ドイツ最大級のShopifyストアはどうやってLCPを47%改善したか|HOLYのSpeed Kit導入事例と実装ステップ
Shopifyは、ストアの立ち上げと運用のスピードで選ばれるプラットフォームです。
一方で「表示速度の改善余地が少ない」という声も少なくありません。テーマ側の画像最適化や遅延読み込みをやり尽くした先で、打ち手が尽きてしまうためです。
本記事では、ドイツ最大級のShopifyストアを運営する飲料ブランド「HOLY」が、テーマもチェックアウトも改修せずにLCP(Largest Contentful Paint)を47%改善した事例を紹介します。あわせて、Shopifyストアへの実装が具体的にどのような手順で進むのかを解説します。
目次
ShopifyストアのLCPは、テーマを触らずにどこまで改善できるのか?
ドイツの飲料ブランドHOLYの事例では、テーマ・カート・チェックアウトのいずれも改修せずに、高速化対象ページのLCP中央値が1,110ミリ秒から590ミリ秒へ、520ミリ秒(47%)短縮されました。商品ページに限れば60%の改善です。PoC(効果検証)期間中のコンバージョン率は相対で1.35%向上し、この差は信頼水準90%で統計的に有意と報告されています。
重要なのは、これがテーマの作り込みではなく、配信レイヤーでの改善によって得られた結果である点です。Shopifyのストアフロントの構造そのものには手を入れていません。
HOLYとは? ─ ドイツ最大級のShopifyストア
HOLYは2021年にベルリンで創業した飲料ブランドです。ゲーミングコミュニティ向けの粉末エナジードリンクから出発し、現在はエナジー・アイスティー・ハイドレーションまでを揃えるラインナップへと広がりました。欧州の複数市場でD2C(直販)を展開しつつ、スーパーマーケットの店頭販売も増やしています。
ECサイトはShopifyで構築されており、Speed Kitの発表によれば、トラフィック規模でドイツ最大級のShopifyストアのひとつです。月間数百万訪問の規模で、コレクション・バンドル・商品ページが高頻度で入れ替わります。
流入の中心はSNSとクリエイター経由、閲覧の大半はモバイルです。訪問者は数秒で「見続けるかどうか」を判断します。この規模と流入構造では、読み込み時間は技術的な指標ではなく、そのまま商売の条件になります。
なぜShopifyでは表示速度の改善が難しいのか?
Shopifyストアの速度改善が頭打ちになりやすい理由は、レンダリングパス(ページが描画されるまでの経路)が事業者側でほとんど変えられないことにあります。訪問者に商品画像や価格が見えるより前に、ストアフロントを組み立てて配信し終える必要があり、その上に載せたアプリ・計測タグ・パーソナライズ機能が、すべて同じミリ秒を奪い合います。
HOLYの場合、その影響を最も強く受けていたのは、売上を担う2種類のページでした。品揃えを見比べるコレクションページと、購入を判断する商品ページです。同社が求めたのは、リプラットフォーム(基盤の載せ替え)なし、テーマの作り直しなし、カート・チェックアウト・アカウント画面への変更なしで、この2つのページの読み込み時間を段階的にではなく一気に変えることでした。
日本のECサイトでも、残された弱点はLCPに集中している
この構図は日本でも変わりません。Googleが公開するChrome UX Report(2026年7月データセット、対象18,059,068オリジン)では、Core Web Vitalsの3指標すべてを満たすオリジンは55.7%にとどまります。内訳を見るとCLSは81.6%、INPは85.7%が良好である一方、LCPは68.3%と一段低く、ボトルネックがLCPに集中している状況が続いています。
ギャプライズが実施した国内ECの実測調査(通販売上上位300社・446サイト/CrUXモバイル・2026年7月時点)でも、LCPが1秒未満だったのはわずか21サイトでした。表示速度は「もう終わった論点」ではなく、いまも大半のサイトで残されたままの改善余地です。
Speed KitはHOLYのストアに何をしたのか?
Speed Kitは、既存のストアフロントの上にShopifyアプリとして導入されました。やっていることは大きく2つです。ページを都度組み立てるのではなく、あらかじめバックグラウンドで描画したコレクションページ・商品ページを訪問者に配信すること。そして、訪問者が次に開く可能性の高いページを予測して先に用意しておくことです。
① 完成済みのページを配信する
通常はリクエストを受けてからページを組み立てますが、Speed Kitはその工程を事前に済ませておきます。訪問者はストアフロント全体の往復を待たずにコンテンツを受け取れるため、最初に目に入るコンテンツの表示が早まります。
② 次のページを先読みする(予測プリロード)
Speed Kitは、訪問者が次にどのページを開きそうかを予測し、モバイルとデスクトップのレイアウトを分けて事前に準備します。HOLYでは、対象となる遷移のうち84%で次ページを事前に用意でき、訪問者の45%は「すでにバックグラウンドで描画し終えたページ」を受け取っていました。次のタップがネットワーク経由ではなくメモリから解決されるため、体感上はほぼ待ち時間がなくなります。
なお、カート・チェックアウト・アカウントの注文導線は意図的に対象外としています。決済フローに手を入れないことは、導入判断のハードルを大きく下げる設計上の選択です。
どこまで速くなり、事業成果にどう効いたのか?
