【MA配信データ全公開】リサイクルリードからMQLを生成する方法

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こんにちは、ギャプライズカスタマーサクセスの原澤です。

  • 総配信者数:144,565 *ユニークではない
  • 全体平均ユニーク開封率:29.93%
  • 全体平均ユニーク開封率 中央値:26.93%
  • 全体平均ユニークCTR:2.37%
  • 全体平均ユニークCTR 中央値:1.48%

こちらが、1年間リサイクルリードへの配信施策全てにおける平均値です。

インサイドマーケティングにおいて重要な要素の一つに”リサイクルリード(※)”があります。

アポを打診したが断られたり、商談までたどり着いたがタイミングが合わず失注になったりと、リサイクルとなった背景は様々です。

弊社ではこのようなリサイクルリードが大量にある中、受注に繋がるリード生成手法に課題がありました。

そこで、本稿ではこの課題に対し、筆者が当時インサイドマーケターとしてチームに参画してから成果を出すまでの1年間に渡る、0からのMQL(=Marketing Qualified Lead)(※)構築フローおよびマーケティングオートメーション(以下:MA)による開封率とCTRの生々しい実データをご紹介します。

成果としては立ち上げから約1年で、受注率および平均案件単価がインバウンドリード(※)よりも高い有益リード生成に成功しました。

筆者自身、始めは何から手をつけたらいいのかわからない。またMAを回しても、その開封率やCTRが他社と比較して高いのか低いのかわからず、悶々とした日々を過ごしていました。

本稿が、これからMAを導入検討している方、リサイクルリードからMQLの生成手法に困っている方など、全インサイドマーケターの一助となれば幸いです。

(※リサイクルリード:メールアドレスは知っているものの、過去3ヶ月以上お客様からのお問い合わせおよび自社からのアプローチがないリード

(※MQL:リサイクルリードからMAのナーチャリングによって自社製品に興味を抱き、また受注できる可能性があるとマーケターが判断したリード

(※インバウンドリード:お問い合わせなど、お客様から自社にアドレスを登録を能動的に行いインサイドセールスが初期対応するリード

1.成果

まず、成果の部分です。

具体的な金額は記載できないので、今回は粗利の平均額を、インバウンドリードからの受注とMQLからの受注とで比較しました。

結果、インバウンドリードと比較して、MQLからの平均粗利額は2.1倍高かったです。

また、インバウンドリードの中でも数が比較的多い、販売ツール無料版お試しユーザーによるリードと受注率を比較すると、24%MQLの方が高かったです。

要は、粗利も高く、受注率も高いリードを生成できた、ということです。

ちなみに、当社で最も粗利額、受注率の高いリードは「有償版お問い合わせ」のリードでした。

このように、眠っているリードからでも受注金額の高いリード生成を作ることは可能です。受注したリードの中には、最後のコンタクトが2年前のものもありましたから、アプローチしないのはもったいないです。

2.MQL生成する前に用意しておくべきモノ

ここからは、リサイクルリードのナーチャリングに向け、下記の情報をまとめていきます。

  • 必要なモノ
  • 目的/ゴール/数値予測の整理

必要なモノ

リサイクルリードそのものはもちろんですが、ナーチャリングする上で下記が必要になってきます。

絶対必要なもの

  • リサイクルリード(名刺情報、メールアドレス etc)
  • MAツール(Pardotマルケト etc)
  • 配信コンテンツ(記事、ホワイトペーパー etc)

あると便利なもの

各ツールの解説等は、本稿で割愛します。

「あると便利なもの」は、MQL生成において始めからは必要ないかと思います。後々、分析スピードの向上や、リード数が増えてきた時のスクリーニングにおいて非常に便利なツールとなります。

