ABテストの再構築からパーソナライズへ – オープンハウスが目指すユーザー体験の最適化|ABTasty導入事例
不動産業界におけるデジタルマーケティングの重要性が増す中、オープンハウス様では2017年頃からABテストを活用したウェブサイトの改善に取り組んできました。その過程で得られた知見と課題を踏まえ、より本質的な改善を目指して新たなステージへと歩みを進めています。2024年11月にABTastyの導入を決定し、本格稼働の準備が整った2025年2月、銀座にあるオープンハウス様のオフィスにて、同社が目指す顧客体験の最適化について話を伺いました。
目次
オープンハウスグループについて
オープンハウスグループ様は、日本国内で急成長を遂げた総合不動産企業です。新築住宅や注文住宅、土地探しまで幅広いサービスを提供し、2023年には売上高1兆円を超え、不動産業界で第4位の規模を誇っており、なお成長を続けています。デジタルマーケティングの分野においても、積極的な取り組みを展開しています。
株式会社オープンハウスグループ Web サイト
https://openhouse-group.co.jp/
株式会社オープンハウス Web サイト
https://oh.openhouse-group.com/
インタビュー対応者
矢内 裕樹 様(マーケティング部 Web戦略グループ 係長)
福島県出身。前職の広告代理店では多様な業種の企業HP・アプリなどのディレクターとして経験を積む。その後、2022年オープンハウスグループへ中途入社。入社後はマーケティング本部で戸建事業やマンション事業のWeb施策を担当。趣味は野球、旅行、ダイビング。
山中 さくら 様(マーケティング本部 Web開発グループ)
東京都出身。2023年オープンハウスグループに新卒入社。入社後はマーケティング本部で自社HPや広告のクリエイティブデザイン、パフォーマンス改善施策に従事。趣味はファッション、スノーボード。
※役職は2025年2月時点のものになります。
UI・UXの改善活動の転換点とABテストの再構築
「2023年春、各ページでの改善効果は数値として表れていましたが、果たしてそれが本当の意味でのビジネス成果に繋がっているのか。経営層からそんな問いかけがありました」と、同社のデジタルマーケティング担当者は当時を振り返ります。
確かに、個々のページでのコンバージョン率は向上していました。しかし、Google Analyticsでセッション全体の動きを確認すると、必ずしもサイト全体での効果は期待通りではありませんでした。「これまでの施策は、部分最適化に留まっているのではないか」。その問題意識から、同社はABテストの見直しを決断します。
「一度立ち止まり、私たちが本当に目指すべき改善とは何かを考え直しました。その過程で、複数ページにまたがるテストの必要性や、より精緻なデータ分析の重要性を再認識したのです」
インハウスでのデジタルマーケティング強化
オープンハウス様の特徴の一つが、デジタルマーケティング施策の内製化への強いこだわりです。「インハウスで改善を進めることで、スピーディーな意思決定と実行が可能になります。また、事業特性を熟知したチームが改善を主導することで、より実効性の高い施策を展開できます」
新たなABテストツールの選定においても、この方針が重要な判断基準となりました。「以前のツールでは1ページ単位でのテストに制限があり、複数の施策を同時に実施することが難しかったのですが、ABTastyでは複数ページにまたがるテストや多変量テストが可能です。また、直感的なインターフェースにより、エンジニアと非エンジニアが協働しやすい環境が整いました」
同社では、ツール選定時に複数の選択肢を検討したといいます。「特に重視したのは、インターフェースのシンプルさと、非エンジニアでも扱いやすい実装機能です。ABTastyは必要な機能を過不足なく備えており、GA4との連携も容易です。何より、テスト実装までのスピード感が格段に向上しました」
独自の会員獲得戦略とその効果
同社の特徴的な取り組みとして、「一気通貫した顧客体験の提供」が挙げられます。顧客ニーズを起点とした「マーケットイン」戦略に基づき、マーケティングから営業、契約に至るまで、全てのプロセスを顧客視点で設計しているのです。
デジタルマーケティングを駆使し、Web広告などを通じて顧客との接点を創出。顧客一人ひとりのニーズに合わせた最適な住まい探しをサポートするため、同社ではデータの一気通貫管理を実現。「流入時の興味 × 流入後のサイト体験 × 問合せ後のオフライン体験 × 購入に至ったかのステータス」を掛け合わせた分析環境を構築しています。
Web広告の流入分析からWebサイト上の顧客行動分析、SFAによる商談・成約状況の把握まで、オンライン・オフラインのあらゆる顧客接点を統合的に分析。そして、これらのデータを活用することで、顧客の心情変化やタイミングを的確に捉え、最適な情報提供とサポート体制を構築しているのです。
不動産という高額商材において、顧客は「安心」と「後悔しない」ことを強く求めます。だからこそ、同社は一気通貫のデータ分析に基づき、顧客に寄り添いながら信頼関係を築き、理想の住まい探しを支援するのでしょう。
このように、マーケティングから営業まで、各チームが連携し、顧客情報を共有することで、スムーズな顧客対応を実現。顧客体験を重視したビジネスモデルを確立することで、同社は競争優位性を築き、持続的な成長を遂げていると言えます。
段階的な展開とパーソナライズ戦略
会員獲得において成果を伸ばしてきた同社は、常に未来を見据え、さらなる成長に向けた次の一手を模索しています。「これまでの改善で会員獲得の基盤は整ってきました。しかし、いずれは成長の頭打ちが来ることも予想されます。その先を見据え、より適切なユーザーに、より適切なコンテンツを届けるパーソナライズ戦略の構築が重要だと考えています。その想いを共に実現できる、最良のパートナーがABTastyでした。」と、同社の担当者は語ります。
その戦略を実現するため、同社ではABTastyの活用を段階的に拡大しています。「まずは戸建て領域での改善を進め、そこで得られた知見を他の領域にも展開していく予定です。特に注力しているのは、ユーザーの行動履歴に基づいた最適化です」
具体的な取り組みとして、検索履歴に基づくセグメント別の対応を進めています。「例えば、新築戸建ての検索履歴がある顧客は契約率が高い傾向にあります。一方で、賃貸や中古物件を検索されているお客様には、それぞれの志向に合わせた提案が必要です。ABTastyを活用することで、こうしたセグメント別の最適化を効率的に実現できると考えています」
今後の展望
「デジタルマーケティングの内製化により、より迅速な改善サイクルを実現できています。今後は広告との連携を強化し、入口から出口まで一貫した顧客体験の最適化を目指していきます。特に、広告からの流入経路に応じたコンテンツの出し分けや、検索履歴に基づいた推薦の精度向上など、更なるパーソナライズ化に取り組んでいく予定です」
このように語る同社の取り組みは、不動産業界におけるデジタルマーケティングの新たな可能性を示しています。テクノロジーの活用と、インハウスでの改善活動の両輪で、更なる進化を遂げることが期待されます。
ギャプライズ担当者の声
インハウス化を目指し、最大級のメンバー体制でプロジェクトを運営し、API連携やBigQuery連携を活用したABテストだけでなくマーケティング全体の管理を行おうと取り組まれている先進的な目標をサポートできることを大変うれしく思っております。
導入直後、通常はツール理解をしきるまでには2~3ヶ月かかりまずがオープンハウス様からは導入1ヶ月で、最多のQA問い合わせをいただいており、メンバーの皆様の意欲と探究心の高さを感じており、今後の成果が非常に楽しみです。
今後とも何卒よろしくお願いします!

今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。