Magento 2のECサイトがCVRを2.33%改善|RidersDealがSpeed Kitで実現した表示速度改善の全記録
目次
この記事の要点
欧州の乗馬用品ECサイト「RidersDeal」は、Magento 2で構築された既存ストアに一切手を加えず、JavaScript 2行の設置のみでSpeed Kitを導入しました。その結果、2週間のPoC(実証実験)でユーザーCVR(コンバージョン率)が相対値で+2.33%向上し、統計的有意性も確認されています。表示速度指標であるLCPは適用ページ全体で377ms(約43%)短縮、商品詳細ページでは547ms短縮しました。
リプラットフォームもテーマ改修も行わずに、この規模の改善が出た点が本事例の核心です。以下、課題・打ち手・成果の順に見ていきます。
RidersDealはどのような企業か?
RidersDealは、乗馬用アパレル・馬具・厩舎用品を幅広く扱う、欧州有数の乗馬用品ECサイトです。長年かけて構築した豊富な品揃えを武器に、ridersdeal.com(Magento 2で構築)を通じて日々数千人のライダーにサービスを提供しています。
膨大なカテゴリーページと商品詳細ページを回遊する顧客が中心のため、この規模のショップにとってカテゴリーページと商品詳細ページの表示速度は決定的な意味を持ちます。まさにこの2つの画面で、買い物客は「回遊を続けるか、離脱するか」を判断するからです。
画像が多く機能も豊富なMagento 2ストアフロントでは、読み込み時間が1秒増えるごとに、購入までの導線に摩擦が加わります。RidersDealは顧客の期待に応えるべく、既存のMagento 2スタックには手を触れないまま、ページ配信を高速化しショッピング体験を滑らかにすることを目的にSpeed Kitを導入しました。
【訳注】Magento 2とは
Adobe傘下のオープンソースECプラットフォーム(現在の名称はAdobe Commerce/Magento Open Source)。拡張性が高くカスタマイズ自由度に優れる一方、拡張機能(エクステンション)やテーマを積み重ねるほどフロントエンドが重くなりやすいという構造的な特性があります。日本国内でも中〜大規模EC、越境ECを中心に採用例があり、「速度改善はしたいが、基幹に手を入れる改修は避けたい」という悩みは共通しています。
導入担当者のコメント
Magento 2では、スクリプトやテンプレートが1つ増えるたびに、顧客が最も長く滞在するページの読み込み時間が積み上がっていきます。Speed Kitに納得したのは、既存ストアの“上に乗る”形で動く点です。Magentoのバックエンドもテーマも変更せず、JavaScript 2行で統合できる。そしてPoCが、速度の向上がCVRを押し上げることを明確な数字で証明してくれました。ITチームにとって、スタックへのリスクがゼロで、かつ測定可能な成果が出るという組み合わせは、まさに理想的です
Katharina Dorn 氏 ─ RidersDeal IT Manager
主要な成果指標
| 指標 | 改善幅 |
| ユーザーCVR(相対値) | +2.33% |
| LCP(適用ページ全体) | −377ms |
| LCP(商品詳細ページ) | −547ms |
| ページインプレッション(相対値) | +2.07% |
課題:Magento 2の「重さ」はどこに現れるのか?
RidersDealが直面していたのは、機能豊富なMagento 2ストアフロント特有の課題です。すなわち、買い物客が最も長く滞在するカテゴリーページと商品詳細ページに、負荷が集中していたという点にあります。
ridersdeal.comのこれらのページには、拡張機能、サードパーティスクリプト、画像を多用したテンプレートが積み重なっていました。RidersDealはこの中核となる回遊面の読み込み時間を明確に改善したいと考えていましたが、条件がありました。
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- リプラットフォーム(基盤の乗り換え)はしない
- Magentoテーマの作り直しはしない
- Magento側の開発工数は増やさない
日本のEC担当者にとっての示唆
この「やりたいことは明確だが、触れる範囲が限られている」という状況は、日本のEC事業者にも極めて頻繁に見られます。速度改善の必要性は共有されていても、実際にテーマやテンプレートの改修に踏み込もうとすると、開発リソースの確保、リグレッションテスト、繁忙期の凍結期間といった壁に当たり、優先順位が下がっていくという展開です。本事例の価値は、改善効果そのものだけでなく、この壁を迂回するアプローチを取った点にあります。
打ち手:Speed Kitは何をしたのか?
