ユーザー行動の裏側を掴む!AIで進化したセッションリプレイ分析の実践プロセス

この記事のタイトルとURLをコピーする

Google Analyticsなどの定量分析ツールでは、「何人が訪れたか」「どのページで離脱したか」などの数値は分かっても、「なぜその行動に至ったのか」までは見えてきません。そんな時に力を発揮するのが、「セッションリプレイ」です。

セッションリプレイは、ユーザーが実際にWebサイト上で行った操作(クリック・スクロール・入力など)を動画のように再生して見られるツールです。

数値の裏にある「行動のプロセス」を直感的に理解できるため、UI改善やCVR向上のヒントが得られやすくなります。

セッションリプレイ自体は以前からありますが、直近各ソリューションでAIによるセッションリプレイ要約機能が登場(以下「AIサマリー」)したことにより、「何を見ればいいか分からない」「時間がかかる」という壁が大きく下がり、これまで手探りだった分析も、AIの活用によって格段に進めやすくなりました。

この記事では、AIサマリー機能にも触れながら、効果的にセッションリプレイを活用するための7つのステップを解説します。

初めて分析する方は、手順通りに実践してみてください。もっと効果的に分析したい方は、目次を見て、自分が今悩んでいるポイントを確認してみてください。

0.セッションリプレイとは?

ここでは、初めての方向けにセッションリプレイの機能と、活用すべき理由についておさらいします。

■セッションリプレイの概要
セッションリプレイとは、実際のユーザーがサイト上でどのような行動をしているか再生できるツールです。

サイト訪問者のページ遷移、ページ内でクリックした場所、スクロールしていて立ち止まり読み込んでいたコンテンツ、フォーム入力の進行状況など、まるでそのユーザーの視点でサイトを体験しているかのように確認できます。

これにより、ユーザーの行動をより深く理解することができ、改善点を発見しやすくなります。

▼弊社コーポレートサイトのセッションリプレイ例

 

■なぜセッションリプレイを活用すべきなのか?
セッションリプレイの活用をお勧めする理由は、Google Analyticsやヒートマップでは気づけないユーザー行動を把握できるためです。

Google Analyticsなどの定量分析ツールでは、「どのページに何人が訪れ、どのくらい滞在したか」などの数値を把握できます。

ヒートマップでは、「どのエリアがよくクリックされているか」「どこまでスクロールされているか」など、ユーザーの注目エリアを視覚的に捉えられます。

これらはサイトの利用傾向を一目で確認でき、全体像を把握するには非常に便利なツールです。

しかし、Google Analyticsやヒートマップでも、ユーザーがどのような経緯でその行動に至ったのか(クリックに至るまでスムーズであったのか、途中で迷っていたのか、など)はわかりません。

例えば、次のようなケースがありました。

■ヒートマップだけでは見逃していたケース
・ABテストの結果をヒートマップで分析したところ、バリエーションの方がスクロール率がやや高い傾向にありました。
・この結果だけを見ると、「訪問者がより多くの情報を読んでくれている」と解釈できそうです。

・しかし、セッションリプレイで確認したところ、実際には訪問者がページ内を上下に何度も行き来している様子が見られました。
・スクロール率は高くなっていたものの、訪問者が情報をうまくキャッチできておらず、内容の理解に時間がかかっている可能性が示唆されました。

セッションリプレイは、ユーザーの「行動の流れ」を再現するため、なぜその行動をしたのか、どのような障害や葛藤があったのかをより詳しく観察でき、個々のユーザーの体験を深掘りできる点が大きな違いです。

このように、ユーザー行動の“前後の流れ”や“迷いや戸惑い”まで観察できるセッションリプレイは、定量分析ツールでは見えない改善のヒントを与えてくれる強力な手段です。

1.まずは「ここが気になる」を見つける

「なんとなく」でセッションリプレイを見始めるのはNGです!