PoC期間中の計測結果は以下のとおりです。表示速度の改善は、最初の1バイトが返るところから始まっています。
| 指標 | 導入前 | 導入後 | 改善幅 |
| LCP(高速化対象ページ全体・中央値) | 1,110ms | 590ms | −520ms(47%) |
| LCP(商品ページ) | — | — | 60%改善/700ms以上短縮 |
| TTFB(サーバー応答時間) | — | — | −323ms(80%) |
| FCP(最初のコンテンツ表示) | — | — | −292ms(41%) |

出典:Speed Kit公式「HOLY Case Study」
コンバージョン率と回遊への影響
計測対象セッション全体で、Speed Kitを適用した体験のコンバージョン率は相対で1.35%向上しました。この結果は信頼水準90%で統計的に有意と報告されています。あわせて、回遊の深さにも変化が出ています。
| 指標 | 変化 |
| コンバージョン率(相対リフト) | +1.35% |
| セッションあたりページ表示回数 | +2.32% |
| 非直帰セッションあたりページ表示回数 | +2.71% |
| 10ページ以上閲覧した深いエンゲージメント | +3.01% |
| 直帰率 | −0.28% |
数値を読むうえでの注意:コンバージョン率の+1.35%は相対リフトであり、CVRが1.35ポイント上がったという意味ではありません。また、統計的有意性の判定は信頼水準90%で行われています(日本のABテスト実務では95%を基準とする場合が多いため、比較の際はご注意ください)。PoCの実施期間とセッション数は公式サイトで公開されていないため、本記事では記載していません。
現在、Speed Kitはde.holy.comの全トラフィックに対して稼働しています。Shopifyの構成・テーマ・チェックアウトはいずれも導入前のままです。
ShopifyへのSpeed Kit導入は何ステップで進むのか?
Shopifyストアの場合、導入はShopify App Storeからのインストールを含めて5ステップで進みます。ストア側で手を動かすのはインストールと最後の有効化のみで、実装作業そのものはBaqend(Speed Kitの開発元)側で行われます。
Shopifyだと何が楽になるのか
Shopify以外のサイトにSpeed Kitを導入する場合、JavaScriptタグの設置に加えて、サービスワーカーファイル(ブラウザ側でコンテンツの配信を制御する仕組み)をサイトのルート直下に配置する作業が発生します。ここはエンジニアリソースの確保が必要で、開発チームとの調整が導入の最初の関門になりがちです。
Shopifyの場合、この2つがアプリのインストール操作で自動的に完了します。テーマファイルを編集する必要も、サーバーにファイルをアップロードする必要もありません。事前準備の工数が実質的にゼロになる点が、Shopify利用企業にとって最大の利点です。
事前準備:Shopify App StoreからSpeed Kitをインストールする
Speed KitはShopify App Storeで公開されており、管理画面から直接インストールできます。事前に、対象サイトのURLとShopifyストアのメールアドレスを共有いただきます。
ここで押さえておきたいのは、「インストール=高速化の完了」ではないという点です。インストールボタンの押下によって実行されるのは、タグとサービスワーカーファイルの設置までです。この時点ではまだサイトは高速化されません。
ステップ1〜2:アプリの認可とストアの紐付け
インストール後、Shopify管理画面のSpeed Kitアプリ内に、導入までの進捗ステップが表示されます。
まず、Speed Kitが動作するために必要な権限をアプリ内で承認します(Authorise)。続いて、Speed KitのアカウントとShopifyストアを紐付けます(Link)。紐付けには、Shopifyストアに登録されているメールアドレスを使用します。紐付けが完了すると、次のステップに進めるようになります。
ステップ3〜4:オンボーディングとカスタムインテグレーション(約1週間)
ここからがBaqend側の実装作業です。オンボーディングチームが対象ストアの構成を確認し、サイトごとのカスタムインテグレーションを行います。ページ構造やアプリの構成はストアごとに異なるため、この工程を経てはじめて安定した高速化が成立します。
所要期間は約1週間が目安です。
この工程と並行して、契約プランの開始手続き(Start subscription)が行われます。サイト運営側で発生する作業は基本的になく、完了時にはメールで通知が届きます。
ステップ5:管理画面からSpeed Kitを有効化する
ステップ5までチェックが付いたら、Shopify管理画面上でSpeed Kitを「Activate」します。
この操作をもって高速化が開始されます。有効化後は管理画面のOverviewから稼働状況とページビュー消化量を確認でき、必要に応じて「Deactivate」で停止することも可能です。停止してもサイト自体は通常どおり動作します。
