ユナイテッドアローズが実証、商品ページの表示速度が約1秒改善 |Speed Kit導入事例
株式会社ユナイテッドアローズは、ECサイトの表示速度改善に向けたSpeed Kitの実証実験において、商品詳細ページのLCPで934ミリ秒、商品一覧ページで1,119ミリ秒という大幅な速度改善を達成しました。Speed Kitは、既存のウェブシステムに大きな変更を加えることなく導入できる表示速度改善ソリューションです。独自のキャッシング技術により、特に画像やコンテンツの多いECサイトで効果を発揮します。
本実験は2,210万PVを対象に実施され、特に購買動線における重要なページで顕著な改善効果が確認されました。実験結果からは、ページの読み込み時間短縮により、ユーザーの離脱リスクを低減し、よりスムーズな購買体験を提供できる可能性が示されています。ドイツのハンブルク大学との共同研究に基づいて開発されたSpeed Kitは、すでに欧州の主要ECサイトで採用実績があり、今回の実証実験は日本市場における有効性を確認する重要な取り組みとなりました。
本記事では、既存システムを活かしながら実現した具体的な改善施策と、その効果についてご紹介します。
【Mobile】
FCP(First Contentful Paint):71.1%改善(0.874秒短縮)
LCP(Largest Contentful Paint):57.4%改善(0.926秒短縮)
【Desktop】
FCP(First Contentful Paint):70.6%改善(0.828秒短縮)
LCP(Largest Contentful Paint):71.8%改善(0.918秒短縮)
目次
課題背景:表示速度による機会損失への対応
eコマースサイトにおいて、ページの表示速度は離脱率やコンバージョン率に大きな影響を与えます。Nielsen Norman Groupの調査によると、ページの読み込みが1秒を超えるとユーザーの集中力が途切れ始め、3秒を超えると多くのユーザーが離脱してしまう傾向があります。
スピードとCVRの相関関係図
ユナイテッドアローズのECサイトでも、特に商品画像を多く扱う商品一覧ページや商品詳細ページにおいて、表示速度の改善が課題となっていました。既存のシステムでは画像の最適化や配信の効率化に限界があり、新たなソリューションの導入を検討することになりました。
実証実験の成果:商品ページで顕著な改善効果
2024年10月19日から11月7日にかけて実施された実証実験では、2210万PVを対象に、Speed Kitの効果を検証しました。その結果、特に商品関連ページで顕著な改善が確認されました。
商品詳細ページタイプの結果
商品詳細ページのLCP結果(単位ms)
商品詳細ページでは、Largest Contentful Paint(LCP)が1.447秒から0.513秒と65%の改善がなされ、ページの主要コンテンツがより迅速にユーザーに届けられるようになりました。
商品詳細ページのFCP結果(単位ms)
モバイルユーザーにとって特に重要な指標である First Contentful Paint(FCP)モバイルの測定値では、1.309秒から0.325秒と71%の改善がされ、初期表示の待ち時間が大幅に短縮されました。
商品一覧ページでも同様に、LCPが61%改善されました。多数の商品画像を扱うページでありながら、スムーズな表示を実現しています。これにより、ユーザーはストレスなく商品を閲覧できるようになりました。
スピード改善を継続的な成果につなげるために
ウェブサイトの表示速度改善は、一時的な施策ではなく継続的な取り組みとして捉えることが重要です。特にeコマースサイトでは、新商品の追加や施策の展開により、コンテンツは日々更新されています。そのため、一度達成した表示速度の改善効果を維持し、さらに向上させていくための体制づくりが不可欠となります。
ユナイテッドアローズの実証実験では、この課題に対する具体的なアプローチが示されました。まず、Speed Kitは既存のシステムに大きな変更を加えることなく導入できる設計となっています。これにより、日々の業務に影響を与えることなく、継続的な速度改善を実現できます。実験期間中も、ABテストツールなどの既存ツールとの互換性が確認され、通常の施策展開を妨げることなく運用が可能でした。
さらに重要な点として、パフォーマンスを継続的にモニタリングし、改善を支援する体制が整備されていることが挙げられます。24時間体制のモニタリングシステムにより、速度低下の予兆を早期に発見し、対応することが可能です。また、四半期ごとのパフォーマンスレビューでは、新たな改善機会の特定や、具体的な最適化提案が行われます。
