Fastly(ファストリー)とは?表示速度改善の機能や効果をわかりやすく解説
サイト表示における遅延によるECサイトの売上損失やSEOへの影響は、企業にとって悩ましい課題の1つです。
顧客離れを防ぐためにも、Webコンテンツ配信を高速化する対策が求められます。
近年はストリーミングサービスなどの普及によって、通信障害をいかに軽減できるかがますます重要視されています。
本記事で紹介するのは、Webパフォーマンスの向上に役立つプラットフォーム・Fastly(ファストリー)です。機能やメリットなどを把握し、快適なWebサイトを構築するための糸口としてください。
目次
Fastlyとは
引用元:https://www.fastly.com/jp/
Fastlyは、インターネットでの高速なコンテンツ配信やセキュリティ向上機能などを備えるエッジクラウドプラットフォームです。
エッジ処理(端末の近くにサーバーを分散配置する技法)の活用によりネットワーク負荷を軽減し、通信遅延を改善します。
また、あらゆるサイバー攻撃からシステムを保護するセキュリティ機能も搭載しており、通信環境の安全性を維持します。
Fastlyの機能
引用元:https://www.fastly.com/jp/
Fastlyの主な機能を、4つのカテゴリ別に紹介します。
- ネットワーク
- セキュリティ
- コンピューティング
- オブザーバビリティ
Fastlyは充実したネットワーク環境の提供だけでなく、使いやすさや高いセキュリティ機能も兼ね備えた包括的なプラットフォームです。それぞれの機能を詳しく解説します。
ネットワーク
Fastlyの主要な機能の1つは、世界中に分散配置されたネットワークサービスです。
ユーザーに近い場所でWebコンテンツを配信することで、サイトの読み込み時間が短縮され、サイト表示の高速化を可能にします。
サイト表示の高速化はECサイトの売上へ直結するなどWebマーケティングにおいてはビジネス機会損失を防ぐ要素となっています。
また、高速かつ安定したライブストリーミングの提供により、ユーザーにとって快適なWeb環境を整えます。あらゆる解像度とフレームレートに対応できるため、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスにも効果的です。
セキュリティ
Fastlyは包括的なセキュリティ機能も搭載しています。
次世代WAF(Web Application Firewall)により、Webアプリケーションの脆弱性をねらった攻撃からWebサイトを保護することが可能です。
さらにアカウントの乗っ取りや、DDoS攻撃と呼ばれる複数端末からの大量通信によるサイバー攻撃もブロックします。
Fastlyのセキュリティ機能は、効果的なシステム保護と高いユーザビリティを兼ね備えたシンプルな仕組みです。
コンピューティング
Fastlyのサーバーレスプラットフォーム「Compute」はオープンスタンダードで構築されています。コード実行を柔軟にカスタマイズできるため、さまざまなアプリケーションやサービスの開発に役立ちます。
また、コンピューティングはグローバルエッジネットワークで行えるため、高い安全性を確保しながら高速で大規模なコード実行が可能です。
オブザーバビリティ
Fastlyのネットワークやセキュリティ、コンピューティングの各機能に関する継続的なモニタリングが可能です。
トラフィックやシステムの健全性、疑わしいアクティビティに関するデータがリアルタイムでストリーミングされるため、より適切な判断ができます。
さらに、200を超えるメトリクス(測定値のグループ化)の提供により、ネットワークパフォーマンスと顧客行動の包括的な把握も可能です。
Fastly CDNの概要
引用元:https://www.fastly.com/jp/products/cdn
CDN(Contents Delivery Network)とは、Webコンテンツの高速配信システムのことです。
本章では、Fastly CDNの特徴や独自の概念「オリジンシールド」について紹介します。
Fastly CDNとは
Fastly CDNは、世界中に点在するFastlyのPOP(Points Of Presence=配信拠点サーバー)を使ってコンテンツ配信を最適化する仕組みです。
本来、ユーザーからのリクエストはオリジンサーバー(配信コンテンツが格納されている起源としてのサーバー)に送信されます。
Fastly CDNを活用する場合は、オリジンサーバーの前にPOPを経由します。二回目以降のアクセスではPOPにキャッシュされたデータが返されるため、ユーザーはより速くコンテンツを受け取ることが可能です。
Fastly CDNでは、ユーザーに近いPOPを自動で選択します。例えばオリジンサーバーが日本にあっても、アメリカのユーザーはアメリカのPOPからコンテンツを取得できます。
オリジンシールドによるキャッシュの効率化
Fastly CDNでは、オリジンシールドと呼ばれる概念を利用したキャッシュの効率化も図れます。
オリジンシールドを有効化した場合、Fastlyとオリジンサーバーの間にオリジンシールドが配置されます。
ユーザーからのリクエストに対して、オリジンシールドにキャッシュされたデータが返される仕組みです。キャッシュがなければ、オリジンシールドからオリジンサーバーへの参照が行われます。
オリジンシールドの活用によってキャッシュが効率化され、コンテンツの高速配信を維持できます。
最寄りのキャッシュサーバーにキャッシュがなくても、オリジンシールドのキャッシュを利用できるためです。
さらに、オリジンサーバーへの参照がオリジンシールドにしぼられることから、サーバーへの過負荷を防ぐ役割も果たします。
Fastlyのメリット
Fastlyの主なメリットは次の4つです。
- 高速なコンテンツ配信
- 配信コストの削減
- 広大なグローバルネットワーク
