頭が良くなる(IQが上がる)わけではなく、「言われたことを忘れない(注意深くなる)」効果がある手法だと理解してください。
② 「再生成」と勘違いしている
「繰り返す」と聞いて、チャットボットの回答が気に入らない時にもう一度同じ指示を送る(Re-generation)ことだと思っていませんか?
この手法は、「1回のプロンプト入力の中に、同じ文章を2回含める」ことではじめて機能します。AIに入力される瞬間に情報量が増えている必要があるのです。
③ プロンプトが長すぎて混乱している
元々長大なプロンプト(数千文字)をさらに2倍にすると、AIが処理できる容量(コンテキストウィンドウ)を圧迫したり、情報の優先順位がつけられずに混乱したりするケースがあります。これは単なる「繰り返し」ではなく、無駄に情報を増やす「冗長」なプロンプトになりがちだからです。
明日から使える! マーケティング実務のための「鉄則」
では、EC運用やWebマーケティングの現場で、この技術をどう活かせばいいのでしょうか? 社内検証を経てたどり着いた、確実に効果を実感できる「3つの鉄則」をご紹介します。
鉄則1:「禁止事項」と「制約」こそ繰り返せ
「いい感じの文章を書いて」という抽象的な指示を繰り返しても、あまり意味はありません。 逆に、AIが最も苦手とする「~してはいけない(禁止事項)」や「~の形式で(制約条件)」に関しては、繰り返しの効果が絶大です。
【活用例:広告コピーのチェック】
× 効果が薄い:
「魅力的なコピーを考えて。魅力的なコピーを考えて。」○ 効果が高い:
「以下の文章の薬機法チェックをしてください。
※絶対に断定表現(効果がある等)は見逃さないでください。
※絶対に断定表現(効果がある等)は見逃さないでください。」
鉄則2:情報のサンドイッチ法
論文の応用テクニックです。指示と指示の間に、参照テキスト(商品スペックや記事本文)を挟み込む方法です。 これにより、AIが長い文章を読んでいる間に最初の指示を忘れてしまう「指示忘却」を防げます。
【テンプレート:サンドイッチ法】
###指示
以下の商品データから、「サイズ」と「カラー」のみを抽出してJSON形式で出力してください。参照データ
[ここに長い商品スペック情報を貼り付け]指示(繰り返し)
上記の商品データから、「サイズ」と「カラー」のみを抽出してJSON形式で出力してください。余計な情報は含めないでください。
鉄則3:CoT(思考の連鎖)とのハイブリッド
「推論(Reasoning)」が必要なタスクでは繰り返しが効かないとお伝えしましたが、解決策があります。 それは、従来のプロンプトテクニックである「Chain of Thought(ステップバイステップで考えて)」と組み合わせることです。
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- 論理的思考は「ステップバイステップで」と指示。
- 出力ルールは「繰り返し」で強調。
この2つを組み合わせることで、「賢く考え、かつルールを破らない」最強のプロンプトが完成します。
結論:2026年は「コピペ」を武器にする
最新のAI論文は、ともすれば「技術的なニュース」として消費されがちです。しかし、今回の「Prompt Repetition」は、私たちマーケターが明日からすぐに使える、非常に実践的なテクニックです。
まとめ:
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- 繰り返しは「IQ向上」ではなく「うっかりミス防止」に使う。
- ECの商品データ抽出や、レギュレーションチェックには効果絶大。
- 「禁止事項」や「制約」を重点的に繰り返すのがコツ。
「なんだかAIの回答が安定しないな」と感じたら、まずは難しいプロンプトを書く前に、その指示を「Ctrl+C, Ctrl+V」して2回伝えてみてください。
今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。