Speed Kitの評判は? ─ 第三者レビューサイトでの評価
BtoBソフトウェアのレビュープラットフォームG2では、Speed Kitは62件のレビューで5点満点中4.2の評価です。内訳は5つ星が54%、4つ星が37%、3つ星が8%となっています(2026年9月時点)。
なお、Shopify App Store上のアプリ評価はレビュー件数が少なく、G2の評価とは母集団が異なります。また、他のレビューサイトでは低い評価も公開されており、評価は一様ではありません。導入判断にあたっては、自社と近い規模・業態のサイトでの実測値を確認することをおすすめします。
日本のShopify事業者が導入前に確認すべき3つのこと
HOLYの結果をそのまま自社に当てはめることはできません。導入検討の段階で確認しておきたい論点は3つあります。
① 高速化の対象ページはどこか
HOLYの事例で高速化されたのは、コレクションページと商品ページです。カート・チェックアウト・アカウント画面は対象外でした。自社の売上がどのページの体験に依存しているかを先に整理しておくと、期待値のズレを防げます。
② 効果検証をどう設計するか
速度改善の提案で最も多い反論は「速くなったのは分かるが、売上に効いたのか」です。HOLYの事例が説得力を持つのは、PoC期間にコンバージョン率を統計的に検証しているためです。日本での導入においても、ABテストツール(VWO/AB Tasty など)と組み合わせ、速度改善そのものを検証可能な形にしておくことを推奨します。
③ トラフィック規模が要件に合うか
Speed Kitは月間ページビュー数に基づく契約形態で、大規模トラフィックのサイトを主な対象としています。導入検討の前に、自社の月間ページビュー規模を確認してください。

出典:Speed Kit公式「HOLY Case Study」
まとめ
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- ドイツ最大級のShopifyストアHOLYは、テーマ・カート・チェックアウトを改修せずにLCPを1,110ms→590ms(47%)改善した
- 商品ページは60%改善、サーバー応答時間は80%(323ms)短縮。PoCではコンバージョン率が相対+1.35%(信頼水準90%で有意)
- Shopifyでは、一般的なサイトで必要になるタグとサービスワーカーファイルの設置がアプリのインストールで自動完了する
- ただし「インストール=高速化」ではなく、Baqend側のカスタムインテグレーション(約1週間)を経て有効化する流れになる
- 日本のECサイトでもボトルネックはLCPに集中しており(CWV良好は55.7%、LCPのみ68.3%)、改善余地は依然として大きい
よくある質問
Q. Shopifyのテーマを変更する必要はありますか?
- 必要ありません。HOLYの事例でも、テーマの作り直しやリプラットフォームは行われていません。カート・チェックアウト・アカウント画面にも変更を加えていません。
Q. インストールすればすぐに速くなりますか?
- いいえ。インストールで完了するのはタグとサービスワーカーファイルの設置までです。その後、Baqend側でストアごとのカスタムインテグレーションを実施し(約1週間が目安)、管理画面で有効化した時点から高速化が始まります。
Q. 導入後に停止することはできますか?
- 可能です。Shopify管理画面のSpeed Kitアプリから「Deactivate」を選択すると停止できます。停止後もサイトは通常どおり動作し、Speed Kitによる高速化のみが無効になります。
Q. 速度改善が売上に効いたかどうかは、どう確認すればよいですか?
- ABテストツールを併用し、高速化した体験とそうでない体験を比較して検証する方法が確実です。HOLYの事例でも、PoC期間にコンバージョン率の差を統計的に検定しています。
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ギャプライズでは、Shopifyストアを含むECサイトの表示速度診断と、Speed Kit導入時の効果検証設計についてご相談を承っています。まずは現状のLCP・TTFBがどの水準にあるかの確認からご案内できます。 |
【出典】
Speed Kit「How HOLY made one of Germany’s largest Shopify shops 47% faster with Speed Kit」(2026年9月28日公開)/Google Chrome UX Report 2026年7月データセット/G2「Speed Kit Reviews」/ギャプライズ調査「国内EC446サイト 表示速度実測」(2026年7月)
【編集部より】
株式会社ギャプライズはSpeed Kit(Baqend GmbH)の日本国内正規販売パートナーです。本記事は同社製品の取り扱い事業者として執筆しています。記載の数値はすべて開発元が公開した事例データに基づくもので、同等の効果を保証するものではありません。
今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。



