【SOMPOダイレクト様インタビュー】「なぜ?」の解明が、改善の質を変えた。月15本の高速ABテストを支えるContentsquare活用と、データドリブン文化醸成の軌跡
本記事では、SOMPOダイレクトがどのようにデータドリブンなアプローチでWebサイトの顧客体験を革新し、ビジネス成果に繋げたのか。その具体的な軌跡と、貴社のWebサイト改善に役立つ実践的なヒントを深く掘り下げます。
「デジタルで保険を体験することが当たり前の世界を作り、お客さまの豊かな人生の実現をサポートし続ける存在」。このパーパスを掲げ、ダイレクト保険業界のトップランナーとして走り続けるSOMPOダイレクト損害保険株式会社(以下、SOMPOダイレクト)。同社は2024年10月に社名を変更し、新たにSOMPOブランドとして顧客体験(CX)の革新を加速させています。
同社の公式サイト、そして主力商品である「おとなの自動車保険」のサイトは、本記事で語られるデータドリブンな改善活動のまさに最前線である。
-
- SOMPOダイレクト 公式サイト: https://www.sompo-direct.co.jp/
- おとなの自動車保険 公式サイト: https://www.sompo-direct.co.jp/otona/
その心臓部となっているのが、ABテストツール「ABTasty」と顧客行動分析ツール「Contentsquare」を両輪とした、データドリブンなサイト改善体制です。多いときには月15件以上という圧倒的な量のABテストをこなしながら、近年はその「質」と「勝率」の向上に舵を切っています。その変革の裏には、単なるA/Bパターンの優劣比較に留まらない、顧客行動の「なぜ?」を深く探求する姿勢がありました。
ABTasty導入から2年、ギャプライズとのパートナーシップはどのように深化したのか。そして、新たに導入されたContentsquareは組織に何をもたらしたのか。外部の知見を積極的に取り入れる「UXカイゼン道場」といった取り組みは、彼らをどこへ導くのだろうか。
同社のデジタルコミュニケーションを牽引する山本様、大城様、荒井様に、この2年間の軌跡と、データが拓く次世代の保険体験の未来図について詳しく伺いました。

マーケティング部デジタルコミュニケーション課長:山本 俊樹 様(右)、課長代理:大城 薫 様(左)、副長:荒井 望実 様(中央)
目次
【課題】高速PDCAの限界を突破:SOMPOダイレクトが求めた『なぜ?』の深掘り
Contentsquare導入以前は、どのような課題を感じていましたか?

山本様:以前は、ユーザー行動の全体像を把握することが難しく、効果的な改善策を立案するのに苦労していました。定量的なデータが不足していたため、改善策の優先順位付けも曖昧でしたね。例えば、見積もりフォームの入力途中で離脱するユーザーが多いことは分かっていても、その原因を特定できず、効果的な対策を打てずにいました。

荒井様:ABTastyでABテストを高速で回せるようになり、半年間で43本もの施策を実施できました。ただ、その一方で、仮説が個人の感覚や経験に頼りがちで、施策の優先度も属人的な判断に依存してしまうことがありました。ABテストで勝ちパターンを見つけても、「なぜ勝ったのか」が分からないと、その学びを次に活かせません。量をこなせるようになったからこそ、一つひとつの施策の「質」と「勝率」をどう高めていくかが次の課題でした。
サイト改善の取り組みとパートナーシップ
ギャプライズとのパートナーシップについてお伺いします。高速なABテストの実装を支える上で、どのような価値を感じていますか?

大城様:これだけの数をこなしていて障害が発生していないという点はすごいことだと思います。機会損失はもちろんですが、万が一障害が起きると、影響のあったお客様への連絡対応が発生します。対象者の抽出から文面の作成、連絡まで、その対応に時間が割かれ、次の施策を考える時間が失われてしまう。不要な時間を生み出さない、という意味で非常に価値があると思っています。
データ活用のブレークスルー:Contentsquareが『感覚』を『根拠』に変えた3つの発見
Contentsquare導入で、特に印象的だった発見を教えてください。
大城様:お客様が継続手続きを行う画面で、特定のリンクをクリックするとCVRが下がるという課題を発見できたことです。Contentsquareを導入するまでは、そのリンクをクリックしたユーザーがその後どう動いているかまで追えませんでした。分析してみると、お客様は元の画面に戻れず、手続きがやり直しになっているのでは、という仮説が立ちました。リンクの開き方を変えるというシンプルな施策で、この課題は解決できました。
荒井様:マイページ登録画面の改善が挙げられます。Contentsquareのジャーニー分析(※)で、約半数の方が同じ画面を2回以上繰り返していることが判明したんです。従来のツールでは、最終的に目標画面にたどり着いたかは分かっても、そこに至るまでにループしていたことは把握できませんでした。この発見から、入力エラーを抑える改善を行い、エラー率を約10%削減することに成功しました。
山本様:課題だった見積もりフォームの離脱については、フォーム分析機能で入力項目ごとの離脱率を分析した結果、特定の項目で離脱が集中していることが判明しました。そこで、入力項目の順番を入れ替え、必須項目を減らすなどの改善を実施した結果、離脱率を大幅に減少させることに成功しました。