このように、技術面での親和性と運用面でのサポート体制を組み合わせることで、表示速度の改善を一過性の取り組みではなく、持続的な競争優位性として確立することが可能となります。特に、新機能の追加や大規模なキャンペーン展開時にも、パフォーマンスを維持できる体制を整備できる点は、実務上大きな価値があると言えるでしょう。
ユーザー行動への影響
実証実験では、表示速度の改善がユーザー行動に与える影響について詳細な分析が行われ、ページの表示速度とコンバージョン率の間に明確な相関関係が確認されました。
Speed Kit導入後のページでは、コンバージョン率の向上が観測されました。これは特に、商品詳細ページから購入に至るまでの導線において顕著でした。表示速度の改善とコンバージョン率の間には正の相関が確認され、表示速度が向上するほどコンバージョン率も改善する傾向が見られました。
また、カート追加率においても同様の傾向が確認されました。より速くページが表示されることで、ユーザーがストレスなく商品をカートに追加できるようになり、購買行動の促進につながることが示されています。
特にモバイルユーザーにおける効果が顕著でした。従来、モバイル環境ではネットワーク状況による表示速度のばらつきが課題となっていましたが、Speed Kitの導入により、より安定した表示速度を実現。これにより、モバイルユーザーの購買体験が大きく改善されました。
この結果は、業界の一般的な知見とも整合性があります。Google社、ハンブルグ大学、Speed Kitによるプロジェクトであるspeedhub.orgは、ページ速度に関する研究を収集・整理しており、表示速度の改善がコンバージョン率向上に寄与すると結論付けています。
検討企業様向けのポイント
Googleが定める「良好」な表示速度の基準として、Largest Contentful Paint(LCP)が2.5秒以内という指標があります。しかし、画像を多用するeコマースサイトにおいて、この基準を達成することは容易ではありません。特に商品詳細ページや商品一覧ページでは、高品質な商品画像の表示が必須であり、国内でも30%近いサイトでLCPが2.5秒を超過している現状があります。
そのような課題に直面されている企業様、あるいは同業他社と比較して表示速度面での改善余地を感じられている企業様にとって、Speed Kitは有効な選択肢となり得ます。ユナイテッドアローズの実証実験では、既存システムを活かしながら、商品詳細ページで65%、商品一覧ページで61%という大幅な速度改善を実現しました。
特に以下のような状況にある企業様は、速度改善による効果が期待できます。
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- モバイルでのLCPが1.0秒を超えているページが存在する
- 商品画像の表示に時間がかかり、ユーザーからの改善要望がある
- 大規模なシステム改修を行うことなく、段階的な改善を目指している
- Core Web Vitalsのスコア改善を検討している
なお、Speed Kit導入の検討に際しては、まず現状のパフォーマンス計測から始めることをお勧めします。Chrome User Experience Report(CrUX)やGoogle Search Consoleのデータを確認することで、改善が必要なページや領域を特定することができます。その上で、重要度の高いページから段階的に検証を進めることで、効果的な速度改善を実現できる可能性があります。
業界の基準値が知りたい場合には、弊社で調査したECサイト表示速度ランキングをご活用ください。
まとめ
ユナイテッドアローズにおける実証実験は、eコマースサイトの表示速度改善における具体的な成果と、その実現方法を示しています。商品詳細ページでの65%、商品一覧ページでの61%という改善効果は、特筆すべき成果といえます。
さらに重要な点として、この改善が既存システムを活かしながら実現できたことが挙げられます。24時間モニタリング体制による安定的な運用と、継続的な改善を支援する体制が整備されていることで、長期的な効果が期待できます。
eコマース事業者様におかれましては、まずは重要度の高いページから段階的に検証を進めることで、効果的な速度改善を実現できる可能性があります。表示速度の改善は、ユーザー体験の向上を通じて、ビジネスの成長を支援する重要な要素となるでしょう。
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今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。