レコメンドの限界を、会話型AIで越える。アウトドア用品EC・BergzeitがCVR3.4倍を実現したShopping Muse事例
ECサイトのレコメンド機能は、「これが欲しい」と目的が決まっているユーザーには効果を発揮しますが、「何かいいものないかな」とウィンドウショッピング感覚で訪れるユーザーには、十分に対応できない場合があります。
500以上の信頼あるブランドを扱う、欧州最大級のアウトドア用品ECサイトBergzeit(ベルクツァイト)も、まさにこの壁にぶつかっていました。
同社はすでに、閲覧履歴や好みに応じて商品をおすすめするパーソナライズ機能を導入しており、大きな成果を上げていました。
しかし同社が次に目指したのは、その一歩先でした。
「何が欲しいか、まだ自分でもわからない」人には、どう応えればよいのでしょうか。
レコメンドは、意図に基づくシグナル(閲覧履歴や購買データなど)にはうまく対応できていましたが、まだ探し方すら定まっていない、インスピレーションや専門家のアドバイスを求めている買い物客には、十分に応えられていませんでした。
そこでBergzeitは、店頭スタッフのような会話でギアを提案してくれるAIアシスタントをサイトに導入しました。
その結果、アシスタントを実際に利用した顧客のコンバージョン率は平均の3.4倍、ユーザーあたり収益は4.9倍に達しています。
本記事は、Bergzeitが導入したこの会話型AIショッピングアシスタント「Shopping Muse」の事例を紹介します。
▼本事例の概要
・課題:既存のレコメンドでは対応できない、”相談したい、インスピレーション探し”のユーザーへの対応
・施策:会話型AI「Shopping Muse」を導入し、顧客が自然な言葉で相談しながら、関連商品を含む提案を受けられるようにした
・成果:エンゲージしたユーザーのCVRが3.4倍、収益が4.9倍、AOVが約30%増加
※Shopping Museは、Mastercardが提供するパーソナライゼーションプラットフォーム「Dynamic Yield」の機能の一つです。
※本記事はMastercardが提供する「Dynamic Yield」の公式事例を、同社の許可を得て翻訳・編集し公開しています。
目次
課題:レコメンドを入れてもなお届かない”相談”というニーズ
ひとつのECサイトに訪れるユーザーといっても、その来訪シーンは一様ではありません。
Bergzeitではすでに、閲覧履歴や購買データといった行動データをもとに、パーソナライズされたレコメンドで高い成果を上げていました。
一方で、「インスピレーション探索」のように「なにかいいものはないか」と探しに来たユーザーには、行動データに基づくレコメンドだけでは十分に応えられませんでした。こうしたユーザーには、言葉にして初めて伝わるニーズがありました。
ドロップダウンメニューやフィルター、固定のカルーセルといった従来型のEC体験も、同じ理由でこうしたニーズには応えきれていません。
本来なら、店頭スタッフが会話の中で「こういう用途なら、こちらはどうですか」と柔軟に提案してくれる場面です。しかしオンラインでは、その柔軟さを再現する手段がありませんでした。
欧州のリテーラーの中でもAIを活用した購買体験はまだ珍しく、Bergzeitはここに大きな機会があると考えました。
施策:会話型AIアシスタント「Shopping Muse」の導入
Shopping Museは、生成AIを活用した会話型アシスタントです。ユーザーが「雨の日のトレイルラン用ギア」といった自然な言葉を入力したり、画像をアップロードしたりするだけで、アクティビティやスタイル、用途に合わせた商品を提案してくれます。
すでにDynamic Yieldのパーソナライズ機能を導入していたBergzeitは、この会話型アシスタントを欧州でいち早く取り入れた企業の一社です。
Bergzeitは、商品フィードを変更したり新しい業務フローを構築したりすることなくShopping Museを導入しました。あらかじめ用意されたテンプレートを組み合わせ、受け答えのトーン、提案ロジック、見た目をブランドに合わせて設定しました。
こうして立ち上がったShopping Museは、トップページや商品一覧、商品詳細ページといった、顧客が実際に行き来する主要な場所に設置されています。
▼トップページに設置されたShopping Museの入り口。AIの登山・アウトドアアドバイザーとのチャットへ誘導している。

商品詳細ページを見ているときには、その商品と相性のいいギアやアクセサリーを「まとめて揃える」提案として合わせて表示します。
▼商品詳細ページでジャケットを見る顧客に、Shopping Museが合わせるパンツやシューズを提案している画面。
ページ上のどこからでも呼び出せる通知ウィジェットのおかげで、顧客は買い物のどの段階でも気軽に相談できるようになりました。
裏側では、深層学習によるモデルが顧客の好みや会話の文脈を読み取り、提案の精度を高めています。Bergzeitは素材やフィット感、スタイルといった商品ごとの細かい情報を追加で読み込ませることで、どの言語で会話しても自社らしいトーンが伝わる体験に仕上げました。
ダッシュボードで成果を確認しながら、何を改善すべきかもチームで把握できる状態になっています。
成果:エンゲージしたユーザーのCVRが3.4倍に
Shopping Museで実際にエンゲージ(クエリ入力や商品クリック)したユーザーは、全体平均と比較してコンバージョン率(CVR)が3.4倍、ユーザーあたり収益が4.9倍、閲覧ページ数が5.5倍という結果でした。
“Mastercard Dynamic Yieldのチームは、期待以上の成果を出してくれました。Shopping Museは汎用的なツールではなく、まるで私たち自身が接客しているかのように感じられます。AIが私たちのブランドのトーン、お客様の属性、そして独自の販売スタイルに合わせてしっかりと調整されているからです。”
―Annette Zeidler氏(Bergzeit Webショップ責任者)
これらの結果は、「専門家に相談するような会話型購買体験」が、ユーザーの購買意欲や購入時の安心感を高めていることを示唆しています。
Bergzeitは現在、特定の目的を持つ「指名買いユーザー」と「あてのない探索型ユーザー」の双方に最適なアプローチを提供するため、従来の検索機能と会話型AIを組み合わせた「ハイブリッド型体験」の構築を進めています。
▼「黄色いストライプのレインコート」は通常検索では該当ゼロ件だが、Shopping Museは意図を汲み取り、鮮やかなレインジャケットを提案している。

まとめ
Bergzeitの事例は、パーソナライゼーションを継続的に改善し続ける重要性を示しています。対応しきれていないユーザー層を特定し、次の施策を打ち出し続けることこそが、確実な成果へとつながります。
・会話型AI「Shopping Muse」の導入により、エンゲージしたユーザーのCVRが3.4倍、収益が4.9倍、AOVが約30%向上
・既にレコメンドで成果を出していた企業でも、”インスピレーション探索”のユーザーには別のアプローチが必要
自社のECサイトにも、検索した結果「欲しいものが見つからない」と離脱しているユーザーがいるかもしれません。
そうした課題を会話型AIでどう解消できるか、まずは資料でご確認ください。
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勝見 理恵
2012年ギャプライズ入社。リスティング広告/SNS広告など活用したWeb集客支援、ContentsquareやABテストツールのカスタマーサクセスを経て、現在は自社マーケティングを担当。
