自動車保険のDXを牽引する三井ダイレクト損害保険のCX改善への挑戦

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2024/08/05

デジタル時代の保険業界で、顧客体験(CX)の改善が競争力の鍵を握っています。しかし、多くの企業がデータ分析やサイト改善の実践に苦戦する中、三井ダイレクト損害保険様は革新的なアプローチで業界をリードしています。

「見やすく、わかりやすく、使いやすい」ウェブサイトの実現を目指す同社が、ユーザー行動分析ツール「Contentsquare」を導入して1年。その成果と組織に起こった変化、そして今後の展望について、マーケティング部デジタルマーケティンググループの皆様にお話を伺いました。

データドリブンな意思決定と現場の創意工夫が織りなす、三井ダイレクト損害保険のCX改善への取り組みは、デジタル時代のマーケターに多くの示唆を与えてくれます。

※本インタビューはContentsquare社と共同で実施しました

(画面左奥から、相川様、内藤様、中原様、横田様、北川様)

保険サービスにおけるウェブサイトの重要性

保険サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中、保険商品を選ぶ際の顧客接点としてウェブサイトの重要性が増しています。特にネット型保険(通販型・ダイレクト型)の保険会社にとって、「見やすく、わかりやすく、使いやすい」サイト作りは、顧客満足度向上に直結する重要な課題と言えます。

しかし、実際にCX(カスタマーエクスペリエンス)改善に取り組む企業からは「サイト改善のためのデータ収集や分析が思うように進まない」「施策の優先順位をどう決めればよいかわからない」といった悩みの声が聞こえてきます。そんな中、三井ダイレクト損害保険様は、ウェブサイトを中心とした先進的なCX改善施策で業界をリードしています。

三井ダイレクト損害保険の特徴と強み

三井ダイレクト損害保険様は、MS&ADインシュアランス グループにおいて、新たな商品・サービス・販売スタイルの導入などのパイロット的役割を担っています。事故時に自動でオペレーターにつなぐ「レスキュードラレコ」や個客に最適化された情報提供を行うためのデータ分析など、デジタル技術を積極的に取り入れる一方、専門スタッフによる手厚いサポートも提供、ネット型保険(通販型・ダイレクト型)ならではのコストパフォーマンスの高さと、代理店型に引けを取らない手厚いサービスを両立させています。

ミッションは「見やすく、わかりやすく、使いやすいウェブサイト」

同社のウェブサイトを運営するマーケティング部デジタルマーケティンググループでは、「見やすく、わかりやすく、使いやすいウェブサイト」の実現をミッションに掲げ、日々サイト改善に取り組んでいます。集客からお申し込みまでウェブサイトが担う役割は大きいだけにそれは新規顧客の獲得に直結する重要な要素と言えます。

同社はGoogle Analytics等を用いたアクセス解析を行っていましたが、ユーザー行動の課題に対する仮説立てにあたっては、既存ツールから得られた示唆以外にも、もっとユーザー心理を図る方法がないか模索していたと言います。

この問題を解決するために、同社は「Contentsquare」注目しました。特に以下の機能に魅力を感じたそうです。

  1. ヒートマップ: ユーザーのクリックやスクロールなどの行動を視覚的に表示
  2. セッションリプレイ: 個々のユーザーのウェブサイト閲覧の様子を記録・再生
  3. ページ分析: ページ内の要素ごとのエンゲージメントを分析

これらの機能により、ユーザー行動に関わる課題を明確化し、適切な改善策を講じることが可能になります。

Contentsquareを導入することで、同社はウェブサイトの顧客体験向上に向けた取り組みの強化に乗り出しました。

 

Contentsquareを活用したCX改善の取り組み

GAとContentsquareを組み合わせた課題発見

デジタルマーケティンググループ・マネージャーの横田様は、「Google Analytics 4のファネルなどからインパクトの大きい課題を抽出し、Contentsquareで詳細を調べるのが王道パターンです」と話します。森全体を俯瞰した上で、個々の木に目を向けるようなアプローチだと言えるでしょう。

 

見積もり画面の改善事例

見積もり画面の改善について質問したところ、中原様から具体的な事例が紹介されました。

サイトの見積もり結果画面では、離脱率が高いという課題がありましたこの問題に対処するため、情報をわかりやすく伝えることを目的とした画面整理のテストを段階的に実施したそうです。

ストでは以下の2点を実施しました。

    1. 画面のレイアウト変更
    2. 申し込みボタンの整理

上記の結果、離脱率を低下させ、コンバージョン率を向上させることができました。

テスト結果の確認には、Contentsquareのジャーニー分析とセッションリプレイを活用しました。

分析を進めるうちに、セッションリプレイを通じて、ユーザーが画面内で迷っている様子を動画で確認できたことで、ユーザーの心理をより理解し、問題を整理しやすくなりました。

チームへの連携も、クイックに実現できるため、得られた知見から次への施策へ進める際もスムーズに実施できると考えています。

電話番号入力フォームの改善事例

続けて、電話番号入力フォームの改善について尋ねると、北川様からセッションリプレイの活用事例が紹介されました。北川様は、「ユーザーの多くがゆっくりとハイフンを入力していることに注目し、入力項目の再クリック数を確認しました」