ここでMQL生成における結論を述べますが、最終的に重要となるのはコンテンツの量と質に尽きます。

ここから様々な配信手法等の経験談を記載しますが、結局、リードの質をあげるには質の高いコンテンツを多く揃えることが必要となってきます。

本稿では、質の高いコンテンツを用意している前提で「どのようにして効率的にリードの質をあげるか?」について述べます。

目的/ゴール/数値予測の整理

筆者のチームの目的は「質の高いMQLを生成すること」におき、KPIは各月のMQL数と、MQLからの案件化数を追いかけていました。

一時期、受注数も追いかけることがありましたが、これはフィールドセールスのスキルに依存する部分もあるためゴールには置かず、あくまで計測するまでに留めました。

また、MQL数値予測の整理は下記の図を参考にしてください。

目標受注金額から逆算し、各フェーズの現状数値を整理します。

この数値整理を行うことで目標達成の予測ができるだけでなく、どこがボトルネックなのか、ないし、どこの数値を向上させると目標達成に近づくかを瞬時に判断できます。

3.Who:ターゲティング

本稿において最も重要なパートです

ターゲットがズレると非効率な施策運用になるだけでなく、最終的な売上向上に繋がることはまずありえません。時間をかけてでも、ターゲットを固めきることが大事と考えています。

ターゲティングの前提

具体的な手法をご紹介する前に、ターゲティング概念の定義を整理します。

ターゲティングの概念は様々ありますが、私はユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建した森岡氏の書籍に記載されているターゲティング手法を参考にしました。

重要なのは「コアターゲット」「戦略ターゲット」「全ての消費者」の3つに棲み分けをすることです。

上図引用元:USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

この際、条件が2つあります。

  • コアターゲットと戦略ターゲットの間に明確な違いを作る
  • 戦略ターゲット以外の消費者は自社からお金をかけて狙わない

詳しくは後述しますが、筆者の場合「業界」と「当期純利益高」の2軸で境目を作りました。

これにより優先度が作れるため、MAでアプローチするセグメントを効率的かつクリティカルに仕分けられました。

結果、ターゲティングしたリードからはスムーズに受注できました。

既存企業分析/市場分析によるターゲット作成手順

では、具体的にどのようにターゲティングしたのか?そのステップの一例をご紹介します。

  1. 既存顧客企業に様々な情報を付加する
  2. ARR(=年間経常利益)が高い順に並べ、大きく3つのカテゴリーに区切る
  3. ARRの高い上位2つのカテゴリーと、最下位のカテゴリーの違いを分析する
  4. 3で得た特徴を元に、ターゲットとする業界と企業を選定

一つずつ、具体的な手法を解説していきます。

1.既存顧客企業に様々な情報を付加する

既存顧客企業名をスプレッドシートに全て書き出し、そこに下記の情報を付加しました。

  • 更新日
  • 使用歴とエンゲージメント
  • ARR=年間計上利益
  • 売上高
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 当期純利益
  • キャッシュフローのタイプ
  • 業界分類
  • 業種
  • 従業員数
  • 平均年収
  • 平均年齢
  • 特色

上記の情報を全ての企業に付加することは難しいです。非上場企業は情報が少ないため、付加できない企業もありました。

情報を付加する際、ひたすらググってかき集めるのは骨が折れるため、下記の便利なツールを使いました。

SPEEDAとFORCASは契約が必要ですが、バフェットコードは無料のWebサービスであり、上場企業に関しては簡単に財務情報が取得可能です。

2.ARRが高い順に並べ、大きく3つのカテゴリーに区切る

ここからは仮説を交えながら分析していきました。 ARRの高い順にソート。おおまかに3つに区切りました。

3つに区切った理由はシンプルに「ARRの高い企業が属する業界と特色を同様に持っている見込み顧客」はターゲットになると考えたためです。

また、ARRが低い企業が属する業界と特色は、ターゲットとして想定しつつもコアではなく戦略ターゲットとして優先度を下げるべきと考えました。

ただし、ARRの低い企業が属する市場規模が大きい場合は、特例としてコアターゲットに含めました。

3.ARRの高い上位2つのカテゴリーと、最下位のカテゴリーの違いを分析する

ここはかなり泥臭い分析になります。

付加した情報ごとにカテゴライズしたり、似ている特色を持った企業群の共通項を探したりと、とかく多角的にカテゴリー毎の違いを探究しました。

一人ではしんどい作業のため、メンバー3人で2日に渡って分析。そこで固定概念にとらわれず、純粋なる”違い”をブレストし、まとめ上げました。

結果、当期純利益高と業界に違いを見出し、ターゲットを絞り上げることに成功しました。

4.3で得た特徴を元に、ターゲットとする業界と企業を選定

ある一定の当期純利益高を超えている企業、かつ、ARR上位企業が属する業界の条件に当てはまる企業を選定し、これをコアターゲットと定義しました。

ただし、コアターゲットはボリュームが少ないです。そのため戦略ターゲットに関しては、コアターゲットと同じ業界かつ、当期純利益高の基準値を低めに設けました。

これにより、ターゲットリストが完成します。

4.What:何を届けるか?