セッションリプレイを見始める前に、まず最初にやるべきことは「気になるポイント」を見つけることです。これを決めずに着手すると、ただの観察で終わる可能性があります。

例えば、サイトのパフォーマンスに関する指標(離脱率やコンバージョン率など)を見て、「ここで何が起きているのか?」と疑問を感じるポイントに注目したり、次のような問いを自分に投げかけてみてください。

・どこでユーザーが離れているのか?
例:特定ページの離脱率が高い、特定ページでファーストビュー以降のスクロール率が低い、など

・特定のアクションに対して反応が悪いのはどこか?
例:バナーやCTA(Call to Action)がクリックされない、など

セッションリプレイ分析も、あくまで改善に向けた手法の1つです。

まずは、どこが気になるのか?何を解決したいのか?を明確にしてください。

このステップに関しては、アイデアブレストのように複数メンバーで意見を出し合う方法もおすすめです!

2.最初に見るべきセッションを選ぶ

次に、「どのユーザーセッションを見るか」を決めます。この段階では、見るべきセッションを絞り込むことで、分析の精度が上がり、効率的に進められます。

まず、定量的なデータから気になるセッションをピックアップします。例えば、次のような指標を使って対象となるセッションを絞り込みます。

・対象ページで絞り込む
例:流入が多いページ、離脱率が高い商品詳細ページ、CV影響度が高いカートページ

・CV有無を軸に絞り込む
例:購入完了したユーザーとしていないユーザー

・ABテストと連携して絞り込む
例:オリジナルとバリエーションで行動の違いが発生しているか確認

3.流し見を防ぐ!観察の“あたり”をつける

セッションリプレイの”流し見”を防ぐために「ユーザー行動のどこに注目するか?」を予め整理します。

■観察ポイントを事前に考える
セッションリプレイを見始める前に、「ここが怪しい!」「この部分に問題があるかも・・・」「こういう行動しているかも?」と想像してみてください。

例えば、次のようなポイントです。ヒートマップ分析で得られた結果を用いる方法も効果的です。

・フォームに対する反応
例:「ユーザーがフォーム入力を途中で止めている可能性がある」

・ページのどこでユーザーが迷っているか
例:「ナビゲーションが分かりづらく、ユーザーが迷っているかもしれない」

・アクションを実行していない理由
例:「CTAが目立っていないか、ユーザーがクリックしづらいかもしれない」

■観察の視点を持つ
セッションリプレイを”流し見”するのではなく、事前に決めた視点を持って注目していきます。ここで重要なのは、ユーザーがどのような行動に至ったかを「観察する」という意識を持つことです。

例えば、フォームに対して反応が悪いと感じた場合、「入力項目が多すぎて離脱しているのか」「フォームのエラーメッセージが分かりにくいのか」といった仮説を持ちながら見ます。

この時点では、特に正解はありませんので、荒い予測で問題ありません。

実際にセッションリプレイを見て「全然違った!」「やっぱり想像していた通りだった!」と気づくことが重要です。

こうした”あたり”を立てることで、ユーザーの動きとその裏にある背景を想像しやすくなり、問題の本質に近づきます。

4.AIサマリー活用も、効率的にセッションリプレイを見るコツ

大量のセッションから「見るべきもの」を選ぶ方法を紹介します。

ここまでの手順で、対象セッションをある程度絞り込めた場合は、そのまま1本ずつじっくり観察しても構いません。

ただ、セッションが大量に出てくる場合は、「全部見る」ことが目的ではありませんので、優先順位をつけるためにさらに対象を選ぶことが大切です。

以下の3点を活用してみてください。

(1)AIサマリーを活用する
多くのセッションリプレイツールで、ユーザー行動を要約してくれるAIサマリー機能が登場しました。

「どんな操作が行われたか」「どこで止まったか」「どのページを経由したか」といった概要を短時間で確認でき、詳細を見るべきかどうかの判断材料になります。

以下は、デジタル顧客体験分析プラットフォーム「Contentsquare(コンテンツスクエア)」における、セッションリプレイ機能のAIサマリーの一例です。

訪問者の主な行動や、そこから推測される潜在的な課題などの洞察が、ボタンひとつで表示されるため、セッションリプレイを再生する前に素早く把握できます。

▼ContentsquareセッションリプレイAIサマリーの表示例
※機能詳細についてはソリューションによって異なります。

実際に使ってみると、予想以上にAIサマリーの精度が高く、驚かれる方もいるかもしれません。

中には、「もうAIサマリーだけ見れば、セッションリプレイをわざわざ再生しなくてもいいのでは?」と思う方もいるでしょう。

しかし私たちは、現時点では「一定数のセッションリプレイを自分の目で確認することが重要」だと考えています。

というのも、Webサイトにはそれぞれ特有の導線があり、ユーザーの行動も多様なため、AIサマリーだけでは本当に注目すべきポイントを見落としてしまう可能性があるからです。

