Vol1:日立製作所がサイト改善に活用 あらゆるユーザー行動を可視化“コンテンツスクエア”~コーポレートサイトの改善PDCA事例~
2019年よりデジタル顧客体験分析プラットフォーム「 Contentsquare(コンテンツスクエア)」をご利用頂いている株式会社日立製作所のグローバルブランドコミュニケーション本部に所属する田中正樹さんに、会社全体のデジタルマーケティングのお話から、サイトリニューアル時の改善事例、今後の取り組みや我々への期待などに関して、担当カスタマーサクセスの大島と共にインタビューを実施しました。
目次
・担当の所属と担当領域
ーでは本日は宜しくお願いします。
現在所属しているチームと業務内容を教えてもらえますか?
グローバルブランドコミュニケーション本部というコミュニケーション機能を担う組織の中で、主にデジタルコミュニケーションに携わる部門におり、私はその中でもWeb戦略グループという部署にいます。
Web戦略グループは、日立グループ全体のWebマネジメント戦略を企画・立案する部隊で、Webの領域における規定やルールを整備し、それをガイドラインとして日立グループ全体へ適用推進していく役割を担っています。
例えばWebサイトのデザインやアクセシビリティなどもその一つです。日立グループではWebサイトのデザインを好きに決めて良いわけではなく、印象統一やブランド認知といった観点から、Webサイトのデザインは決められています。
そのデザインの作成や日立グループへの展開といった業務も私が属するWeb戦略グループが担当しています。さらに、日立製作所のコーポレートサイトのトップページ、企業情報ページ、製品・サービスページなどの主要ページも我々が管理・運営しています。
株式会社 日立製作所
グローバルブランドコミュニケーション本部 コーポレートデジタルコミュニケーション部 Web戦略グループ 主任
田中 正樹さん
ーどのようなチーム構成になりますか?
私と同じ立場は私含めて4名です。
他に日々のサイトの運用や制作業務の支援をしていただいているパートナー企業がいますので、それを含めると10~15名のチームで構成されています。
・コンテンツスクエア導入の目的、検討のプロセス
ーそれでは、コンテンツスクエアを導入する前の課題を教えてください。
今のコーポレートサイトは2019年にトップページや企業情報ページ、製品・サービスページなどのリニューアルを実施しました。それ以前のサイトは、5年ぐらい同じ見た目・構造だったため、リニューアル前の課題として訪問者の視点を欠いてた点が数多くありました。
サイトに訪れた際、目的のページやコンテンツが見つけにくく、訪問者は結局サイト内を回遊しても欲しい情報にたどり着けず、外部の検索サービスから流入していました。
それ自体はある意味では良い面でもあると思うのですが、トップページ自体が役割を果たしていなかったので、2019年にサイト改善を実施しました。
※過去セミナー上で公開されたリニューアルにおける課題と方針を転載
サイトリニューアルを実施した後、直帰率の改善や、検索数の上昇、トップページから目的の情報への遷移など数値的な改善は実現されましたが、一方でこの改善が訪問者にとって本当に適切な情報提供の場になっているのかという点が議論となりました。
訪問者は本当に欲しい情報にたどりつけているのか、数値上直帰率は改善されたが、はたして本当に目的を達成できているのかを、ユーザーの行動ベースで検証することが課題となりました。
ー様々な分析ツールを探されていたという事でしたが、当時は何を利用されていましたか?
ユーザー行動を可視化できるツールは特に使っておらず、アクセス解析でGoogleアナリティクスや、WebTrendsというツールを使っていました。当時はPV、訪問数、UU、直帰率、遷移率、流入数のような数値情報のみを取り扱っていました。
ーコンテンツスクエアを選定されたポイントを教えてください。
数値情報のみの分析に限界を感じ始めていたからです。
そこで、はじめは漠然とユーザー行動を可視化しないとなと思っていたときに、コンテンツスクエアの説明を受けたのですが、コーポレートサイトのリニューアル前に定めていたビジョン・ミッション・ゴールに対して定量評価を設定して分析する際に最適だな、というイメージができて、直感的に「あ、これだな」って感じました。
あとは単なるツールの導入だけで終わってしまいたくなかったので、安易に導入するのを躊躇していましたが、導入するだけではなく分析した結果から改善提案を含めた、「きちんと支援をしていきます」という想いをしっかり感じることができるご提案でしたので、「あ、これだったらお願いしたいな」と思いました。
ー伝わって良かったです。とても嬉しいです!