顧客のニーズは何か?

ターゲットが定まり、いよいよコンテンツの配信といきたいところ。

ですが、手当たり次第にコンテンツ配信やコールアプローチを行っても相手に響かない他、最悪の場合、自社の営業スタイルを嫌われてしまい、リサイクルリードにならず焼畑(※)状態になる恐れさえあります。

(※本稿における焼畑の定義:手当たり次第リードに手を出し、リサイクルリードにも使えず、結果的にリード枯渇状態になること)

そのため「顧客は何を求めているのか?」を徹底的に深掘りしました。

当社では幸いなことに、インサイドセールスとフィールドセールスが営業時のヒアリングメモをSalesForceに残してくれていました。なのでこれらをテキストマイニングにかけ、ニーズを窺わせる言葉を抽出。

すると、そこから読み取れる顧客のニーズは面白いほどに似通っており、相手が求めている情報や言葉を選定できました。

これをコンテンツ作成からメールの件名などに応用し、効率的に顧客とのエンゲージメント向上を図りました。

5.How:どのようにしてリーチするか?

コンテンツを揃える

ターゲット、届けるメッセージを決めたならば、いよいよ具体的なコンテンツ生成になります。

よく「コンテンツはどれくらいあれば十分か?」という質問をもらうことがありますが、結論、多いに越したことはありません。

また計測が非常に難しいのですが 、”コンテンツの質”も非常に重要です。

筆者の場合は、MA配信結果、GoogleAnalytics、ヒートマップを使って”コンテンツの質”を評価しました。

すると、CTRやページ離脱率から明確に差が見え、多用すべきコンテンツとそうでないものを仕分けることができました。

また、コンテンツ作成者にありがちなのが「こんなに時間をかけて作ったのだから、必ずユーザーに好まれる」といった工数に比例してコンテンツの質が良くなるという説。

あくまで当社調べですが、コンテンツ生成にかけた工数と顧客のエンゲージメントは比例しませんでした。

例えば、開封率、CTR、ページ遷移率が異様に高かった記事は、筆者が4時間で作ったもの。逆に、10時間以上かけた力作なのに効果が薄かった事例もありました。

MQL生成開始前から仮説の一つとして持っていましたが、結論、適した相手に、適したタイミングで、適したコンテンツを配給しなければ、顧客のエンゲージメントが向上することはありません。

故に、緻密なターゲット分析が必須なのはもちろんのこと、MAの配信タイミングを工夫したり、多岐にわたるコンテンツを準備することは施策の成功に直結します。

コンテンツの種類

配給できるコンテンツタイプは下記を揃えていました。

  • 記事
  • ホワイトペーパー
  • オンラインセミナー
  • パーソナライズメール

各コンテンツタイプは、顧客のフェーズや温度感によって出し分けていました。4点目のパーソナライズメールについての詳細は、本ブログにて詳細記事を執筆予定です。

ここでポイントとなるのが、コンテンツに対する顧客の反応を分析することです。

例えば、記事ならGoogleAnalyticsでエンゲージメントを見るのはもちろんのこと、ヒートマップによってよく見られている文章や画像を確認。

オンラインセミナーは開催後のアンケート回答率向上に注力し、何回も改良を加えました。セミナーに活用したスライドの無料配布を条件にアンケート回答の催促をしたところ、回答率は平均して9割以上でした。

言わずもがな、施策の質向上においてお客様の声、反応は非常に価値のあるありがたい要素です。なので、如何にしてWin-Winの関係を保ちつつ、お客様の声を頂けるかに注力しました。

記事を作成する時は必ずSEOを意識しつつ、加えて導線を確保する

お客様の声を元にコンテンツ作成することはもちろんですが、同時に、SEOによるオーガニックユーザーの獲得も図りました。

さらに、ホワイトペーパーを大量生産することにより、記事への流入からホワイトペーパーダウンロードフォームに遷移させ、コンタクトの獲得を図った導線を確保してリード取得も行います。