Speed Kitは、既存のMagento 2ストアの上に乗る軽量な最適化レイヤーとして追加されました。アーキテクチャの変更なし、Magentoのバックエンドやテーマの改修なし、JavaScript 2行での統合です。
その中核にあるのが「Predictive Preloading(予測プリロード)」です。訪問者が次に開く可能性が最も高いページを予測し、バックグラウンドで静かに読み込んでおく機能を指します。この結果、遷移先ページの大部分がキャッシュから直接配信されるか、クリック前に完全にレンダリング済みの状態になります。
得られるのは、明確に速い回遊体験です。とりわけカテゴリーページと商品詳細ページの間を行き来する場面(滞在時間とコンバージョンを左右する動線)で効果が顕著に表れます。しかもその間、Magento 2はこれまでと寸分違わず動き続けます。
【訳注】Predictive Preloadingとは
従来のCDN(コンテンツ配信ネットワーク)が「リクエストされたものを速く返す」仕組みであるのに対し、Predictive Preloadingは「リクエストされる前に用意しておく」という発想です。ユーザーの行動データから次の遷移先を予測し、先回りしてコンテンツを取得しておくため、体感速度としては「クリックした瞬間に表示される」状態に近づきます。カテゴリー → 商品詳細という遷移が繰り返されるECサイトとは、特に相性の良いアプローチと言えます。
【編集部注】 原文にはSpeed Kitの技術基盤(AWS上の13サービスによる構成)に関する解説も含まれていますが、本記事では割愛しています。技術構成の詳細は原文をご参照ください。
成果:速度改善はCVRにどう跳ね返ったか?
PoCフェーズの結果、LCPは適用ページ全体で377ms(約43%)、商品詳細ページでは547ms短縮し、ユーザーCVRは相対値で+2.33%向上しました。この+2.33%という数値は、90%の信頼水準で統計的に有意であり、偶然のばらつきによるものではないと確認されています。
パフォーマンス改善:LCP(Largest Contentful Paint)
PoCフェーズにおいて、Speed KitはMagento 2ストアフロント上で実質的なLCPの改善をもたらしました。改善幅が最も大きかったのは、ショップの中心的な回遊・意思決定の場であるカテゴリーページと商品詳細ページです。

【訳注】LCPとは
Largest Contentful Paint。Googleが定義するCore Web Vitals(ユーザー体験の中核指標)の1つで、「ページ内で最も大きなコンテンツ要素が表示されるまでの時間」を指します。ユーザーが「このページは読み込まれた」と感じるタイミングの近似値として使われ、Googleは2.5秒以内を「良好」としています。検索順位への影響も公表されているため、SEO文脈でも重視される指標です。
ビジネスインパクト:PoCフェーズのCVR分析
Speed Kitは、Magento 2ストア上で2週間のPoCテストフェーズを実施しました。Speed Kitを適用したグループと、適用していない対照群(コントロールグループ)を直接比較する形式です。なお、このPoCでは売上(Revenue)は測定対象に含めておらず、速度がコンバージョンと回遊の深さに与える影響に焦点を絞っています。
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- ユーザーCVR:+2.33%(相対値)
- ページインプレッション:+2.07%(相対値)
統計的有意性:ユーザーCVRの+2.33%(相対値)の改善は、90%の信頼水準で統計的に有意です。この改善は偶然の変動に起因するものではありません。
この検証設計をどう読むか
本事例で注目すべきは、数値そのものよりも検証の設計です。同一期間・同一トラフィック内で適用群と対照群を並走させるA/Bテスト形式を取っているため、季節要因やキャンペーンの影響を排除できています。速度改善の効果検証は「施策前後の比較」で語られがちですが、その方式ではセール時期や広告出稿の変動が混入し、純粋な速度の寄与を切り出せません。
また、売上を測定対象から意図的に外している点も誠実な設計です。2週間・90%信頼水準という条件下では、客単価のばらつきが大きい売上指標で有意差を出すのは難しく、より安定するCVRとページインプレッションに絞ったと読めます。自社で速度改善のPoCを設計する際の参考になるはずです。
まとめ:RidersDealの事例から何を学べるか