 

確認の結果、電話番号入力欄を繰り返し押しているユーザーが多いことがわかりました。これは、ハイフンを入力しないとエラーが表示されるにもかかわらず、そのメッセージがユーザーに伝わっていない可能性があるという仮説につながりました。

検証のため、以下の2つのセグメントを設定しました。

    1. 電話番号入力欄を1回クリック(望ましい行動)
    2. 電話番号入力欄を2回以上クリック(エラーが発生する行動)

分析の結果、電話番号を複数回クリックするとコンバージョン率(CVR)が下がることが明らかになりました。

これは、エラーが発生したものの、ユーザーがエラーの内容を理解できておらず、適切に対応できていない可能性が高いことを示唆しています。

この結果もとに、ハイフンの自動入力機能を追加したところ、フォーム完了率が大幅に向上したそうです。

北川様は「これらの課題は定量データだけでは発見が難しかった」と振り返っています。

このように、セッションリプレイを活用することで、ユーザー行動を詳細に分析し、問題点をCXの向上とコンバージョン率の改善を実現できるのです。

定量データと定性データを組み合わせた分析の重要性が、この事例から明らかになりました。

 

1年間のContentsquare活用が組織にもたらした変化

「ユーザー行動を自分事として考える」意識の浸透

「ユーザー行動を自分事として考える」意識の浸透について、中原様は「Contentsquareの導入効果が施策の成果以上に社内の意識変革に表れている」と述べました。

定性データの可視化により、メンバーがユーザー行動を自分事として考えるようになったそうです。顧客の心理より身近に感じられるようになったことで、サイト改善への意欲も高まっているとのことでした。

施策の結果が楽しみ」現場の声

中原様自身も、「Contentsquareを使うようになって、仕事がとても楽しくなりました」と伊藤の問いかけに笑顔で答えています。施策の結果を待ち望むようになり、チームのモチベーションも上がっているそうです。

ユーザー行動から心理を想像しながら施策を考えることが、日常的な仕事のスタイルになっていると言います。

セグメント機能を活用したABテストの精度向上

さらに、中原様は伊藤によるセグメント機能を活用したABテストについての質問に対し、Contentsquareのセグメント機能を活用した行動分析の事例を紹介しました。

「ABテストのパターンごとにページの動線を可視化できるため、より精度の高い検証が可能になった」とのことです。柔軟に条件設定ができるセグメント機能を活用することで、属性による行動の違いを可視化し、さらにセグメント毎にユーザーがサイト内でどのような動きをしたのかセッションリプレイで確認ができるためより効果的な施策立案につなげているそうです。

これらの事例から、Contentsquareの導入が以下の点で組織に変化をもたらしたことがわかりま

す。

  1. ユーザー行動への共感力の向上
  2. 社員のモチベーション向上とサイト改善への積極的な取り組み
  3. データに基づいた精度の高い施策立案

ユーザー行動分析ツールを活用することで、社員の意識改革とデータドリブンな意思決定が促進され、組織全体のパフォーマンス向上につながることが示唆されました。

 

CX改善の取り組みを全社に拡大

既存顧客の満足度向上への活用

今後の展開について尋ねると、中原様は「Contentsquareの活用の場を広げていきたい」と述べました。当初、Contentsquareの主な目的は新規顧客の獲得でしたが、現在では既存顧客の満足度向上にも役立つと感じているとのことです。新規顧客での活用で大きなインパクトを実感できたことから、現在は部門横断での活用拡大を目指しているそうです。

お客様センターへの問い合わせ軽減への挑戦

さらに、横田様は伊藤の質問に答える中で、「お客様センターへの問い合わせ軽減にもContentsquareの活用を視野に入れている」と述べました。

お客さまの課題を解消していくことで問い合わせを減らし、顧客満足度とオペレーター効率の両立を目指しているとのことです。

これらの取り組みから、Contentsquareの活用が以下の点で組織にさらなる価値をもたらす可能性があることがわかります。

  1. 既存顧客の満足度向上による長期的な関係構築
  2. 部門横断での活用による組織全体のデータドリブンな意思決定の促進
  3. お客様センターへの問い合わせ軽減による顧客満足度とオペレーター効率の向上

ユーザー行動分析ツールの活用範囲を拡大することで、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の満足度向上やオペレーションの効率化にも貢献が期待できます。これにより、組織全体のパフォーマンスを向上させ、競争力を高めることが期待できるでしょう。データに基づいた意思決定と顧客中心の考え方を組織に浸透させることが、ビジネスの成功には欠かせないと言えます。

 

データドリブンなCX改善の重要性

ユーザー行動の「見える化」と継続的な改善活動

三井ダイレクト損害保険様のCX改善の取り組みがデータドリブンな経営の好例だと思いますと伝えると、相川様は「自社サイトの価値を高めるためには、ユーザー行動の『見える化』とそれに基づく継続的な改善活動が欠かせないと考えています適切なツールの選定に加え、現場の担当者がツールを使いこなすためのスキル醸成も重要です」。答えました。