これらはコア/戦略ターゲットのニーズに合わせた内容および言葉を使い、GoogleAnalyticsとヒートマップの分析によって最適なコンテンツ配置と導線を合理的に作りました。

6.MAの配信方法

短期間に複数コンテンツを集中して送る

ここから、具体的なMA配信方法の解説に入ります。

手法の結論ですが、5~6営業日の間に3~4つのメールを送り、開封数とクリック数の掛け合わせで高いものをMQLと定義し、インサイドセールスにパスしていました。

配信予定のイメージ図は下記です。

筆者参画以前は、全リサイクルリードへ自動的に回しているメール配信に反応があったユーザー、または、新しくできたコンテンツを単発でマスに送って反応があったユーザーにアプローチするといった手段をとっていました。

しかし、この手法だと下記のデメリットがあります。

  • 1クリックの反応だけだと「たまたま見た」と言う顧客が多く、温度感が低い
  • マスで配信すると、結果的に焼畑状態になりやすい
  • コンテンツの質がよかった時に多くの顧客が反応するが、インサイドセールスが瞬時に対応できない

これらの理由から、単純にマスへコンテンツを配信するのは非効率と結論づけました。

言い方はよくないですが、ナーチャリングしたリードは”生もの”と捉えるべきです。新鮮なうちにアプローチしなければ温度感が低くなる他、せっかくの良質なコンテンツも使い捨てになってしまいます。

そのため下記の点に注意してMAを活用し、成果を出しつつ効率的にMQL生成ができました。

  • MAの配信対象者数はインサイドセールスの可動工数から逆算する
  • コンテンツは分析に分析を重ね、効果の高いものから配信
  • 1つのコンテンツクリックだけでは弱い!
  • その週に必ずあたり切る!だから工数計算が大事

配信数はインサイドセールスの可動工数から逆算する

ありがちなのが、所有しているコンタクト全てにメールを送ってしまうケースです。これは設定が楽で工数がかからないメリットがありつつ、反応した全てのホットリードに当たりきれないトレードオフの関係にあります。

またタスク量や社内事情等で、インサイドセールスの可動工数は週によって変動します。

そのため、始めのMA配信対象者数(=必要配信セグメント数)は、翌週のインサイドセールスの可動工数から逆算して決めます。

例えば、下記のパターンです。

必要コールから逆算していき、MQLの生成率を加味してセグメント数を決めます。

MQLの生成率はコンテンツによって変わってしまうため、最悪の事態である「MQLが足りない」ことを想定し、30リードほど余る想定でセグメント数を設定しました。

ちなみに、筆者が行った施策全体の平均MQL生成率は1.69%でした。

例えば5,000人のセグメントに複数メールを送信した際、インサイドセールスがコール対象とできるのは84.5人(=5,000 x 1.69%)となります。

ただし、これは施策開始当初も含めたの平均値です。最適化が進み、1年間の後半は平均2.69%まで引き上げ、さらに効率よくMQL生成を行えました。

コンテンツは分析に分析を重ね、効果の高いものから配信

コンテンツの質は、前述した通り様々なツールの分析結果を加味して判断しています。連続して送る時、1通目のメール開封率が高いと、2通目も高いことが分析した結果わかりました。

これは仮説ですが、1通目のコンテンツが良いと2通目以降の期待値も上がるため、開封率が上がるのではないかと考えてます。

全4通とも非常に質の高いコンテンツを送りたいところですが、優れたコンテンツを大量に揃えるのは容易ではありません。

なので、送る順番としては下記が多かったです。

  • 1通目:質の高いコンテンツ
  • 2通目:普通のコンテンツ
  • 3通目:普通のコンテンツ
  • 4通目:非常に質の高いコンテンツ

“普通”の表現が抽象的ですが、後述する平均開封率およびCTRよりやや高いコンテンツを配置していました。

4通目はターゲットによりますが、平均CTRより1~1.5%高いコンテンツを用意し、最後の最後にエンゲージメントを高めます。

一つのコンテンツクリックだけでは弱い!