ページ速度の向上は、RidersDealにおいて「ストアのコンバージョン率向上」へ直結する要素となりました。実際、対象ページのLCPは377ms(約43%)削減されています。最も顕著な改善点としては、商品詳細ページやリスティングページにおける遷移先ページの大部分をあらかじめ読み込む(プリロードする)ことで、カタログ内の回遊体験が目に見えて滑らかになったことです。その間も、既存のMagento 2ストアは一切手を加えられることなく稼働し続けています。
PoCフェーズが示したビジネスインパクトは明白です。ユーザーCVRの相対値+2.33%向上、90%信頼水準での統計的有意性。Speed Kitは現在、RidersDealのMagento 2パフォーマンススタックの恒久的な一部となり、すべての訪問者に高速でシームレスなショッピング体験を提供しています。
日本のマーケティング担当者への示唆
本事例から、日本のEC・マーケティング担当者が持ち帰れるポイントを3点に整理します。
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「基幹に触れずに速くする」という選択肢
表示速度の改善は、画像の最適化やスクリプト・テンプレートの抜本的な整理といった「内製によるサイト改修」を想起させがちです。しかし、これらは膨大な開発リソースと社内調整のコストを要し、着手すること自体が困難なケースも少なくありません。本事例のように既存のスタックに手を加えず、その上に最適化レイヤーを重ねるアプローチは、制約の多い環境下でも着実な成果を狙える極めて現実的な選択肢と言えます。
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改善効果は「回遊面」に集中投下すべき
本プロジェクトにおいて、商品詳細ページおよびカテゴリーページでLCPの改善幅が最大となりました。トップページの表示速度は注目されがちですが、実運用においてユーザーが最も長く滞在し、コンバージョンを決定付けるのはこれら中核の回遊面です。この事実は、最適化の優先度を検討する際の極めて重要な示唆と言えます。
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数値の「相対値」と「統計的有意性」を確認する
ここで言及されている「+2.33%」という成果は、コンバージョン率そのものが2.33ポイント上昇したことを指すのではなく、元の値に対する「相対的な改善幅」が2.33%であったことを示しています(具体例:CVR 2.00%が約2.05%へ向上)。サイトの取引規模によっては極めて大きなビジネスインパクトをもたらしますが、パーセンテージの絶対値表記と混同しないよう注意が必要です。また、データの信頼性を担保する要素として「信頼水準」が具体的に公開されている点も、本事例の特筆すべき特徴です。自社のベンチマークとして他社事例を精査する際、この「相対値か絶対値か」および「統計的有意性の有無」の2点は、必ず確認すべき重要な視点と言えます。
Speed Kitの導入をご検討の方へ
ギャプライズは、Speed Kitの開発元であるBaqend社と提携する国内唯一の正規パートナーです。事前診断から実証実験(PoC)の実施、その後のパフォーマンス最大化に至るまで、専門チームが日本語で一貫したコンサルティングを提供しています。
今回ご紹介したRidersDeal社の事例のように、「既存システムを維持したままの高速化」が貴社サイトでどの程度可能かは、構成やアクセス状況に依存します。具体的なポテンシャルを確認したいマーケティング・システム担当者の方は、お気軽に下記よりご相談ください。
▶ Speed Kitに関するお問い合わせ・速度診断のご依頼
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出典・権利表記
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- 原文:How RidersDeal lifted its conversion rate by +2.33% with Speed Kit
- URL:https://www.speedkit.com/customers/ridersdeal
- 発行元:Baqend社(Speed Kit)
- 原文公開日:2026年7月6日
本記事は、Baqend社の許諾を得て翻訳・掲載しています。訳注および「日本のマーケティング担当者への示唆」の各節は、ギャプライズによる補足であり、原文には含まれません。記事中の数値・成果はすべてRidersDeal社のPoC環境における実測値であり、同様の効果を保証するものではありません。
今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。