実際に社内決裁を取り、導入するまではハードルがありましたか?
そこまで高いハードルは無かったように思います。
なぜならば、私たちがやりたいこと・求めているもの、そしてコーポレートサイトのビジョン・ミッション・ゴールがきちんと評価できることを一つ一つ説明をして説得をしたら「じゃあ導入しよう!」ってなりました。
ひょっとすると上司がうまく調整してくれていた面もあるかもですが、比較的スムーズに導入することができ、自分でもビックリしています。
もちろん一連のご提案に関するコミュニケーションで、やりたいことが正確に伝わっていて、資料の中からもわかりやすく表れていたのが良かったのではないかと思っています。
ーちなみに、競合と言いますか、他社ツールも含めて別案はありましたか?
もちろんありました。価格だけ見ると他社ツールのほうが安かったりしたので、単純な価格比較となると「こっちのほうがいいんじゃない?」って言われたことはありましたが、「でも他社のツールはツールの導入までで、これ以上の事はあまり支援してもらえないですよ。」という話をしていました。
ーなるほど。
分析をしただけで終わるのではなく、その後の改善などを含めたPCDAをきちんと回していかないと意味がないので。
お話を聞いて自分の中でこのプロジェクトがワークするイメージがついたっていうところがあります。
うまく言いくるめられたかもしれないですけど(笑)。
・コーポレートサイトでのABテスト
ーギクッとしますね。
この後営業時の期待と結果のギャップがあったのかどうか、ちゃんと伺っていきます(笑)。
ちなみに当時、ABテストツール自体は導入されていたのですか?
導入していませんでした。ABテストの実施の提案をいただき、ABテストツールについていろいろ聞いた上で、まずは無償のGoogleオプティマイズを利用してスモールスタートで始めました。
ABテストの概念や目的は理解できていたのですが「実際本当に意味あるのか?」とも正直思っていました。
ーそういうやりとりもありましたよね。
たしか「PDCAサイクルをもっと速められる」という事が我々の目線ではあったのですが、改修した前後比較で実施するとなると割と大がかりで、四半期に1回になってしまうという話で。実際今も施策が走ってるっていうことは、一定必要性はあったという所ですかね?
必要性は大いにありました。
ー大体どの程度の期間と回数のテストをされていましたか?
大きく9つぐらいのテストを実施しましたが、小規模なものも含めるとその倍くらいは実施しています。
トップページはアクセス数が多いので、1週間でもある程度数値は取れますが最低でも2週間とか、ページと目的に応じて期間を設定して2、3カ月ぐらいテストを実施していましたね。
ー実際にテストをされて、その後のページへの改善反映をしたケースもありましたか?
ABテストは大きく分けて、トップページと製品サービスページと企業情報ページで3つ実施しましたが、その中でもトップページの効果が如実に表れていたので、トップページの一部、ファーストビューをより良く見せるための反映をしました。
ー実際ファーストビューに手を入れるケースは多いですよね。一番インパクトが出るので。
期間は、一番初めの改善からテストして、トップページの変更まで大体1年半とか2年ぐらいでしょうか。
1年半ぐらいですね。2019年の12月に導入をして2020年の2、3月ごろ、一旦現状の分析をという形で、トップページのファーストビューの問題や、ユーザーの行動分析など膨大な量の分析レポートを作っていただきました。
リニューアルにおけるビフォーアフターのユーザー行動の可視化ができたなっていうのが2020年で、2021年位から課題が見えてきたのでPDCAサイクルを回しましょう。というフェーズに移り、ABテストの実施に関して御社に手取り足取り一緒に入っていただいた形ですね。
ーたしか分析レポートが100ページ以上ありましたよね。
そうでしたね。
我々のコーポレートサイトは日本語サイトとグローバルサイトの2サイトあったので、それぞれのデバイス別の分析も含めて、報告会の時は1時間半~2時間ぐらいかけて報告していただきました。
あとは我々のコーポレートサイトは平日と休日でサイトに訪問する人が違うんじゃないか、という仮説が生まれたので追加の要望を出させて頂きました。
