DoritosのUGCマーケティング戦略がスーパーボウルの歴史を作った理由
アメリカで最も人気のあるスポーツ番組・スーパーボウル。激しい試合と華やかなショータイムの間に流れるCM枠は世界最高額です。多くの企業が派手なCMを流す中、2007年、食品メーカー・Doritosは、スーパーボウル史上初のUGC広告(※1)を放映。それから10年間にわたって、ファンの作るCMを採用し続けました。
なぜ、Doritosは、UGC広告を使うことで成功したのでしょうか。
実際のCM事例をもとにご紹介していきます。
(※1)UGC(User-generated-content):ユーザーによるSNSへの投稿、ECサイトの商品レビューなど、企業側ではなく消費者であるユーザーによって制作・発信されるコンテンツ。このケースではファンによって作られたCMのこと。詳しく知りたい方は「売上に直結!「UGC」とは?マーケティングで重要な理由と活用事例」をご覧ください。
目次
1.スーパーボウルとは?
スーパーボウルとは、アメリカで最も人気のスポーツである、アメフトプロリーグ・NFLの頂上決戦です。NFLは、NFCとAFCの2つに分かれていて、このスーパーボウルではそれぞれの王者が戦います。
スーパーボウルの間に流れるCMの放映権料は世界最高。Reutersの記事によると、今年は、30秒のCM枠を獲得するのに、最大560万ドル(約6億円)かかりました。
毎年世界最高額を更新続けるほどスーパーボウルのCM枠が人気の理由は、視聴率40%越え、視聴者数約1億人と、番組を見ている人の量が桁違いだからです。より多くの人々の注目を集めるために、各企業は旬な有名人を起用したり、最新技術を駆使したりと、かなり力を入れてCMを作成します。
今年は、Google、Amazon、そして初参加のFacebookといった、IT企業や、TOYOTA、Hyundaiといった自動車メーカー、Pringlesのような食品メーカーまで、様々な業界の大手企業がCM枠を獲得しました。
▼宇宙を舞台とした壮大なスケールのCM、炭酸水ブランド・SodaStream
2.ファンのCMが全米4位に 大成功したUGC戦略とは?
スーパーボウル×UGC
このような、華々しいスーパーボウルのCM枠に一石を投じたのが、食品メーカー・Doritosでした。
Doritosは2007年に、史上初のUGCスーパーボウル広告を放映。その年のスーパーボウル広告ランキング4位を獲得しました。
UGCを集めるために、Doritosは、ファンから自作のCMを募集し、最優秀作品をスーパーボウルの枠で流すことを約束した大会・Crash the Super Bowlを開催。2016年までの10年間、ファンは何千ものビデオを応募し、スーパーボウルで放映されることを目指しました。
Doritosは、広告を打つ上で大切なことの1つ・人々の記憶に残ることを、スーパーボウル×UGCという斬新さで叶えました。
UGCからインサイトを掴む
Doritosは、UGCを集めることで、顧客である作り手の言語や性格、欲求、ニーズといった、ターゲット層やインサイトを独自に把握することができました。
▼Doritosの最初のスーパーボウルでのUGC広告
▼2015年のCrash the Super Bowlで優勝したCM
2つのCMを見比べると、交通手段やファッションなどの時代の変化がわかります。また、どちらのCMも男女の恋愛を軸にしているといった、変わらない傾向も見えてきます。
時代が変わるにつれて、顧客の趣味や環境は変わりますが、長年の募集の中で、DoritosのUGCには、赤ちゃんが多い、犬が多い、男が女を口説く、同じコメディアンによるユーモア、といった変わらない傾向があることも明らかになりました。
このように、顧客の変わっていく部分と変わらない部分を、UGCを通して理解することができます。これらの声は、今後のマーケティング戦略の参考にもなります。
UGCで長い期間話題に
素人のCM作成には、かなりの時間がかかります。その間、参加者は、友人や家族、多くのファンと会話をしながら、作品を作り上げます。こういったいくつもの会話は、コンテストと製品への情熱も含み、長い間話題となっていました。
また、CM作成中に、参加者が色々と検索することで、ロングテールキーワードを構築し、自然にSEO対策が行えます。
UGCマーケティング戦略は、顧客のために、彼らが運営しています。そのため、自分たちが作り出す作品に対して、自主性と責任を持っています。
さらに、Doritosは、スーパーボウルでの放映権だけでなく、賞金100万ドルやプライベートスイート席での観戦チケットといった、かなり豪華な賞品をつけることで、素晴らしいコンテンツの生成を動機づけました。
このように、大会を顧客主体で盛り上がるようにすることで、商品を、人々の間で長く話題にすることができます。
他社の例
DoritosのUGCキャンペーンは、他のブランドがマネしたくなるほどの大成功でした。
例えば、ビールブランド・Newcastle Brown Aleは 、Doritosのスーパーボウルのコンテストに参加しました。
NewcastleのパロディはDoritosのキャンペーンをからかうものでしたが、他のブランドはUGCマーケティングに触発され、自分たちで試してみることにしました。
自動車メーカー・Ford Lincolnは、”長旅中に起きた最もクレイジーな出来事は何ですか?” とファンに質問する#Steer the Scriptキャンペーンを実施。収集したUGCからインスピレーションを得て、2013年のスーパーボウルのCMを作成しました。
3.まとめ
DoritosのUGCマーケティング戦略では、ターゲット層や顧客のインサイトを独自に把握することができました。調査することなく、顧客の方から教えてくれるので、企業にとってはかなり心強い戦略です。
今回のケースのような、大規模なプロモーションでなくても、UGCの効果は出ています。
UGCは、購入者の商品レビューやツイート、撮影してInstagramにアップされた写真や動画なども含みます。そういったコンテンツを収集・分析するだけでなく、ECサイトや広告に活用することも効果的です。
日本では、ECサイトにUGCを取り入れることで、レビュー収集率150%改善、購入者の52.7%がレビューに接触と、UGCが力を発揮した事例があります。
詳しくはこちらをご覧ください。
レビュー収集率150%改善!UGCで「リアル」をユーザーに届ける
また、UGCを取り入れて顧客との関係を強化し、売上2割がUGC経由、コンバージョン率を270%向上させた事例も。
売上2割がUGC経由、スノーピークが目指す「1対1でつながる人間味のある自社EC」
UGCマーケティングを効率的に進めるツール・YOTPOはこちらから。
※この記事は「Why Doritos’ Marketing Strategy Made Super Bowl History」を翻訳・加筆修正したものです。
MarTechLab編集部
このブログでは、ABテスト、サイト改善、UI/UXデザイン、広告最適化、インフルエンサーマーケティングなど、多岐にわたるトピックを取り扱っています。また、業界の専門家にインタビューを行い、実際の事例や成功事例を紹介することで、読者に有益なインサイトとアイデアを提供しています。