【予測×高速化の最前線】「クリックされる前」にページを準備する技術とは?
※本記事はBaqend社の記事を、同社の許可を得て翻訳・編集し公開しています。
目次
表示速度は“瞬時”が新常識に
「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」のスコアを改善する——
多くのWeb担当者が最初に目指す目標です。
しかし、それはあくまで出発点にすぎません。
いま、表示速度を「良好」から「瞬時」へ進化させることが、CVR最大化の鍵になっています。
なぜなら、スピードとコンバージョンの関係は直線的ではないからです。
「ページ遷移のストレスがゼロ」になったとき、最大の効果が得られます。
そもそもなぜ、ページは遅いのか?
どれだけ最適化をしても、ページ読み込みには必ず以下のような“順番”が存在します。
- データ取得(インターネット経由でHTMLや画像などのファイルを読み込む処理)
- リクエスト処理(サーバー側でページを生成・構成する処理)
- 画面描画(ユーザーのブラウザ上で実際にページを表示する処理)
この順序そのものが「限界」を生み、従来の高速化では超えられない壁となっています。
解決策は「クリックの予測」
この壁を突破するには、発想の転換が必要です。
クリックされた後にページを読み込むのではなく、クリックされる前に準備しておく。
そんな革新的なアプローチが、「Speed Kit」の提供する「Predictive Preloads(予測型プリロード)」です。
「Predictive Preloads(予測型プリロード)」は、ユーザーの行動をAIが予測し、次にクリックされそうなページを先回りして描画する技術です。
実際の処理は3ステップ
- 予測:実際のユーザーの行動データから次の遷移先を機械学習モデルで予測
- プリキャッシュ:そのHTMLをあらかじめ取得し、ユーザーのデバイス上に端末に保存
- プリレンダリング:バックグラウンドでページを描画しておき、クリックされた瞬間に即表示
つまり、クリックした瞬間にはすでにページが準備されているため、体感では「ゼロ秒」でページが切り替わるのです。

本番環境で動かすには?成功のカギは4つの工夫
「Predictive Preloads(予測型プリロード)」は単なるタグの追加では動作しません。安易な実装は、かえってユーザー体験を損なったり、サーバーに過剰な負荷をかけてしまったりします。本格運用に向け、以下4つの技術的課題を解決しています。
① 超高精度な「予測AI」
システムの性能は、ユーザーの行動をどれだけ正確に予測できるかにかかっています。
予測が遅れたり外れたりすれば、それだけでチャンスを逃し、リソースの無駄にもなってしまいます。
この課題を解決するのが、「RUM(Real-User Monitoring)」データをもとに構築された多層的なAIモデルです。
数十億件規模のユーザーデータをもとに、行動傾向やクリックパターンを学習。
さらに、リンクの特徴やURLの遷移パターンなど、サイトごとの構造に合わせたチューニングも行っています。
大規模な解析はサーバー側で行われますが、ユーザー端末から得られるリアルタイム情報も重要です。
そのため、オンデバイスとサーバーサイドの両モデルを組み合わせ、最適なタイミングと対象ページを見極めています。

予測の制度を高めるための3つの仕組み
「Predictive Preloads(予測型プリロード)」では、ユーザーの行動を高精度に予測するために、3つの技術的アプローチを組み合わせています。
■ 1. オンデバイスモデル
ユーザーの端末(ブラウザ)上で動作し、スクロール速度やカーソルの動き、リンクの位置や大きさなど、リアルタイムな行動データをもとに予測を行います。
ページのレイアウトや端末環境に合わせた即時かつ軽量な判断が可能です。
■ 2. サーバーサイドモデル
より複雑で広い視野からの予測を、サーバー上で実行します。
コンテンツ同士の意味的なつながりや、ユーザーが辿るページの関連性を分析することで、精度の高い「次の一手」を導き出します。
この処理は計算量が大きいため、端末ではなくクラウド側で行われます。
■ 3. ヒートマップの活用
ユーザーが現在見ているページに対して、どのリンクがよくクリックされているかを色で可視化した「ヒートマップ」を活用。
これにより、クリックされやすいリンクをより優先的に予測対象とすることができます。
最終的な予測は、これら複数の情報源を統合した結果であり、利用されるデータが増えるたびにモデル自体も進化していきます。
さらに重要なのが、「リードタイム」と呼ばれる指標です。
これは、ユーザーがリンクをクリックする前に、どれだけ早く次のページを描画し始められるかを示すもので、予測精度と並んで最も重要な要素とされています。
従来のように「ホバー」や「タップ」操作をきっかけに描画を始める手法では、このリードタイムが短くなりすぎ、事前読み込みの効果がほとんど得られません。
リードタイムが長いほど、LCP(最大視覚コンテンツの表示時間)の短縮に直結することが、データからも明らかになっています。