 

デジタルとアナログを組み合わせた顧客接点の設計

これらの一連の取り組みについて横田様はUI/UX改善が顧客満足度とビジネス成果の向上に直結すると述べました。そのためには、デジタルとアナログを組み合わせた適切な顧客接点の設計が欠かせないと言います。さらに、新規顧客だけでなく既存顧客のCX改善にも目を向けることで、より持続的な企業成長につながるのではないかと考えています。

これらの見解から、以下のような示唆が得られます。

    1. データドリブンな意思決定の重要性
    2. ユーザー行動の可視化と継続的な改善活動の必要性
    3. 適切なツールの選定と担当者のスキル醸成の重要性
    4. デジタルとアナログを組み合わせた顧客接点の設計
    5. 新規顧客と既存顧客の両方に焦点を当てたCX改善の必要性

企業がデジタル時代に成長し続けるためには、データに基づいた意思決定を行い、ユーザー行動を深く理解することが強みになると考えられますそのために、適切なツールやパートナーを選定し、担当者のスキルを向上させることが求められます。さらに、デジタルとアナログの顧客接点を適切に設計し、新規顧客と既存顧客の両方のCX改善に取り組むことで、持続的な企業成長を実現できるでしょう。

三井ダイレクト損害保険の事例から学ぶこと

データの力を信じ、現場発の着眼点を大切にする

中原様は、「Contentsquareのデータを見るとお客さまの気持ちがとてもイメージしやすくなります。

施策を回すにあたり、自社で持つ様々なデータの中から、課題に応じて最適なツールを活用し、メンバーが力を合わせてストーリーを読み解き納得のいく判断することが重要だと考えています」と語りました。

三井ダイレクト損害保険様の取り組みは、データの力を信じ、現場発の着眼点を大切にする姿勢が、CX改善の原動力になるということを強く感じました。

 

とめ

三井ダイレクト損害保険様のContentsquare活用による継続的なCX改善の取り組みは、デジタル時代のマーケティングにおける先進的な事例と言えます。

従来のアクセス解析では見えなかったユーザー行動の背景にある心理を、ヒートマップやセッションリプレイ、セグメント分析などを駆使して可視化することで、現場の担当者は仮説検証のサイクルを素早く回し、効果の高い施策を次々と打ち出すことができるようになりました。

さらに、データに基づく意思決定が組織に浸透したことで、部門の垣根を越えた取り組みも活発化しており新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の満足度向上やお客様センターの効率化など領域でContentsquareの活用シーンが検討されています。

インタビューを通して浮かび上がったのは、三井ダイレクト損害保険様のCX改善を支えるカルチャーです。現場発の着眼点を大切にし、データの力を信じ抜く姿勢、そしてその実行力を支えるデータリテラシーの高さが、保険業界のDXをリードする原動力になっていると感じました。

デジタル時代のCX改善は、データ分析ツールの導入だけでは不十分です。それを使いこなす人材の育成と、データドリブンな意思決定を後押しする組織文化の醸成が欠かせません。三井ダイレクト損害保険様の取り組みは、その先進的なお手本と言えるでしょう。

自社に合ったアプローチを探るためには試行錯誤も必要ですが、ツールベンダーや販売店には伴走者としての役割が求められます。ギャプライズは、事例に基づく知見の提供や、活用段階に応じた柔軟なサポートを通じて、三井ダイレクト損害保険様のCX改善を引き続き支援していく考えです。

保険業界のみならず、あらゆる業界でデジタル化が進む中、CX改善は企業の競争力を左右する重要な課題となっています。三井ダイレクト損害保険様の事例は、データの力を活用し、現場の創意工夫で差別化された顧客体験を生み出すためのヒントに溢れています。その知見は、デジタル時代のマーケターにとって示唆に富むものと言えるでしょう。

ギャプライズ担当者の声

今後の三井ダイレクト損害保険様の新たな挑戦となるCX改善に携われたことを光栄に思います。競争が激しいネット型損保業界において、如何に強みを見せるかを重視するのではなく、ユーザーが期待する情報がなにか、その期待が裏切られていないかをContentsquareで発見し、施策に繋げる。そのレベルの高さとスピード感に感服しています。今後もより成果を出せるように全力でフォローさせていただきたいと考えています。

 

日々皆様とやり取りをさせていただく中で、ツールの活用や積極的に業務に取り組む姿勢に大変感銘を受けています。このような熱意があったからこそ、短期間でも目に見える成果が得られたのではないかと感じています。三井ダイレクト損害保険様とのパートナーシップを通じて、さらなる革新と成長を共に実現していけることを楽しみにしております。

 

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今本 たかひろ/MarTechLab編集長

料理人→旅人→店舗ビジネスオーナー→BPO企業にてBtoBマーケティング支援チームのPLを4年半経験し、2023年2月よりギャプライズへジョイン。フグを捌くのもBtoBマーケティングを整えるのも根本は同じだという思考回路のため、根っこは料理人のままです。家では猫2匹の下僕。虎党でビール党。

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