もちろん、今後さらに活用が進むことでAIの精度も向上し、より効率的な分析が可能になっていくでしょう。

AIの力を借りて効果的に分析を進めつつ、自身の視点もあわせ持つことで、より深いインサイトにつながっていきます。

(2)遷移ログでざっくりチェック
ユーザーがどのページにどの順序で遷移したか、どこをクリックしたかなどを視覚的に確認できるUIがあるツールなら、まずはこの流れをざっと確認しましょう。

前述した観察の”あたり”があると、予想した動きをしているユーザーかどうか、この時点である程度確認することができます。

▼Contentsquareセッションリプレイ遷移ログの表示例

(3)再生速度を上げる
リプレイの速度を1.5倍や2倍に上げると、短時間で全体の流れを確認できます。

明らかに何かが起こっている場面だけを等倍でじっくり見るという使い方が有効です。(慣れてくると場合によっては4倍で見るケースもあります)

また、(1)(2)の内容で大まかなユーザー行動を頭に入れた状態で再生することで、行動を目で追いやすくなります。

5.ユーザーの“行動の違い”を比較する

セッションリプレイで、「ユーザーの行動の違いを比較」することで、「どこでつまずいているのか」「どこでうまくいったのか」が明らかになるケースもあります。

例えば、以下のパターンで比較することができます。

・CVした vs しなかったユーザー
どの時点で差が生まれるのか? 例えば、フォーム入力後に途中で離脱したユーザーと、フォームを最後まで入力して送信したユーザーでは、行動にどんな違いがあったのか?

・CTAがクリックされた vs クリックされなかったユーザー
クリックされなかった理由が、ユーザーがそのボタンに気づかなかったのか、興味を持てなかったのか、行動の原因を突き止めることができます。

・途中でページ遷移した vs 同じページにとどまったユーザー
途中で別ページに移動したユーザーがどの部分でサイト内の移動を選択したのか、逆にサイトにとどまったユーザーがどの情報に引き寄せられたのかを観察します。

分析していく中で、実は「CVした vs CVしなかった」ユーザーで大きな行動の違いはなかった、という事実が出てくるケースもあります。

しかしこの「行動に違いはない」という事実を確認することが重要です。その場合、違いは「行動」ではなく、「情報の捉え方や沸き起こった感情」に違いが出ている可能性が考えられます。

セッションリプレイでは追いきれない部分もありますが、この前提を理解しているかどうかで、仮説の精度に影響が出ます。

6.解像度の高い仮説へ昇華

これまで観察したユーザー行動を、「具体的な仮説」へ落とし込みます。

イメージしやすいように、仮にヒートマップとセッションリプレイで分析を行った際に、得られる気づきと仮説にどのような違いが出てくるのか、比較してみたいと思います。

■状況設定(共通の分析対象)
・ECサイトのとある商品ページ
・商品画像、説明、口コミ、CTA(カートに入れるボタン)が縦長に配置されている

■各ツールで観察された事象と仮説

ヒートマップは「どこに注目が集まったか」を俯瞰するのに適しており、ページ全体の設計改善に向いていますが、その注目が「良いことなのか、悪いことなのか」まではわかりません。

一方でセッションリプレイは、「なぜその行動に至ったのか」という個別の行動の背景や心理の仮説立てに向いています。

7.改善アクションへの落とし込み

セッションリプレイ分析の最終目的は、得られた気づきを基に改善アクションを実行し、再検証を行うことです。

観察や仮説立てで得られた情報を、ただ見て終わらせず、実際の改善に結びつけることが重要です。

・小さく実施し、効果を測定する
大規模な変更を一度に行うのではなく、小さな変更やABテストによる検証を実施し、その効果を測定して次のステップを決めます。これにより、リスクを減らし、改善が実際に成果を上げているかを確認できます。