② サーバーに負荷をかけない仕組み
ページを事前に読み込む仕組みは便利ですが、多くのユーザーに一斉にプリロードを行うと、サーバーの負荷や通信コストが急増するという課題があります。
そこで「Predictive Preloads(予測型プリロード)」では、すべてのプリロード処理を「Speed Kit」側のインフラで完結させています。
ユーザーがアクセスするページのデータは、あらかじめSpeed Kitのエッジサーバー(=各地に分散されたキャッシュサーバー)から配信されるため、お客様側のサーバーには一切アクセスされません。
仕組みとしては、次のような流れです
- 次に表示されそうなページのHTMLを、匿名キャッシュとしてユーザー端末に保存
- ユーザーが実際にリンクをクリックしたら、本物のパーソナライズされたページをサーバーから取得
- 同時に、すでに描画済みのページを即座に表示
- 最後に、個別の内容を反映したデータとJavaScriptを自動的に上書き・反映
これにより、ユーザー体験を向上させながらも、運営側のインフラやコストには負担をかけない設計が実現されています。
③ 通信・CPU負荷を最小化
「Predictive Preloads(予測型プリロード)」では、あらかじめページを読み込んだり描画したりするため、通信量や端末の処理負荷(=オーバーヘッド)が発生します。
そのため、ユーザーの現在の操作を邪魔しないように、裏側で動く処理は慎重に管理されています。
主に2つの工夫で、この負荷を最小限に抑えています。
▸ 通信の最適化(ネットワーク負荷)
ページ全体をそのまま送るのではなく、他のページと異なる部分だけを抜き出して送信する「差分転送」の仕組みを採用。
さらに専用の圧縮技術も併用し、通常よりも80〜90%もデータ量を削減しています。
その結果、1ページ分の帯域で最大10ページ分を効率よくプリキャッシュできるようになっています。
▸ 処理の最適化(CPU負荷)
プリレンダリング中のJavaScriptは「解析と準備」だけを行い、実際の実行は後回しにしています。これにより、ユーザーが今操作している画面に負荷をかけず、スムーズな操作性を保ちながら裏側でページ準備を進めることができます。
④ 想定外のトラブルを防ぐ仕組み
ユーザーが実際にはアクセスしないかもしれないページを裏側で描画することには、思わぬ副作用のリスクがあります。
そこで「Predictive Preloads(予測型プリロード)」では、3つのリスクに対する対策がしっかりと取られています。
▸ アクセス解析が狂うのを防ぐ
ユーザーが見ていないページではJavaScriptを実行しないため、アクセス解析ツールが誤ってカウントすることを防ぎます。
▸ サーバーの状態に影響を与えない
たとえばログアウトやカートのようなページを事前に読み込んでも、本番サーバーの状態を変えないように、別の安全なキャッシュ経由で取得しています。
▸ 間違った情報や操作を回避
古いカート情報が表示されたり、意図せずログアウトされたりするのを避けるため、ユーザーが実際にそのページに到達した瞬間にだけ、最新情報を反映する仕組みになっています。
このように、事前に読み込む処理であっても、ユーザー体験やシステムへの影響が出ないよう細心の安全設計がされています。
数値で見る成果:最大70%が“瞬時表示”に

大規模なABテストで、以下のような成果が確認されています
〈パフォーマンス指標〉
- プリキャッシュ成功率:85〜95%
- プリレンダリング成功率:60〜70%(Chromium系ブラウザ)

瞬時表示率:最大70%がLCP 300ms未満
〈ビジネス指標〉
- CVR改善:1.5〜5%
- エンゲージメント向上:1セッションあたりページ数・滞在時間が大幅に増加
事例紹介:「BMW」も採用
グローバルブランド「BMW」も「Predictive Preloads」を導入し、ユーザー体験の高速化を実現しています。
表示速度は、いまや競争力そのものに
「Predictive Preloads(予測型プリロード)」を自社でゼロから実現しようとすれば、少なくとも次のような技術要素が必要になります
- 膨大なユーザー行動データの収集と管理
- 機械学習モデルの設計・検証・継続的な改善
- リアルタイム対応の動的キャッシュインフラの構築
- 通信負荷やセキュリティに配慮したネットワーク設計
これらすべてを自社で開発・運用するには、年単位の研究開発と専門エンジニアの継続的な投資が求められます。
Speed Kitは、こうした複雑な技術をすでに統合し、マネージドサービスとして提供しています。
そのため、お客様はR&Dやインフラ構築に追われることなく、今すぐにでもこの仕組みを活用いただけます。
サイト表示速度の改善は、UI/UXの中でも見落とされがちだった分野です。ですが、ページが遅れて表示されるだけで、ユーザーは何も言わずに離脱していきます。
次にUI/UXで何をすべきか迷っている方こそ、「表示速度」に目を向けてください。それが、CVRの改善と体験価値の底上げにつながります。
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MarTechLab編集部
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