全てのメール配信が終わったら、インサイドセールスに渡すリードの棲み分けを行います。この時の方程式は下記です。

MQL=開封数 x クリック数

4通送っているため、1ユーザーあたりの最大ユニーク開封数は4です。また、ユニーククリックも最大4。

故に、最もエンゲージメントが高いと思われるホットなリードは、4つ全てのメールを開封してかつ全て見ているユーザーです。このリードはコールが繋がると「実は連絡しようとしてました!」とポジティブな反応が度々ありました。

ここからは、下記の順番でレベル分けしていきます。

(エンゲージメント高い)*開封数、クリック共にユニーク

  • Level8 開封数:4回 x クリック数:3回
  • Level7 開封数:4回 x クリック数:2回
  • Level6 開封数:4回 x クリック数:1回
  • Level5 開封数:3回 x クリック数:3回
  • Level4 開封数:3回 x クリック数:2回
  • Level3 開封数:3回 x クリック数:1回
  • Level2 開封数:2回 x クリック数:2回
  • Level1 開封数:2回 x クリック数:1回

(エンゲージメント低い)

「開封数:1回 x クリック:1回」は、前述した通り「たまたま見た」の可能性が高いので、MQLとして定義することはあまりなかったです。

なぜ連続したコンテンツがいいのか?

これは完璧な検証ができていないので仮説の域を出ませんが、「ユーザーが良い意味で悩み、解決手段を知りたいから」ではないかと考えています。

メッセージ性の異なる複数コンテンツを投げると「あれもこれも不安だな…」ないし「この課題はクリアだが、こっちは悩みだな…」と悩みやすくなり、コールした時に「少し話を聞いてみよう」という態度変容になるのではないかと推測しています。

ちなみに、この連続配信手法は知人の企業でも同様のことを行い、成果が出ていました。セミナーでこの手法を話されていたので、ある程度再現性があるのかなと思います。

その週に必ずあたり切る!だから工数計算が大事

リストを抽出したら、抽出した週に全てあたり切ります。前述した通りMQLは”生もの”みたいなものなので、新鮮なうちにリーチする必要があります。

では、コールがつながらなかったらどうするか?

ここは各インサイドセールスの判断に任せてはいましたが、全体方針としては「翌週は追っかけコールはしない」方向性でした。

理由は下記です。

  • 毎週熱いMQLが生成されるので、無理に追いかける必要がない
  • 翌週には温度感が下がっている可能性が非常に高い

特に2点目。

単純ですが、やはり人間は土日を挟んだ翌週には気持ちや興味が変わっているものです。こちらも分析しましたが、翌週追いかけた際のアポイント獲得率は低かったです。

そのため、リードが生成できたらとにかくスピード感をもった対応を心がけることが重要です。

7.MAデータ実録

毎週、MQLの分析

週ごとに抽出したMQLは下記の数値をスプレッドシートに張り出し、毎週分析して改善点を洗い出していました。

  • セグメント数
  • メール到達数
  • MQL数
  • 架電数
  • 不在数
  • 通電数
  • 獲得アポイント数
  • ハード/ソフトバウンスレート
  • リスト生成率
  • アタック不要率
  • 架電生成率
  • 架電に対する獲得率
  • 架電に対する不在率
  • デモ獲得率

特に、架電に対する不在率が一時期急激に上がり、非常に悩みました。

リスト抽出までのプロセスは調子がよかった時と変えていないほか、MQL生成率もよかったので原因がわからず苦労したのを覚えています。

答えは出ていませんが、時期要因、市場要因といった外的要因ではないかと考えています。

仮に外的要因の場合は自社でコントロールがきかないため、マーケターの筆者としてはMQLの生成率あげること、またオンラインセミナーやホワイトペーパーなど明確にCVが起こる施策を増やすなどして、とにかく顧客とコミュニケーションが取れる改善に注力しました。

確率を出す

MQL生成の分析が終わったら、毎週のアポイント数、案件化数、受注数を元に「目的/ゴール/数値予測の整理」にて作成した表に修正をかけます。

ポイントは「確率を出す」ことです。

なぜなら、自社の数値計画に対して、現場が確度の高い予測値を報告しなければ、精度の高い経営戦略に紐づけることができないからです。

そのため、予測値の土台となる確率は、出せる事項においては全て揃えるべきです。

ただし、MQL生成において最終的には計測しにくいコンテンツの質が数値向上の鍵になります。例えば、アポイント獲得に関して、各インサイドセールスの質が勝負になります。