※ジャーニー分析イメージ:ユーザーがサイト内をどのように回遊したかを可視化する機能。離脱やループ(同じページを繰り返す行動)など、非効率な動きを特定できる。
データが組織の共通言語に:SOMPOダイレクトにおける部門間連携と文化変革
データ活用は、チームや組織にどのような変化をもたらしましたか?
大城様:開発案件の優先度決めが的確になりました。以前は、期待効果のロジックが非常に“ふんわり”していて、説得力に欠けていたんです。Contentsquareのインパクト分析を使えば、具体的な期待効果を算出できるので、開発部門に対しても「これだけのインパクトがあるので」と根拠を持って話せるようになり、話が通りやすくなったと感じます。
山本様:チーム内の議論の仕方が大きく変わりましたね。以前は「多分こうなってるから、こうじゃないか」という属人的な感覚での議論が多かったのですが、今は根拠となるデータを皆で共有し、同じデータを見ながら話せるようになりました。特にセッションリプレイなどで“現場そのもの”を直接見せると、「なるほどね」と話がすっと進むことが多いです。データが「共通言語」になったことで、顧客の真の課題に集中できるようになったと感じています。
社内外を巻き込むオープンな改善活動
社外の知見も積極的に取り入れる「UXカイゼン道場」のような取り組みもされていますね。
山本様:はい。外部の方に自社のサイト課題について議論いただく「UXカイゼン道場」のような取り組みは、我々にとっても非常に刺激になる良い機会でした。社内だけでは出てこない視点や、他社様の改善プロセスに触れることは、我々の“当たり前”を見直す上で大変参考になります。
この「UXカイゼン道場」は、弊社とギャプライズが共催し、参加者の皆様に弊社のリアルなサイトデータを分析していただく実践的なワークショップです。Contentsquareでインサイトを発見し、ABTastyで検証するという改善サイクルを、社外の多様な視点を交えて行うこの試みから、多くの斬新なアイデアが生まれました。
※当日の熱気あふれるイベントの様子は、以下のレポート記事で詳しくご紹介しています。
未来への展望と確信
データとAIを活用して、どのような未来の保険体験を目指しますか?
山本様:私たちのパーパスである「デジタルで保険を体験することが当たり前の世界を作り、お客さまの豊かな人生の実現をサポートし続ける存在」を実現するため、AIによるパーソナライズ化を加速させていきます。目指すのは、スマホを通して、まるでお客様専任のコンサルタントに相談しているかのような、安心感のあるデジタル保険体験です。お客様一人ひとりのニーズに合わせた情報提供やサービス提供を実現し、最適なWeb体験を提供できるよう、改善を継続していきます。
2年前に戻れるとしたら、当時のご自身に何を伝えますか?
大城様:Contentsquareを…。すぐに入れるべき、ですね(笑)。
一同:(笑)
山本様:それくらい、データを見て仮説を立てる精度が全然変わってきましたね。
聞き手:高島、今本
【まとめ】SOMPOダイレクト事例から学ぶWebサイト改善の4つの成功ポイント
今回のSOMPOダイレクト様のインタビューからは、多くのWeb担当者が明日から活かせるであろう、4つの重要なポイントが見えてきました。
-
- 「なぜ?」の探求が改善の質を飛躍させる:ABテストの勝ち負け(What)だけでなく、その背景にある顧客行動の「なぜ?(Why)」を深掘りすることが、施策の質と勝率を高める鍵となります。量をこなすフェーズから、質を追求するフェーズへの移行には、顧客行動を可視化する仕組みが不可欠です。
- データは最強の「共通言語」になる:セッションリプレイのような視覚的なデータは、部門間の認識のズレを埋め、客観的な事実に基づいた建設的な議論を可能にします。「感覚」や「経験」による対立をなくし、組織全体が顧客視点で課題を捉えるための強力な武器となります。
- インパクトの定量化が組織を動かす:改善施策の「期待効果」を具体的な数値で示すことは、開発リソースの確保や他部署の協力を得る上で極めて重要です。データに基づいた優先順位付けは、属人性を排除し、再現性の高いマーケティング活動の土台を築きます。
- 高速な改善サイクルは「守り」と「攻め」の両輪で成り立つ:「障害ゼロ」で安定的にテストを回せる環境(守り)があってこそ、チームはトラブル対応に追われることなく、新たな仮説の構築やデータ分析といった創造的な活動(攻め)に集中できます。安定した基盤が、改善のスピードと質の両方を支えます。
まとめ
月間15件以上という高速なABテスト体制を構築しながらも、「なぜ勝つのか、なぜ負けるのか」という根本原因の解明に課題を感じていたSOMPOダイレクト様。その壁を打ち破ったのが、顧客行動を可視化するContentsquareの導入でした。
これまで見えなかった「画面のループ」や「意図しない離脱」といった顧客の“生の声”をデータから掴み取ることで、同社のサイト改善は「量」から「質」へと大きく舵を切りました。さらに、データという客観的な「共通言語」は、開発部門との連携を円滑にし、組織全体にデータドリブンな文化を根付かせる原動力となっています。
「2年前に戻れるなら、すぐに入れるべき」。担当者が語ったこの一言は、顧客の「なぜ?」を理解することが、いかにビジネスを力強く前進させるかを物語っています。AIによるパーソナライズという未来を見据える同社の挑戦は、すべてのWeb担当者にとって、データ活用の真の価値を教えてくれるでしょう。
今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。