・改善を繰り返す
改善後は再度セッションリプレイを使用してユーザー行動を観察し、さらに深掘りして次の改善点を見つけます。改善は一度きりではなく、継続的に行うことが効果的です。

このように、セッションリプレイから得た気づきをすぐに行動に移すことが、最終的な成果につながります。改善アクションを小さく始めて、データを元に次のステップを決め、継続的に観察しながら改善を繰り返すことが重要です。

セッションリプレイを活用した分析事例

セッションリプレイはあくまで分析方法の1つです。

そのため、ここではサイト改善の分析フローでどのようにセッションリプレイが活用されているのか、イメージいただける事例をご紹介します。

メディウェル様
「8年間成長し続ける、”真”のインハウスマーケティング」

シックスセンスラボ様
「ランディングページ改善により3ヶ月でCPA62%削減!顧客体験を可視化で知ったユーザーの迷い」

よくある質問

Q.セッションリプレイはあくまで1人のユーザー行動なので、サイトの問題がどれほど大きな影響を与えているのか分からないのですが、どう判断すれば良いですか?

A.セッションリプレイだけでは、サイト全体にどれほど影響を与えているのかを判断するのは難しいです。
そのため、定量的なデータと組み合わせて評価することが重要です。

例えば、「離脱率が高いページ」の原因を探るためにセッションリプレイ分析を行う場合、30本のセッションリプレイ中、10本で同じような行動が確認されたとします。この場合、その行動が共通して見られるのであれば、改善が必要な箇所としてインパクトが大きい可能性が高いです。

重要なのは、「セッションリプレイでこういう行動が確認できた」だけではなく、「〇〇という問題が発生しているページで、セッションリプレイを確認した結果、30本中10本で〇〇の行動が確認できた」といった具合に、データを基に具体的に判断を進めることです。

おまけ:気軽に始めるコツ

本記事では、セッションリプレイを活用するための効果的なプロセスをご紹介しましたが、それでも「ちょっと大変そうだな…」と感じたら、まずは以下のような始めやすい方法から試してみてください。

・セッションリプレイランチ
週に1回、ランチタイムなどのカジュアルな時間にチームで10分だけセッションリプレイを観察する時間を作ってみましょう。
一緒に見ることで、「どこが気になったか?」を自然に言葉にでき、メンバー間の気づきや視点の共有にもつながります。

・テーマ別に「1日1本だけ」見てみる
例えば、「フォーム離脱ユーザーだけを見る」「特定のCV直前離脱セッションだけを見る」など、テーマを絞ることで短時間でも深い洞察が得られます。

セッションリプレイの活用には少し慣れが必要ですが、習慣にすれば大きな発見が得られる強力な分析手法です。
ぜひ、できるところから気軽に始めてみてください!

この記事のタイトルとURLをコピーする

勝見 理恵

2012年ギャプライズ入社。リスティング広告/SNS広告など活用したWeb集客支援、自社マーケティングを経て、現在はContentsquareやABテストツールのカスタマーサクセス担当。

関連記事一覧

HUGO BOSS main

タグから探す
AI活用
デジタル屋外広告
パフォーマンス
バックオフィス
Web接客
DX(デジタルトランスフォーメーション)
SMSマーケティング
マーケティング全般
市場・競合分析
AR(拡張現実)
画像認識AI
VOC(voice of customer)
BI(ビジネスインテリジェンス)
D2C
EC
ロイヤリティマーケティング
リードジェネレーション
インサイドセールス
インフルエンサーマーケティング
UGCマーケティング
SNSマーケティング
コンテンツマーケティング
メールマーケティング
ソーシャルリスニング
サイト改善
レコメンド
パーソナライズ
ABテスト
UI/UX
ヒートマップ
LPO
アクセス解析
EFO
サイト集客
SEO
Googleショッピング
アドフラウド(不正広告)
広告最適化
リスティング広告
SNS広告
Amazon広告
営業・顧客管理
プロジェクト管理
SFA(営業支援)