つまり「数値では図りづらい抽象的な部分が確率向上の鍵を握っている」事実は認識した上で、MA生成に取り組まなければなりません。

そのため、マネジメントや社員研修など、MA生成施策以外の部分にも目を配る必要があります。

これらの不確定要素を加味しつつ、意思決定の軸となる「確率」は全て抽出し、ゴールから逆算して必要なアクションを日々考え、実行していまいた。

MAの数値結果

ここからは、筆者が1年間で実施したMA配信の結果を包み隠さず公開していきます。

筆者自身「MA 平均開封率」などでググり、自身の施策と比較しては安心したり、時には不安になったりと、悩み果てていました。

そんな方々にとって一つの比較軸となれば嬉しいです。では、いきます。

全体平均

まず、私がターゲットとしたリサイクルリードへの配信施策全てにおける平均値です。

  • 総配信者数:144,565 *ユニークではない
  • 全体平均ユニーク開封率:29.93%
  • 全体平均ユニーク開封率 中央値:26.93%
  • 全体平均ユニークCTR:2.37%
  • 全体平均ユニークCTR 中央値:1.48%

ターゲティングした場合の最高値

次に、ターゲットに対して適したコンテンツを送った場合の最高値です

  • 全体平均ユニーク開封率:65.85%
  • 全体平均ユニークCTR:14.63%

総評

全体平均だと、開封率は30%、CTRは2.3%といったところです。

開封率に関しては、一旦20%越えれば良しとしていました。10%台だった時は、件名やターゲットを変えるなど工夫し、それでもいまいちならば、そのコンテンツを使うのをやめました。

CTRに関しては、最低でも1.5%は超えなければきついなと考えていました。CTRはコンテンツやターゲットによってかなりブレます。

実際、平均値と中央値には開きがあります。時には開封率が高いのにCTRが0%ということもありました。これは件名とメール内の文章に対して期待値のズレがあったためかもしれません。

「ターゲティングした場合の最高値」に関してですが、これはシンプルに化粧業界のターゲットに、化粧業界の市場調査レポートを配信した時に記録したものです。

他にも、人材業界に人材業界のコンテンツを送ると、開封率が50%前後、CTRも10%前後と高かったです。

故に、Aを求めている人にはAを、Bを求めている人にはBを届ける、といったシンプルな施策が当たりやすののではないかと考えています。

開封率をあげるために、件名はとにかくABテストを繰り返しました。ここを改善すればMQL生成率も上がり、結果的にアポイント数も増えるため小さい改善も重要です。

またCTRの向上に関しては、抽象的な要素が大きく関与します。バナーデザイン、キャッチコピー、ライティング、デザイン要素など、ここもテストを繰り返した結果改善が多く見られました。

メールは基本的にHTMLメールを使い、テキストのメールは使いませんでした。理由は下記です。

  • テストした結果、テキストよりHTMLメールの方がCTR高かった
  • 一つデザインを作れば、あとはバナーと文章をすり替えるだけで簡単
  • テキストメールの場合、日本のしきたり上「~様」が必要となり、元のリードデータが間違っていた場合失礼にあたるリスクがある

特に3点目。ホワイトペーパー等でCVした時の名前記載に、ひらがなやカタカナ、ローマ字を使うユーザーが度々います。

この時、テキストメールで「~様」を自動でMAと連携させる際「Tanaka様」や「たなか様」となってしまう他、仮に漢字に直しても「高橋」「髙橋」と合っているものがわからず、失礼にあたる可能性があるため「~様」をなくしたデザイン要素強めのメールにしました。

8.課題

ここまで良いことばかり書いてきましたが、もちろん、課題や失敗は多くあります。

こちらに関しても、赤裸々に改善点を書いていきます。

連帯

筆者のチームはデータに触れる機会が多かった他、コンテンツ作成によって市場ニーズ等も理解していたため、インサイドセールス然りフィールドセールスにも共有できるデータが多くありました。