平日はどちらかというとBtoBの訪問者が多く、一方、休日は個人のお客様が多く訪れているのでは?と、報告会の時に指摘させていただいて「じゃあちょっと確認しますね」っていう形になりました。
ただ「コンテンツスクエアだと平日と休日を区別するのは難しい」みたいな話があったので、結構多分大変だったんじゃないかって会議中思った事を記憶しています。
ーそうですね。休日データと平日データを分解してつなぎ合わせましたね。。
・定性データから見えてきた新たな課題、部署を超えた事例共有
ーレビュー会の際、直帰してしまう人がなぜ直帰するのかをデータドリブンにアプローチできるGetFeedBackというツールのご提案をして、トライアルで1回利用いただいた事がありました。その後利用の継続はなしになったのですが、せっかくなのでどういう背景があったのかこの機会に伺いたいです。
つまり、コンテンツスクエアで深掘りした結果、使ったほうがいいんじゃないかという文脈でご提案いただいたツールの利用に関してですよね。
ーそうです。直帰率にアプローチするには、データだけ見ていてもわからないので、定性的なフィードバックをもらおうという話ですね。
たしかトライアルで入れさせていただいて、「こんな簡単にユーザーの声を聞けるのであれば、いいね!導入してみよう!」となりました。
ー「本日何をお探しでしたか」とか「目的は達成できましたか」「(達成できていなかったら)何が問題でしたか」というような離脱理由のヒアリングを実施しました。
これらの定性データって実際は価値があるものなのか。自己満足に終わってたら、それはそれでしっかり受け止めないといけないかなと思ってまして。
もちろんこれらの定性データは価値のあるものでした。ただし、今思えばもっとうまく活用できたかも、という思いです。
定性データの中には、製品・ソリューションが探せないといったものから、家電に関する問い合わせまでさまざまなケースがありました。
ーそうなんですね。
定性データの中には私たちだけでは解決できないものも多く、日立全体のことを考えながらさまざまな部署と連携を取りながら解決していく必要がありました。
実際そこに気づけた事は非常に良くて、むしろ無駄ではありませんでした。ただ、想像していた以上にもっと大きな課題をみつけてしまった感じです。
ースポットな施策としては「価値はあった」、というところですかね。
はい。もちろんです。
実際は私たちが伝えたいことと、訪問者が期待していることに結構ギャップがあるというのがわかりました。
仮説を立てながら、それが実際データとして表れた時、Webサイト単体で解決できるものもあれば、会社全体の話になってすぐに解決できない問題もたくさん出てくるんですよね。
ーデータを他の部署に情報共有をされたり、会社全体で取り扱うような動きは生まれましたか?
はい。データをいろいろな部署に見せる動きが生まれましたね。
私たちの部署は日ごろ日立グループのWeb責任者・担当者からWebに関するさまざまな相談や問い合わせがきます。
その中でサイト分析に関する相談もあるので、その時にコンテンツスクエアを用いたユーザー行動の分析結果やユーザーの声をまとめた資料を共有しています。
あとは私たちのWeb戦略の活動や取り組みを日立グループのWeb責任者・担当者宛に、月に1回メルマガとして配信しているので、そのコンテンツの1つとして今回の改善事例の紹介もしたところ、非常に多くの反響がありました。
ー実施された改善施策が、他の事業部で生かされた事例とかあったりしますか?
他の事業部から、サイト改善をやりたいけど課題の整理の仕方やどういうステップで進めれば良いかわからない、といった相談を受け、コンテンツスクエアを用いた課題の整理を提案しました。また、コーポレートサイトのリニューアル時の資料なども共有し、進め方を一緒に考えるといったやり方もしていました。
こういったWebサイト全般の相談がいろいろと舞い込んでくるので、コンサルタントみたいな仕事もしています。
ー社内コンサルですね(笑)。
日立グループのWeb戦略を担う組織にいるので、そういう相談が来たらいろいろサポートをしています。

鈴木 隆司
2005年ギャプライズ共同創業 ECコンサルタント、セールス、Webマーケ事業、経営など、実務業務もマネージメントも酸いも甘いも経験させていただき、2020年よりギャプライズの広報業務を担っています。