- あらゆるビジネスニーズに対応する柔軟性
Fastlyは配信コストを抑えつつ、ユーザーニーズを満たしたWebシステムの構築を可能にします。
高速なコンテンツ配信
Fastlyの大きなメリットは、高速なコンテンツ配信です。
高速配信を可能にする機能として、ルーティングとロードバランスの機能があります。
ルーティングとは、配信遅延を少なくするために最適な経路を判断することです。
トラフィックの混雑具合やコンテンツタイプを考慮しながら、ユーザーからのリクエストを効率的な経路で処理します。
またロードバランスとは、サーバーにかかる負荷を均等に分散することです。
複数のサーバーにリクエストが分散されることで、ユーザーへの応答時間が短縮されます。
配信コストの削減
Fastlyは、世界中に分散した高性能なエッジサーバーを活かしてコンテンツ配信を行うシステムです。
ユーザーに近いエッジサーバーからコンテンツを提供することで、トラフィック使用量を抑えられます。
また、キャッシュサーバーやオリジンシールドの活用により、多くのコンテンツをキャッシュから提供できます。
オリジンサーバーにかかる負荷を抑えられるため、配信コストの削減にも効果的です。
広大なグローバルネットワーク
Fastlyの配信拠点は、2023年12月31日時点で世界約80か所に設置されています。
Fastlyは限られた数の強力な配信拠点を戦略的に配置することで、高速ネットワークを構築しています。
少ないハードウェアで全世界をカバーする点において、小規模な配信拠点を多く分散させていた従来のCDNとは異なるアプローチです。
主要クラウドプロバイダーの近くに戦略的に配置されたFastlyネットワークにより、ユーザーに近い場所からコンテンツを配信できます。
あらゆるビジネスニーズに対応する柔軟性
Fastlyの幅広い機能や強力なネットワークは、あらゆるビジネスニーズへの対応が可能です。
フリマアプリを運営するメルカリではオンプレミスのログ分析のプラットフォームが担う機能の一部をエッジコンピューティングに移行して、作業負荷の軽減や保守性の向上に成功しました。
また、株式会社日本経済新聞社ではウェブアプリの リニューアルに Fastly を採用表示速度を2倍にし、ユーザー体験の 大幅な向上を実現しました。
Fastlyは、ECやメディアなどさまざまなビジネスで顧客満足度を高めるために重要な役割を果たします。
参考:https://www.fastly.com/jp/customers/
Fastlyのサポートプラン
引用元:https://www.fastly.com/jp/pricing/
Fastlyのサポートプランはスタンダード・ゴールド・エンタープライズの3種類です。
Fastlyに初めて登録すると、無料のスタンダードサポートが自動的に適用されます。小規模組織向けのプランであり、トライアルとしての運用が可能です。
トラフィック使用量が多く、複数のFastlyサービスを運用する組織にはゴールドサポートが適しています。配信遅延の影響をより少なく保ちたい場合は、さらに上位のエンタープライズサポートも検討してみるといいでしょう。
各プランの詳しいサポート内容は公式サイトをご参照ください。
Fastlyの設定手順
引用元:https://www.fastly.com/jp/company
Fastlyの設定は以下の手順に沿って行います。
- 1.セットアップ
- 2.ドメインとオリジンサーバーの設定
- 3.追加機能の有効化
- 4.TLSの設定
4つのステップで設定を完了したら、Webサイト環境の改善による効果を体感してみましょう。
1.セットアップ
FastlyのWebサイトにアクセスし、メールアドレスやパスワードなどを入力してアカウントを作成します。
ログインができたら、諸設定をスムーズに進めるため、Webインターフェイスを確認・操作してみましょう。操作方法については、公式サイトに掲載されているガイドを参照できます。
2.ドメインとオリジンサーバーの設定
次に、コンテンツが配信されるドメインを追加します。
ドメイン設定は、Fastly CDNを経由してトラフィックをルーティングするために必須の設定です。
ドメイン設定の後は、Fastlyがコンテンツを取得する元となるオリジンサーバーを設定します。
Fastlyとオリジンサーバーとの接続まで完了したら、サービスをアクティブ化し、正常に機能するかどうかテストを行ってください。
3.追加機能の有効化
以上でFastlyの基本設定は終了ですが、稼働する前にいくつかの機能を有効化することで効果を高められます。例えば以下のような機能です。
- コンテンツの自動圧縮
- オリジンシールドの構成
- ストリーミングログの設定
ほかにもさまざまな機能があるため、自社のニーズに合わせて有効化してください。
4.TLSの設定
TLS(Transport Layer Security)とは、インターネット上でデータを暗号化して送受信する仕組みのひとつです。
Fastlyによって管理される証明書を使用して、ドメインのHTTPSを有効にします。
Fastlyとユーザー間のトラフィックを保護するためにも、TLSの設定は必ず行いましょう。
まとめ:FastlyでWebコンテンツ配信を高速化しよう
ユーザー満足度向上、コンバージョン率向上、SEO対策効果の向上により、売上増加や顧客ロイヤルティ向上につながるWebサイトの高速化は、企業にとって大きな利益をもたらします。
Fastlyの高速コンテンツ配信機能を用いればコンテンツを受け取るユーザーの満足度が向上し、自社サービスの継続利用が促進されるでしょう。
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今本 たかひろ/MarTechLab編集長
料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。