しかし、このあたりのデータと情報の連携がスムーズにいかなかったのは最大の課題です。

「本当はこう言ったら刺さるのに…」「このお客様にはこのコンテンツが響くのに…」と、全く連携できてなかったわけではありませんが、適材適所でデータと情報の連携ができていなかったのは事実です。

また、MAでできることを完璧に理解しているインサイドセールス、フィールドセールスはいませんでした。なぜなら、理解しなくても受注はできるし成果が出るからです。

ただ、MAや上流のマーケティング構造を理解し、連携することでさらなる成果を出せることもまた事実です。

したがって、スムーズなデータ連携を垂直統合で行うこと、またMAの理解度を上流から下流まで全体で行うことがMQL生成において重要なポイントとなります。

採用

当時、筆者のチーム構成は下記でした。

  • 筆者        :施策全体設計、MA運用、コンテンツ作成/編集
  • 学生インターンA:コンテンツ作成/編集
  • 学生インターンB:施策全体設計サポート、MA運用

幸いなことに、学生インターン2人が非常に優秀だったため、私がサポートすることはあまりなく、むしろたくさん助けてもらいました。彼らは私の知人によるリファラル採用でした。彼らに出会えたこと、そして採用できたことは非常に運がよかったです。

そしてなんと言っても筆者のマネージャーが非常に優秀だったため、施策改善から採用まで、何に関してもスピードがとても早く、成果を出すことができました。やはり、チーム力はかかせません。

とは言え、採用を運任せにするのは非常に危険なのである程度ペルソナを作ることは大事です。

MQL生成業務においては、自社および他社のビジネスモデル理解、MAの理解、ロジカルシンキング、ライティングスキル、デザインなどのスキルが必要です。

ただ、始めからこれらのスキルを持った人を採用するのは難しいでしょう。その中でも、MQL生成業務において筆者の個人的見解では「数字に強い人」が向いているのではないかと考えています。

コンテンツ作成は外注で賄うこともできますので、それより、施策全体の一連性を合理的に捉えられる人材をまずは確保することが必要不可欠です。

コンテンツ作成

コンテンツ作成の恐ろしいところは、作成時間をかけたからユーザーに響くわけではない。しかし、良質なコンテンツを作るには情報収集を含めた多くの時間が必要である、といった矛盾があるところです。

そのため、一概に「1コンテンツ作成の工数はこれくらい」と断定することは難しいです。

ただし、時間をかければ成果が出るわけではありません。そこで筆者の場合は1コンテンツ最高8時間までと区切りをつけていました。

また「質と量、どっちをとるか?」という議論はよくおきますが、まずは「量」です。

たくさん作ってユーザーに配信し、フィードバックをもらうことで自ずと「質」は向上すると考えています。

筆者が未だ苦手なデザイン面に関してはPinterestを毎日みるようにしています。「graph」と Pinterestの中で検索するだけで、お手本となる綺麗なサンプル画像がでてきます。

ぜひ、試してみてください。

データ計測および収益への関連性

ここまで様々なデータ計測手法を紹介しましたが、個人的にはまだスッキリしていない、かつ収益に紐づいている決定的データ連携フローは確立できていないと考えています。

上流のマーケティング担当者はリード数を目標値にすることが多いかと思いますが、やはり、収益に結びつかなければいくらリードの「量」があっても会社は勝てません。

理想論かもしれませんが、MQL然り、上流のどのリードが、どのようにして、なぜ、どれくらい収益に貢献しているのか。この一連の流れを組織全体で共有しあえる仕組みを、施策開始段階に構築することが重要ではないかと思います。

また、管理しているリードデータの精度も非常に重要です。部署、役職、企業ごとの詳細なデータ、営業時のメモ、失注要因など、あらゆるデータを”綺麗に”まとめあげることは重要です。

データ管理が曖昧な結果、機会損失が起こっていることが多々ありました。

9.まとめ

筆者自身の結論としてはやはり「適した相手に、適したタイミングで、適したコンテンツ配給」をどのようにして最適化するかが、MQL生成において最も重要と考えています。

本稿はMQL生成における自社の全てを公開しています。ただ、細かい点においてはまだまだ伝えられることがある他、当社では他にも様々なBtoBマーケティングの知見がございます。

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MarTechLab編集部

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